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【コラム】

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 二十世紀音楽界の巨匠パブロ・カザルスが生まれて初めて、投票したのは、五十四歳の時だった。愛するカタルーニャに自治をもたらすため、一九三一年の選挙で一票を投じたのだ▼新生カタルーニャの出発を、彼はベートーベンの交響曲第九番を指揮して祝ったが、わずか五年後にファシストが反乱を起こした。反乱軍が迫り、どんな明日が訪れるかも分からぬ状況で、カザルスは、第九の終楽章を奏で、歌って、お互いの別れのあいさつにしようと、楽団員に呼び掛けた▼<♪やさしき翼の飛び交うところ すべての同胞(はらから)はちぎりをむすんだ兄弟…>。その響きは無上のものだったと、巨匠はふり返っている(『パブロ・カザルス 喜びと悲しみ』)▼その後の内戦と独裁政治でカザルスは亡命を強いられ、異国の地で生涯を終えた。彼が九十六歳で逝って、四十四年。カタルーニャで独立を問う住民投票が行われ、結果は「独立賛成」と出た▼しかし、スペイン政府はこれを頑として認めない。投票率の四割という低調さには、住民の複雑な思いもにじんでいるのだろう。独立がスペインはもちろん、カタルーニャ内部にも分裂と対立をもたらすのではないかとの懸念もある▼カタルーニャ州議会は近く独立を宣言する構えだと伝えられる。それは、カタルーニャの人々と「兄弟」にとって、「歓喜の歌」となるのだろうか。

 

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