世の中には人を騙しお金や金銭的な価値のあるモノを奪う「詐欺」を行う集団は今も昔も変わることなく存在しています。
当然ながら人を欺き金品を奪う詐欺行為は刑法における犯罪であり、人間として許しがたい行為といえるでしょう。
詐欺は「騙される被害者」がいてこそ「欺く詐欺集団」がおり成立する犯罪です。
つまり詐欺に騙される人がいなければ詐欺は成り立つことはないのですが、そこには巧妙な手口で相手を騙し続けており詐欺という犯罪がなくなることはありません。
そんな詐欺被害の傾向として、これまでとは異なった形での被害が増えつつあることをご存知でしょうか?
詐欺にはあらゆる手口があり、競馬必勝法やパチンコ攻略法といったギャンブル系のものや法人を相手に詐欺を行う手口もあります。
そんな詐欺のひとつにアダルトサイトや有料動画サイトをかたる架空請求詐欺という手口があり、その被害が急増しているのです。
このような架空請求詐欺では単に登録料や利用の請求だけではなく、裁判所や弁護士をかたり裁判の費用を請求してくるなどその手口はかなり巧妙化しており被害者は後を絶ちません。
しかしこの架空請求詐欺のこれまでにない特徴となるのが現金を騙し取ることはないという点にあります。
基本的に詐欺というのは現金を騙し取ることを目的としており、架空名義の銀行口座に振込させるのが一般的な方法でした。
ところが近年の架空請求詐欺の手口では現金振込を促すことはなく、最寄のコンビニに行くよう指示されることになります。
ではこの現金を騙し取る方法ではない架空請求詐欺の手口について検証していきます。
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近年、増加傾向にある新しい特殊詐欺の手口とは?
数年前には高齢者をターゲットとした息子を装う「オレオレ詐欺」が社会問題化したのはまだそこまで昔の話でもありません。
当時の特殊詐欺の特徴は
- 独り身のシニア層が被害者となるケースが多い
- 息子を装う男性から電話が来る
- 何らかの理由からお金が必要となる
- 指定された銀行口座に振り込むことになる
といった手口で相当な金額の被害が出ました。
このようなオレオレ詐欺の対策として、高齢者には不審な電話に注意するというだけではなく、架空名義の銀行口座の凍結や高齢者による振込に確認が求められるようになり詐欺被害を未然に防止するようになったのです。
しかしながらその後、詐欺の手口は巧妙化し最近では高齢者だけではなく20代や未成年といった若い世代まで詐欺の被害者となっています。
ではどのような詐欺の手口が主流となっているのかといいますと、
- インターネット有料サイトの使用料名目の架空請求
- 高額当選支払いのための手数料の請求
- 出会い系サイトの登録料未納の請求
といったような名目での架空請求による詐欺の手口が増加しているのです。
最近の詐欺の傾向としては初めから数十万円といったようなハードルの高い金額を請求するのではなく、5万円以下となるある程度、支払いしやすい金額を請求する手口となっています。
そして過去にあったオレオレ詐欺のように自宅の固定電話に連絡がくるのではなく、メールやショートメッセージといった文字でのコンタクトというのが特徴といえるでしょう。
このような不審なメールやメッセージには必ず電話番号が記載されており、至急連絡するよう書かれています。
当然ながら大半の方は身に覚えのない請求は無視しますが、少しでも心当たりがある方や不安に感じた方はついその電話番号に連絡してしまうのです。
そして詐欺の手口に嵌められる結果に陥ることに・・・。
架空請求詐欺に騙された被害者の体験談
突然のメッセージからの始まり
普段と何も変わらない冬のある日、大手のポータルサイトのYahoo!からスマートフォンのショートメッセージに突然、連絡が届いたのです。
このショートメッセージというのは相手の電話番号さえわかればメールのように70文字と限られた短い文章を送ることができるサービスです。
一般的なサイトの会員登録などではメールアドレスで行うことがほとんどであり、あまりショートメッセージというのは使用する機会がない方も多い機能ですが、Yahoo!からショートメッセージである連絡が届きました。
その内容はといいますと
有料動画閲覧履歴があり、未納料金が発生しております。
本日ご連絡がなき場合、法的手続きに移行します。
Yahoo!相談窓口 03-0000-0000
といったものでした。
日頃からスマホでインターネットのブラウザを開くとすぐにYahoo!のホームページが見ることができるようになっており、そこからニュースや天気予報など知りたい情報を得ていましたがそんなYahoo!から料金の請求が届いたのです。
当然ながらYahoo!でのアカウントは取得しておりメールアドレスもYahoo!メールを使用しています。
ところがYahoo!で何かの動画を見た覚えはありませんでした。
何かの手違い若しくは誤って動画を見るボタンを気付かないうちにクリックしていたのでしょうか?
メッセージ内にある電話番号に詳細な内容を問い合わせてみることにしました。
すると一方的に「有料動画の閲覧履歴があり未納料金を支払ってください。本日中に支払わなければ裁判で争うことになります」と強い口調で言い切られたのです。
請求された金額は2万5千円。
どのような有料動画をどのくらいの時間見ていたのかはわかりませんが、支払うことができない金額ではありませんでした。
「この2万5千円を払えばこの問題はすべて解決し、何かに怯える心配もなくなるのであれば」という思いがよぎり請求される未納料金を支払うことに決めたのです。
誰しもがそうだと思いますが終わることのない不安を抱いていることは、人生を楽しむことがまったくできません。
たった2万5千円で不安をぬぐい払えるのであれば、安い金額といえるでしょう。
銀行振込ではなくコンビニでの支払い
一般的な大手企業への料金の支払いは指定された法人名義の銀行口座への振込がほとんどといえるでしょう。
そのため担当者に支払いの意思を示し振込先の金融機関を尋ねたところ「今回の未納料金の支払いは電子マネーで決済していきますので現金を持って最寄のコンビニに向かってください」と言われたのです。
電子マネーでの決済!?
