柏崎刈羽原発6・7号機 再稼働前提の審査に事実上合格

柏崎刈羽原発6・7号機 再稼働前提の審査に事実上合格
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新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機の審査で原子力規制委員会は、東京電力が示した安全対策が新しい規制基準に適合しているとして、事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめました。福島第一原発の事故を起こした東京電力の原発が再稼働の前提となる審査に事実上合格したのは初めてです。
4日開かれた原子力規制委員会では、柏崎刈羽原発6号機と7号機について、東京電力が示した安全対策が新しい規制基準に適合しているとする審査書の案について議論が行われました。

この中では、核燃料が冷やせなくなり、格納容器が壊れて放射性物質が外に放出するといった重大事故の対策として、新たに設置した設備や対応の手順などが示され、規制委員会の5人の委員が全会一致で事実上の合格を意味する審査書案を取りまとめました。

福島第一原発の事故を起こした東京電力の原発が再稼働の前提となる審査に事実上、合格したのは初めてで、福島第一原発と同じ沸騰水型と呼ばれる原発でも初めてです。

規制委員会は、今後、1か月間、一般からの意見募集を行った上で審査書を正式に決定することにしています。しかし、新潟県の米山知事は、再稼働に必要な地元の同意について、3年から4年かかるという原発事故の検証が終わるまで判断しない考えを示しています。

柏崎刈羽原発の審査をめぐって規制委員会は、東京電力に原発を運転する適格性があるか確認するというほかの原発の審査にはなかった異例の対応をし、東京電力は、福島第一原発の廃炉に取り組む覚悟などを、事業者が守らなくてはならない「保安規定」に盛り込むことになります。

また、4日、委員会では、柏崎刈羽原発で導入された格納容器内で熱くなった水を海水で冷やし、再び、格納容器などに戻して循環させる事故の際の対策が、内部の気体を放出して圧力を下げる「ベント」より有効だとして、今後、沸騰水型の原発では同じ対策を求めるなど、規制基準を見直すことを決めました。

規制委員長「審査の技術的内容に自信」

新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機が新しい規制基準に事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめたことについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、「審査の技術的な内容には自信を持っている」と述べ、審査は丁寧な議論を尽くしたという認識を示しました。

更田委員長は午後の会見で、柏崎刈羽原発6,7号機が新しい規制基準に事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめたことについて、「東京電力とのやり取りはもちろん、委員会内部での議論も十分尽くすことができた。審査の技術的な内容には自信を持っている」と述べ、審査は丁寧な議論を尽くしたという認識を示しました。

また、福島第一原発の事故を起こした東京電力が再び原発を運転する資格があるのかという“適格性”については、「あると判断した」と述べたうえで、「引き続き見ていく。今後も国民に対する約束がきちんと履行されるか注視したい」と述べ、原発の運転にあたって、経済性より安全性を優先するなどとした東京電力の姿勢などを厳しくチェックしていく考えを示しました。

見直された地震の揺れと津波の高さ

<地震想定>
柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機の再稼働の前提となる審査で大きな焦点となったのは、原発で想定される最大の地震の揺れ、「基準地震動」でした。柏崎刈羽原発は、10年前の新潟県中越沖地震で、1号機から7号機までのすべての号機で設計時の想定を上回る地震の揺れが観測され、基準地震動が大きく見直されました。

東京電力は地震の翌年、中越沖地震の震源とされ、原発から北西側の沖合にある長さおよそ36キロの断層をもとに基準地震動を最大で2300ガルに引き上げました。これは、国内の原発の基準地震動では最も大きい値です。

<津波想定>
また、想定される最大の津波の高さも見直されました。東京電力は、海底の活断層が連動したり、地滑りが起きたりした場合を考慮して、最大8.3メートルと従来の2倍余りに引き上げました。6号機と7号機が立地する敷地は海抜12メートルの高さがありますが、さらに3メートルかさ上げされ、東京電力は最大規模の津波が押し寄せても問題ないとしています。

