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完全“自動翻訳”時代がやって来る! 商業化レース加速と関連株 <株探トップ特集>

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フュトレック <日足> 「株探」多機能チャートより フュトレック <日足> 「株探」多機能チャートより

―相次ぐ「自動翻訳機」発表で高まる関心、関連企業の取り組みは―

 2020年の東京五輪開催や、訪日外国人の増加を受けて注目が高まる自動翻訳だが、ニューラル機械翻訳(NMT:Neural Machine Translation)技術の実用化で自動翻訳の精度が飛躍的に向上したことで、商業化に向けた動きが加速している。9月には中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)が自動翻訳機を開発したと発表したことで、この動きはさらに加速するとみられ、いま注目のテーマといえるだろう。

●百度が自動翻訳機を発表

 百度が開発した自動翻訳機は、縦152×横62×厚さ9~19ミリメートル、重さ156グラムのコンパクトなサイズのモバイルルーターに自動翻訳機能を搭載したもの。中央に大小2つの丸いボタンがあり、大きなボタンを押しながらしゃべることで自動的に翻訳される。また、小さいボタンで言語の切り替えをするが、将来的には言語も自動で認識する予定という。対象言語は中国語、日本語、英語などで、百度ではまず、中国人の海外旅行客の利用を見込んでいる。

 百度に限らず、ここにて自動翻訳の進化に向けた動きが活発化している。米マイクロソフトでは今年4月、インターネットを介して音声をほぼリアルタイムで自動翻訳するサービス「マイクロソフト・トランスレーター」を日本語対応にした。英語や中国語など9言語の翻訳に対応していたが、日本語は10言語目。これまで日本語ならではの表現で翻訳が難しいとされていた敬語などにも対応している。

 また、米グーグルも10月4日にスマートイヤフォン「Pixel Buds」(日本での発売は未定)を発表した。翻訳機能を搭載し、日本語を含む40言語に対応。相手の言語を自動翻訳してイヤフォンから再生したり、逆にこちらがしゃべった内容を相手の言語に翻訳してスマートフォンから再生したりすることができるようにしている。

 国内でも、総務省が管轄する情報通信研究機構(NICT)が中心となって同時翻訳を可能とする自動翻訳システムを開発中だ。9月からは精度を高めるため、さまざまな言語の翻訳文例を蓄積する「翻訳バンク」の運用も開始している。

●神経回路を模した翻訳アルゴリズム

 自動翻訳の進化の動きが活発している背景には、人工知能(AI)技術の進展がある。

 自動翻訳は長く、「ルール型」と呼ばれるものを採用していた。これは研究者が作った文法などの規則に沿ってコンピューターが翻訳するというもので、パーツごとに翻訳したものを組み合わせたものだった。これに対して現在普及している「統計翻訳」では、対訳データを大量に集めて統計処理することで、翻訳規則や辞書を自動的に作成し翻訳している。つまり、「統計翻訳」では、ビッグデータを活用し、学習する対訳データが多ければ多いほど翻訳の精度が向上することになる。

 これをさらに進化させたのが、脳の神経回路を模したニューラルネットワークを活用した翻訳アルゴリズムを用いたニューラル機械翻訳だ。最新の機械学習技術(ディープニューラルネットワーク)を活用することで、文単位で文脈を把握して、より適切で自然な訳語を見つけられるようにした。

●11月からみらい翻訳が企業向けサービスを開始

 既に、米グーグルでは昨年後半からニューラル機械翻訳を導入しており、従来に比べて翻訳エラーを大幅に減らすことができたという。米マイクロソフトもほぼ同じ時期に「トランスレーター」でニューラル機械翻訳を採用している。

 一方、国内ではNICTが進めている自動同時通訳プロジェクトで導入され始め、既に一般公開されている多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」の高精度化に成功した。

 また、NTTドコモ <9437> やパナソニック <6752> 、フュートレック <2468> [東証2]などが出資するみらい翻訳(東京都渋谷区)は、NICTと共同でNMTエンジンを開発し、11月から企業向け翻訳アプリケーションサービスを開始する。

 ロゼッタ <6182> [東証M]では、22年に機械翻訳の完成形「T-4PO」の投入を計画しているが、そのために現在、ニューラル機械翻訳に関する投資を加速させている。

●翻訳センター、AMIにも注目

 このほかの自動翻訳の動きでは、翻訳センター <2483> [JQ]が、オンライン翻訳ツール「ヤラクゼン」を提供している八楽(東京都渋谷区)と提携し、9月から企業内の翻訳・対応業務をサポートするクラウド型の自動翻訳システム「compath」の提供を開始した。また、アドバンスト・メディア <3773> [東証M]は昨年、音声認識を活用した多言語翻訳サービス「AmiVoice TransGuide(アミボイス トランスガイド)」を開発し、現在拡販を図っている。

 さらに、執筆や翻訳、組版といった多岐にわたる業務を一元化した総合管理システムを手掛けているクレステック <7812> [JQ]や、ログバー(東京都渋谷区)が開発したウエアラブル翻訳デバイス「ili(イリー)」のレンタルを行うビジョン <9416> にも注目。NICTと組んで拡声器で話すと外国語訳の音声が出る「メガホンヤク」を開発したパナソニックや、病院で医師と外国人患者がタブレット端末をはさんで会話できるシステムを試作した富士通 <6702> なども関連銘柄といえよう。

株探ニュース(minkabu PRESS)

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