沈没した「呪われし軍艦」をスキャン、3Dで再現

16世紀スウェーデンの軍艦マルス号、教会の鐘で作った大砲が災い?

2017.10.05
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【動画】最新技術によって「呪われし軍艦」の詳細が明らかに。(解説は英語です)

 1564年の海戦で沈没したスウェーデンの軍艦マルス号。海事考古学者たちがその詳細を、3Dイメージで再現することに挑戦している。海底をスキャンして3Dデータを取得し、沈没した軍艦を再現するのだ。

 スウェーデンにあるセーデルトーン大学の海事考古学教授、ヨハン・レンビー氏が率いる研究チームは、ここ数年にわたって、今から450年以上前に沈没したマルス号の写真撮影やスキャンを行ってきた。この軍艦は、今まで発見された当時の船のなかでも、特に保存状態がよいことがわかっている。(参考記事:「バルト海底に眠る450年前の軍艦」

 ローマ神話における戦争の神マルスの名前にちなんだマルス号は、スウェーデン王エリク14世の旗艦で、3本のマストを持つ大型軍艦だった。その全長は約60メートル。デンマークとドイツの連合軍を相手にした1564年の戦いで、バルト海に沈むことになった。沈没時には、100門以上の大砲と、800~900人のスウェーデン人およびドイツ人の乗組員を抱えていた。(参考記事:「大富豪はどうやって戦艦「武蔵」を発見したか」

 マルス号が沈没した場所は、レンビー氏のチームが2011年に発見した。この木造軍艦が横たわっているのは、スウェーデンのエーランド島近く、深さ約76メートルの場所だ。最初の調査で、驚くほど船体の保存状態がよいことがわかった。潮の流れが遅いことや、水温が低く暗いといった好条件が重なっていたためだ。(参考記事:「沈没船41隻を発見、驚異の保存状態、黒海」

 船の引き揚げには莫大な費用がかかり、船体や遺物が破損する可能性もある。そのため、レンビー氏のチームは、写真測量とマルチビーム・ソナー(音響測深機)を使って記録する方法を選択した。このマルチビーム・ソナーは、誤差2ミリ以下という精度で海底の地形や物体の形状をスキャンできる。そのデータを使えば、マルス号の船体だけでなく、保存状態のよい海戦の現場まで再現が可能だ。(参考記事:「ツタンカーメンの墓を再びレーダー調査」

 この研究プロジェクトは、ナショナル ジオグラフィック協会による資金援助を受けている。

 レンビー氏によると、マルス号の大砲は教会の鐘を溶かして作られたものだったため、最初から沈没する運命にあったという伝説が残されている。(参考記事:「300年前の沈没船から財宝、王室献上コインも」

文=Kristin Romey/訳=鈴木和博

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