多くの読者のイメージとは異なるかもしれませんが、白物家電は「成長市場」です。英調査会社のユーロモニター・インターナショナルによれば、2016年の世界の市場規模は14年に比べて9%拡大し、3775億ドル(約42兆円)に達しました。日本市場も14年比7%増の3兆円と拡大傾向にあります。世界中で新たな市場が急速に立ち上がっている姿を、特集ではアルファベットで「KADEN」と表現しました。
主役は、冷蔵庫や洗濯機のような昔からある家電製品ではありません。特定のニーズに対応した“とがった”機能とデザインを武器とする商品群。担い手は大手メーカーよりむしろ、小回りの利くベンチャーです。
社員8人のベンチャーであるシリウス(東京都台東区)は今年4月、カーペットや布製のソファを“水で丸洗い”できる装置「スイトル」を発売しました。8月末までに2万台が売れるヒット商品になっています。他にも、2万円を超えるトースターやデザインにこだわった空気清浄器などが、新たな顧客を開拓しています。(新勢力がヒット連発 かつてない大乱戦)
元気なのは国内ベンチャーだけではありません。シリコンバレーの起業家が標的にするのは「味覚」です。温度と時間を細かく制御できるハードウエアに、様々な料理の「レシピ」を組み合わせ、調理手法を徹底的に「デジタル化」します。最新の画像処理半導体と大容量メモリー、AIを搭載したオーブンも登場しました。(シリコンバレーが狙う 「味覚」のデジタル化)
国内大手も黙っていません。パナソニックは美容家電でヒットを生み、ベンチャー流の商品開発手法を取り入れています。外資の傘下に入ったシャープと東芝も、反転攻勢を始めました。(開発体制すら変える 逆襲に転じた国内大手)
我々の生活を便利にする家電製品がどう変わっているのか。「最後に買った家電は何だったっけ」と首を傾げる方にこそ、読んでいただきたい特集です。