産経新聞は10月1日付朝刊で「民進左派 窮余の新党 参院巻き込み構想急浮上」との見出しで記事を掲載した。その中に、民進党出身の枝野幸男氏らの新党構想をめぐり、「新党を作るには、原則国会議員5人以上の参加が必要だが、衆院解散に伴い前衆院議員はカウントできない」との記述があった。政党助成法などには「所属国会議員5人以上」という政党要件がある。だが、政令に、解散で議員でなくなったいわゆる「前職」も算定するとの規定があり、「衆院解散に伴い前衆院議員はカウントできない」という説明は誤りだった。
日本報道検証機構が総務省選挙部政党助成室などに取材し、「前職」も政党要件の国会議員にカウントするとして根拠条文の回答を得た。産経新聞社に指摘したところ、同社は10月5日付朝刊で訂正した。ただ、同日午後9時現在、ニュースサイトの記事は訂正されていない。
記事の掲載直後に有田芳生参院議員が誤りを指摘していた。
政党などの届出を義務づけている政治資金規正法は、「所属国会議員が5人以上」もしくは「前回の衆院選などで全国の得票率2%以上」の政治団体を「政党」と定めている。衆議院解散によって衆院議員は失職するが、政党要件の「国会議員」として算定される(同法施行令1条)。そのため、枝野氏らは、10月2日「立憲民主党」を結成後、政党として政治資金規正法上の届出をしたとみられる。
他方、政党助成法も、政党交付金の交付対象となる政党要件を「所属国会議員が5人以上」などと定めているが、解散で議員でなくなった者も「国会議員」に算定される(同法施行令11条)。ただ、「国会議員5人以上」の要件を満たすかどうかは、毎年1月1日、衆議院総選挙翌日、参院選翌日を基準に判断される(法5条、6条)。
したがって、「立憲民主党」は、22日投開票の総選挙で5人以上当選すれば、その翌日をもって政党助成金の交付対象となる政党要件を満たすことになる。この点は、解散の直前に結党された「希望の党」も変わらない。
【楊井人文、保科俊】
(GoHooはFIJの総選挙ファクトチェックプロジェクトに参画しています。)
産経ニュース2017年10月1日(10月5日21時、閲覧確認)
政治資金規正法
第三条
2 この法律において「政党」とは、政治団体のうち次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有するもの
二 直近において行われた衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は直近において行われた参議院議員の通常選挙若しくは当該参議院議員の通常選挙の直近において行われた参議院議員の通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であるもの
政治資金規正法施行令
第一条 衆議院の解散若しくは衆議院議員の任期満了により衆議院議員が在任しない場合又は参議院議員の任期満了により参議院議員の一部が在任しない場合における政治資金規正法(以下「法」という。)第三条第二項第一号に規定する衆議院議員又は参議院議員の数の算定については、その衆議院の解散若しくは衆議院議員の任期満了により衆議院議員でなくなつた者(その衆議院の解散がなく、又はその衆議院議員の任期がなお引き続いているものとしたならば、引き続き衆議院議員として在任することができる者に限る。)又はその参議院議員の任期満了により参議院議員でなくなつた者(その参議院議員の任期がなお引き続いているものとしたならば、引き続き参議院議員として在任することができる者に限る。)は、同号に規定する衆議院議員又は参議院議員に含まれるものとして算定するものとする。
政党助成法
第二条 この法律において「政党」とは、政治団体(政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第三条第一項に規定する政治団体をいう。以下同じ。)のうち、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有するもの
二 前号の規定に該当する政治団体に所属していない衆議院議員又は参議院議員を有するもので、直近において行われた衆議院議員の総選挙(以下単に「総選挙」という。)における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は直近において行われた参議院議員の通常選挙(以下単に「通常選挙」という。)若しくは当該通常選挙の直近において行われた通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であるもの
政党助成法施行令
第十一条 衆議院の解散若しくは衆議院議員の任期満了により衆議院議員が在任しない場合又は参議院議員の任期満了により参議院議員の一部が在任しない場合において法及びこの政令の規定を適用する場合における衆議院議員若しくは参議院議員の数の算定又は政党に所属する衆議院議員若しくは参議院議員に係る届出については、その衆議院の解散若しくは衆議院議員の任期満了により衆議院議員でなくなった者(その衆議院の解散がなく、又はその衆議院議員の任期がなお引き続いているものとしたならば、引き続き衆議院議員として在任することができる者に限る。)又はその参議院議員の任期満了により参議院議員でなくなった者(その参議院議員の任期がなお引き続いているものとしたならば、引き続き参議院議員として在任することができる者に限る。)は、法及びこの政令に規定する衆議院議員又は参議院議員に含まれるものとして、算定し、又は取り扱うものとする。
(太字は引用者)
- (初稿:2017年10月6日 06:01)