経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

希望の党の経済政策・安東泰志氏の論考を読んで

2017年10月05日 | 経済
 小池新党の政策を知りたいと思い、ダイヤモンドO.L.(10/4)で、安東さんの論考を読ませていただいた。そこで感じたのは、日本の財政当局のトリックに引っかかっているのではないかという心配だ。このトリックには、民主党政権も、消費増時の安倍政権もだまされている。筆者は、日本には、安定的で無理のないマクロ経済運営をしてもらいたいと願っており、この観点から指摘するものである。

 アベノミクスの特徴は大規模な金融緩和であるが、大規模な財政出動もしていると、よく誤解される。事実は、補正後の歳出総額は、民主党政権以来、100兆円程度と横バイである。看板の「機動的な財政政策」は、歳出の膨張を意味していないのに、勘違いされやすい表現になっている。トリックは、当初予算を小さめにし、補正を積んで、いかにも膨らませたように見せ、実際には前年並みに抑制するテクニックである。

 結局、アベノミクスの実態は、金融緩和+緊縮財政になっており、それゆえ、国・地方の財政赤字を、2020年度目標には届かないにしても、GDP比で2%以上も改善できた。むろん、それだけの緊縮をすれば、内需は抑制され、消費は増えず、物価も上がらないことになる。成長の大部分は、輸出の増大に伴って確保された。したがって、マクロ経済運営の争点は、これを変えるかどうかになる。

 2017年度の当初予算は97.5兆円で、前年度補正後より2.7兆円少ないので、今後、それだけの補正予算を打たないと緊縮財政になる。補正予算では、災害復旧や地方交付税への分配などもしなければならないため、全部を政策的には使えないが、1.7兆円位は使えるだろう。ちょうど、安倍首相が打ち出した消費増税の使途見直し分に相当する。筆者が当局者なら、「補正を使って前倒しで実現しましょう」と言い、2019年度は予定通りの純増税にする。

 こうすれば、財政再建の目標を動かさずに済むわけだからね。むろん、純増税に、その時の日本経済が耐えられるかどうかは別問題だ。あと2年で物価2%目標を達成できているかも知れないし、あるいは、円高による輸出不振に苦しんでいるかもしれない。いずれにせよ、ロクな需要管理の対応策なしで突っこむことは、前回からして明らかだ。新党には、そうしたマクロ経済運営に関する見る目を持ってもらいたいものである。


(今日までの日経)
 財政規律・金利上がらず、歳出膨張。低税率競争 海外移転招く・Mウルフ。
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