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『日本会議の研究』の菅野完が議員会館の売店は統一教会だと暴露した件について

昨年11月に阿佐ヶ谷ロフトAで行われた「右も宗教、左も宗教 ~中間総括編~」というイベントに足を運んだのですが、そこに出演した『日本会議の研究』の著者・菅野完が、議員会館の売店は統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が経営していると暴露していました。曰く、その店には岸信介に関する本を売っているから統一教会なのだとか…。

たしかに岸といえば勝共連合の創設にも関わっているし、教団本体とも昵懇だった事実はあります。しかし、だからといって岸について書かれた本を置いてあるという理由だけで、その店を統一教会認定するのはあまりに乱暴。今どき便所の落書きでももう少しマシなソースを要求されます。

この程度の薄弱な根拠をもって統一教会系列だと断定できるのなら、全国のほぼ全ての書店を統一教会にもできてしまうだろうし、開祖・文鮮明の自叙伝を扱っているアマゾンなどは教団直営店なのかという話です。

ところが、この菅野完という人は一方で妙に慎重な面もあり、ツイッターで安倍晋三と統一教会の関係について呟いている一般人を捕まえて、両者の関係を立証するにはエビデンスが足りないなどと説教を垂れていたりするのです(私のところには何も言ってきませんが)。

問題の暴露がなければ上のツイートも、日頃から厳密なファクトチェックを欠かさないからこそエビデンスが足りないなんて言えるのだろうと前向きな解釈もできましょうが、他人が提示するソースにはケチを付けて自分が用意したものには緩い評価なのだから我田引水だったということです。

もちろん上のやり取りでソースとして示されたブログに問題がないとは言いませんが、書かれていることは一応間違っていません。

このような手前勝手で短絡的な人が岩上安身は取材していないとか、リチャード・コシミズはトンデモだとか、青木理や山崎雅弘はアホだとか自分のことを棚に上げて言っているわけです。岸信介の本が置いてあるだけで、その店を統一教会認定するのは立派なトンデモですけどね。

他にも菅野完といえば以前、「生長の家栄える会」と「谷口雅春先生を学ぶ会」を混同していたことが露呈しています。

詳述は避けますが、「生長の家栄える会」というのは中小企業を経営する信者が(信者以外の)社員からカネと票を吸い上げる組織といわれています1)『週刊ポスト』1982年1月22日号『週刊ポスト』1982.1.22

名誉会長は現・生長の家2)三代目総裁に谷口雅宣が就き、リベラル化したとされる本家チラシの幹部で、この信者は「栄える会」の他にもいくつかの団体で保守的な政治活動をしており、安倍晋三をはじめとした右派議員とも親しいです3)安倍晋三の左隣がその幹部(青年真志塾FBより)神谷光徳と安倍晋三。このことから、生長の家の信徒は政治活動を絶ったと信じている人なら勘違いしやすいかも知れません。

でも、これは日本会議や生長の家を研究する専門家にはあってはならない初歩的なミス。なにしろ素人の私ですら知っている程度のことなのだから。

ついでなので『日本会議の研究』の販売差し止めの件にも触れておきますが、重要なのは捏造の数ではなく有無なんです。捏造は1つでもあったらその時点でアウト。フィクションを書いたらノンフィクションライターを名乗ったらアカンのです。元より、宗教団体が推薦している書籍4)リンク先の世界聖典普及協会は生長の家の関連団体の内容を疑うくらいのリテラシーは必要でしょうが。

菅野完はツイートなんかを見ても知ったかぶりが多いようなので、彼の言説に接する際はあまり真に受けず、眉にたっぷり唾をつけて右から左へ聞き流した方が安全ではないかと。誰しもデマの拡散に加担するのは避けたいですからね。

それにしても、この人のいうエビデンスって何なんだろう。

〈敬称略〉

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脚注   [ + ]

1. 『週刊ポスト』1982年1月22日号『週刊ポスト』1982.1.22
2. 三代目総裁に谷口雅宣が就き、リベラル化したとされる本家チラシ
3. 安倍晋三の左隣がその幹部(青年真志塾FBより)神谷光徳と安倍晋三
4. リンク先の世界聖典普及協会は生長の家の関連団体