再稼働には地元同意が必要

4日、取りまとめられた審査書の案は、このあと1か月間行われる一般からの意見募集と、経済産業大臣からの意見聴取などを踏まえて、決定されます。

さらに、この審査書を基にして設備ごとの耐震性や強度などの詳しい設計などをまとめた「工事計画」と、原発事故が起きたときの発電所の態勢や、設備の管理方法など「守らなくてはならないルール」を事業者自らが定めて申請する「保安規定」の認可が必要です。一方、柏崎刈羽原発の審査では、福島第一原発の事故を起こした東京電力に原発を運転する「適格性」があるかを確認する、異例の対応が取られました。

福島第一原発の廃炉に取り組む覚悟や経済性よりも安全性を優先することなどを「保安規定」に盛り込ませ、所管する経済産業大臣への意見聴取の中で、東京電力を監督・指導する意向を示すことを条件に、「適格性」を認めることにしました。

ただ、東京電力の覚悟や取り組みといった抽象的な対応を評価する判断基準は示されておらず、課題となっています。

こうした法律上の手続きが終わっても、再稼働には地元の同意が必要です。新潟県の米山知事は、福島第一原発の事故の検証が終わるまで柏崎刈羽原発の再稼働を認めるかどうか判断しない考えを示します。
検証には、3年から4年かかるとしていて再稼働の時期は見通せない状況となっています。

柏崎市長 規制委の判断評価

柏崎刈羽原発の6号機と7号機の審査で、原子力規制委員会が4日、東京電力が示した安全対策が新しい規制基準に適合しているとして事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめたことについて、原発が立地する新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は「原子力規制委員会がこれだけの年月をかけ科学的で合理的な審査を積み重ねたプロセスを信頼し、尊重したい」と述べ規制委員会の判断を評価しました。

桜井市長は柏崎刈羽原発の再稼働の条件として、ことし7月、東京電力に対して一部の原発の廃炉を申し入れ、7つの原発が集中しているリスクを軽減するとともに廃炉ビジネスの振興につなげたいとしています。

これについて桜井市長は「6号機や7号機の再稼働への準備とともに、原発が集中して立地しているリスクを減らすために1号機から5号機についての廃炉計画を示すよう改めて東京電力側に求めていきたい」と述べました。

新潟県知事 県独自の検証の重要性強調

柏崎刈羽原発の審査で、東京電力の示した安全対策が事実上、合格とされたことについて、新潟県の米山知事は「今回の件によって、新潟県の検証は全く左右されない。県としては広域自治体としてきちんと安全確認しなければ再稼働という議論はできないという立場は変わらない」と述べ、新潟県が独自に実施する原発事故などの検証が終わるまでは柏崎刈羽原発の再稼働の議論はできないという考えを改めて示しました。

そのうえで、「審査書案の取りまとめは設備の技術的なものだけであり、原発事故が健康や生活に及ぼす影響や避難計画についても審査の対象ではない。こうしたことをきちんと検証することは非常に重要だ」と述べ、県の検証作業の重要性を強調しました。

全国の原発状況

再稼働の前提となる原子力規制委員会の新たな規制基準の審査には、これまでに6原発12基が合格し、このうち、鹿児島県にある川内原発など3原発5基が稼働しました。

廃炉が決まった原発を除くと全国には16原発42基があり、建設中の青森県にある大間原発を含め、これまでに26基で再稼働の前提となる新しい規制基準の審査の申請が出されました。

このうち、基準に適合していると認められ、審査に合格した原発は川内原発1号機と2号機、愛媛県にある伊方原発3号機、福井県にある高浜原発3号機と4号機、大飯原発3号機と4号機、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機、それに原則40年に制限された運転期間の延長が認められた高浜原発1号機と2号機、福井県にある美浜原発3号機の6原発12基です。いずれも「PWR」=加圧水型と呼ばれるタイプで、先行して審査が進められました。

このほかのPWRでは、北海道にある泊原発3号機が川内原発などと同じ4年前に審査の申請をしましたが、原発で想定される最大の地震の揺れなどの審議が続いており、合格の具体的な時期は見通せていません。

これに対し、事故を起こした福島第一原発と同じ「BWR」=沸騰水型と呼ばれるタイプの原発では8原発10基で審査が申請されています。

このうち、柏崎刈羽原発の次に審査が進んでいるのが茨城県にある東海第二原発です。ただ、東海第二原発は、来年11月で運転開始から40年を迎えるため、それまでに運転延長に必要な審査に合格しなければ廃炉となります。

