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「早期教育は意味がない」慶応医学部教授が指摘、その理由とは

高橋孝雄(たかはし・たかお)慶應義塾大学医学部 小児科主任教授 医学博士 専門は小児科一般と小児神経1982年慶応義塾大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院小児神経科で治療にあたり、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で現在まで医師、教授として活躍する。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。

高橋孝雄(たかはし・たかお)
慶應義塾大学医学部 小児科主任教授 医学博士 専門は小児科一般と小児神経
1982年慶応義塾大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院小児神経科で治療にあたり、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で現在まで医師、教授として活躍する。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。

K:なるほど、よくわかりました。

高橋先生:例えば、体重は食生活や運動などの環境要因でも大きく変わりますが、身長は遺伝子でだいたい決められているので、いくら沢山食べても、鉄棒にぶら下がっても、なかなか伸びたりしません。脳の形や働きも簡単には環境要因に左右されないように守られています。たとえ十分な栄養が取れないような厳しい環境で育った子どもでも、脳の大きさや形、そして働きは変わりません。脳は非常に大切な部分なので、遺伝子でがっちり守られているのです。

K:目からウロコが落ちてしまいそうです(笑)。ちなみに私は身長が低いのがコンプレックスで、子どもの頃から牛乳をたくさん飲んだんですよね。それでも背が伸びなかったのは、そもそもが「どうにもならない問題」だったからなのですね(苦笑)。

高橋先生:まあ、そういうことですね(笑)。たとえ未熟児として小さく生まれても、予定通りに脳を含めて体の形が作られていき、そこに予定通りの機能が宿っていくようにできています。ひとりの赤ちゃんが育っていく様子は、人が動物として進化してきた過程を思わせるほど、着実で確かなものなのです。

●「胎児のときから子育てが始まっている」は事実

K:胎児のときに音楽を聞かせるお母さんも多いと思いますが、胎児はどれくらい聞こえているのでしょうか?

高橋先生:残念ながらほとんど聞こえていません。お母さんの心拍は聞こえていますが。モーツァルトを聞こうが工事現場にいようが、変わらないということです。

K:えーっ、そうなんですか!今回、驚きが多すぎます…。

高橋先生:ただ、「いい音楽だなあ、この音楽を聴くと気持ちいいなあ」など、音楽を聴いてリラックスしているお母さんの気持ちが、何らかの形で赤ちゃんに伝わっているとは思います。つまりどんな音楽を聞くかではなく、お腹の中の赤ちゃんに向かって「お母さんはこの歌が好きなのよ」「一緒に聞いてね」と語りかけることが大切だということです。赤ちゃんがお腹にいるときから、そのようなコミュニケーションを取っていると、生まれてきた際、「やあ、よく出てきたね」というところから親子の関係が始まりますよね。妊娠中にお腹の赤ちゃんに興味が持てないお母さんやお父さんの場合には、残念なことですが、生まれてきてから例えば虐待をしてしまうような不幸なことも起こりかねないのです。


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