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【国際】

イシグロさん「私の世界観に日本影響」

 【ロンドン=共同】二〇一七年のノーベル文学賞受賞が決まったカズオ・イシグロさんは五日午後(日本時間同日深夜)、ロンドンの自宅敷地内で記者会見し「信じられない出来事だ。予想していなかった」と喜びを語った。「私の世界観には日本が影響している。私の一部は、いつも日本人と思っていた」と述べた。

 イシグロさんは丸首のシャツの上に紺色のジャケット姿。庭のベンチに腰掛け、写真撮影に応じながら、詰め掛けた報道陣に「もう少しきちんとした格好で出てきたかった」と笑みを浮かべ、照れた様子を見せた。

 受賞決定は電話で知らされたといい「冗談かと思った。フェイクニュース(偽のニュース)がはやっているので」とおどけてみせた。

 スウェーデン・アカデミーからは十二月十日に予定される授賞式に出席するかどうか聞かれ「もちろんです。他の予定はキャンセルします」と答えたという。

 また手元に用意した紙に目を落としながら、世の中が不安定になっていると指摘し、ノーベル賞受賞によって「小さい形であっても、平和に貢献できればうれしい」と表情を引き締めた。

◆「普通の人に光」 ロンドン市民、作品評価

 【ロンドン=沢田千秋】今年のノーベル文学賞受賞が決まったカズオ・イシグロさんは、英国で最も有名な小説家の一人。受賞のニュースは、瞬く間にロンドン中に広がった。

 スウェーデン・アカデミーのダニウス事務局長は、特に「忘れられた巨人」と「日の名残り」の二作品を「傑作だ」と評価。英国のユーモア文学の大家P・G・ウッドハウスや独自の世界観で知られる小説家のフランツ・カフカに例えた。

 ロンドン市内の大型書店店員アンディ・リッチモンドさん(23)は「外国の作家の文章は不自然な部分があるが、イシグロの作品は英語で書かれているから読みやすい」と人気の理由を説明。「日の名残り」を購入したアレックス・ボードマンさん(24)は「イシグロの『わたしを離さないで』を読んだことがある。情緒的かつ知的な作品だった。『日の名残り』を読むのが楽しみ」と興奮気味に話した。

 イシグロさんと交流のある英王立文学協会フェローのクリス・ビグズビー氏は「彼は二十代のころ、ミュージシャンを目指し、デモテープまで作っていた」と明かす。「文章に無駄がなく、普通の人に光をあて、人生の目的とは何か、過去に学ぶことの重要性と危険性などがテーマだった」と作品を高く評価した。

 イシグロさんは、政治や社会に関する発言も多い。昨年、英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた後には、「この国はひどく分断されている」などと憂慮し、国民投票の再実施を求めた。

 

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