確かにコンビニには数種類ものカードタイプの電子マネーが並べられており現金で購入することはできます。
近所にあるセブンイレブンに到着後、再度支払い方法について確認したところ「amazonギフト券の金額の指定できるバリアブルカードで2万5千円分購入してください。そしてカードのスクラッチ部分を削りその番号をスマホで撮影しメールで送ってください」
2万5千円分のamazonギフト券を購入すれば電子マネーを購入することはできますが、それをメールで送ることによって本当に未納料金の決済ができるのか不安でしたが、促されるままに手続きを行いました。
すると「支払いの確認ができました。次回からは未納になる前にきちんとお納めください」と無事決済の確認ができたことが伝えられ事なきをえたのです。
未納料金の支払いが完了した後日
Yahoo!で有料動画を見たか見ていないかはわかりませんが、とりあえず未納料金の問題は解決したと安堵していました。
ところが今度は私の携帯電話に直接、弁護士事務所を名乗る男性から連絡があったのです。
「先日の未納料金の件で裁判の手続きが進行しており、それを取り下げる手続きを行わなければ裁判が開かれる」という内容でした。
未納料金を支払ったことによってもう全てが解決に至ったものかと思っていたのですが、裁判の手続きに関してはまだ終わっていなかったのです。
そしてどのような手続きをすればいいのかを問い合わせたところ、またコンビニでamazonギフト券を購入するよう促されました。
これに違和感を感じ、弁護士事務所をインターネットで検索したところ実在するものだということはわかりましたが、直接その弁護士がいるかを電話で確認してみるとそんな人物は在籍していなかったのです。
つまりこの裁判の話しは真っ赤なウソであり電話の相手の男性は弁護士ではありません。
「完全に騙された!!!」
そう気付いたときにはもう弁護士事務所と称した電話番号は通話できない状態となっていました。
結果、被害は2万5千円のamazonギフト券だけでした。
amazonのカスタマーサービスに確認したところ、もうすでに使用済みとなっており返金はできない状態ということは言うまでもありません。
特殊詐欺でamazonギフト券などの電子マネーが増加している
近年の特殊詐欺の傾向として銀行口座への現金振込から郵送や受け子への手渡しと広がり、ついには現金ではなくamazonギフト券や楽天ポイントギフトといった身近に購入できるカードタイプの電子マネーが使用されるようになりました。
「現金を騙し取らなければ詐欺ではない」そうではありません。
現金だけではなく他人を欺くことによって所有するモノを騙し取れば立派な詐欺行為となるのです。
ではなぜ現金の代わりにamazonギフト券などの電子マネーが詐取されるようになったのか?
これにはいくつかの理由があり、現金よりも電子マネーは詐欺に適したものとなるのです。
受け子や出し子を使う必要がなくなる
これまでの現金を騙し取る詐欺というのは少なからず逮捕されるリスクがあり、詐欺グループは騙し取った現金を受け取る「受け子」や銀行口座に振り込まれた現金を引き出す「出し子」を利用していました。
当然ながらこのような受け子や出し子を雇う費用がかかりますが、amazonギフト券などの電子マネーの場合にはこういった費用は必要ありません。
そして詐欺グループは逮捕される危険性はなく現金と同等の価値のある電子マネーを騙し取ることができるのです。
ギフト券番号だけで利用価値を奪うことが可能
街中にある金券ショップで高価買取・格安販売されている一般的なギフトカードや商品券の場合、「券」を提携している店舗で現金の代わりに支払うことができます。
したがって商品券自体に価値があるものですが、amazonギフト券などのカードタイプの電子マネーには店頭で販売されている「カード」自体には商品券のような価値はありません。
ではカードタイプの電子マネーの価値はどこにあるのかといいますと、カードの裏面にある銀色のスクラッチを削ると表れる「ギフト券番号」という文字に価値があるのです。
特殊詐欺ではコンビニで購入したカードタイプの電子マネーをどこかに郵送させるのではなく、このギフト券番号の部分をメールやFAXで送らせます。
それだけで電子マネーの利用価値を詐欺グループは奪うことができ使用することができるのです。
そして詐欺が発覚する頃にはもうすでに電子マネーは使用されており、価値のないカードだけが被害者のもとに残ることになります。
現金を振り込みさせるよりも心理的なハードルが低い
ここ何年も詐欺は社会問題化しており、銀行やコンビニなどでも詐欺に関する注意喚起はよく見かけるのではないでしょうか?
しかしそれでも詐欺は根絶することはなく今もなお続いております。
カードタイプの電子マネーを購入してギフト券番号を送る詐欺の手口というのは、ATMで現金を振り込ませるよりも心理的なハードルは低いことは間違いないでしょう。
これはクレジットカードで買い物をしすぎてしまうのと同じで電子マネーというのも現金とは異なった感覚となることが少なくありません。
そのため多くの方が現金振込よりも抵抗なく電子マネーを送ってしまっているのです。
換金性が高く現金化が容易にできる
現金であれば日本中のどこでも使うことはできますが、amazonギフト券はAmazonサイトで買い物をすることしかできません。
そのため詐欺グループは詐取した電子マネーを使用するのではなく現金化する必要があるのです。
金券ショップでは電子マネーを取り扱っているお店はほとんどありませんが、インターネット上には電子マネー専門の買取サイトや売買サイトは数多くあり容易に現金化することができます。
最近ではamazonギフト券などの電子マネーに加え、仮想通貨を購入させる詐欺も登場しておりこういった新たな手口の詐欺はさらに増加していくのではないのでしょうか?