審査の山となる最大の地震と津波の想定などは了承されましたが、防潮堤の地盤の液状化対策が必要で、規制委員会が設計に問題がないか確認しています。このため、期限内に運転延長の手続きが終わるかどうか、見通せない状況となっています。

柏崎刈羽原発6・7号機 再稼働前提の審査に事実上合格

新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機の審査で原子力規制委員会は、東京電力が示した安全対策が新しい規制基準に適合しているとして、事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめました。福島第一原発の事故を起こした東京電力の原発が再稼働の前提となる審査に事実上合格したのは初めてです。

4日開かれた原子力規制委員会では、柏崎刈羽原発6号機と7号機について、東京電力が示した安全対策が新しい規制基準に適合しているとする審査書の案について議論が行われました。

この中では、核燃料が冷やせなくなり、格納容器が壊れて放射性物質が外に放出するといった重大事故の対策として、新たに設置した設備や対応の手順などが示され、規制委員会の5人の委員が全会一致で事実上の合格を意味する審査書案を取りまとめました。

福島第一原発の事故を起こした東京電力の原発が再稼働の前提となる審査に事実上、合格したのは初めてで、福島第一原発と同じ沸騰水型と呼ばれる原発でも初めてです。

規制委員会は、今後、1か月間、一般からの意見募集を行った上で審査書を正式に決定することにしています。しかし、新潟県の米山知事は、再稼働に必要な地元の同意について、3年から4年かかるという原発事故の検証が終わるまで判断しない考えを示しています。

柏崎刈羽原発の審査をめぐって規制委員会は、東京電力に原発を運転する適格性があるか確認するというほかの原発の審査にはなかった異例の対応をし、東京電力は、福島第一原発の廃炉に取り組む覚悟などを、事業者が守らなくてはならない「保安規定」に盛り込むことになります。

また、4日、委員会では、柏崎刈羽原発で導入された格納容器内で熱くなった水を海水で冷やし、再び、格納容器などに戻して循環させる事故の際の対策が、内部の気体を放出して圧力を下げる「ベント」より有効だとして、今後、沸騰水型の原発では同じ対策を求めるなど、規制基準を見直すことを決めました。

規制委員長「審査の技術的内容に自信」

新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機が新しい規制基準に事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめたことについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、「審査の技術的な内容には自信を持っている」と述べ、審査は丁寧な議論を尽くしたという認識を示しました。

更田委員長は午後の会見で、柏崎刈羽原発6,7号機が新しい規制基準に事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめたことについて、「東京電力とのやり取りはもちろん、委員会内部での議論も十分尽くすことができた。審査の技術的な内容には自信を持っている」と述べ、審査は丁寧な議論を尽くしたという認識を示しました。

また、福島第一原発の事故を起こした東京電力が再び原発を運転する資格があるのかという“適格性”については、「あると判断した」と述べたうえで、「引き続き見ていく。今後も国民に対する約束がきちんと履行されるか注視したい」と述べ、原発の運転にあたって、経済性より安全性を優先するなどとした東京電力の姿勢などを厳しくチェックしていく考えを示しました。

見直された地震の揺れと津波の高さ

<地震想定>
柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機の再稼働の前提となる審査で大きな焦点となったのは、原発で想定される最大の地震の揺れ、「基準地震動」でした。柏崎刈羽原発は、10年前の新潟県中越沖地震で、1号機から7号機までのすべての号機で設計時の想定を上回る地震の揺れが観測され、基準地震動が大きく見直されました。

東京電力は地震の翌年、中越沖地震の震源とされ、原発から北西側の沖合にある長さおよそ36キロの断層をもとに基準地震動を最大で2300ガルに引き上げました。これは、国内の原発の基準地震動では最も大きい値です。

<津波想定>
また、想定される最大の津波の高さも見直されました。東京電力は、海底の活断層が連動したり、地滑りが起きたりした場合を考慮して、最大8.3メートルと従来の2倍余りに引き上げました。6号機と7号機が立地する敷地は海抜12メートルの高さがありますが、さらに3メートルかさ上げされ、東京電力は最大規模の津波が押し寄せても問題ないとしています。

再稼働には地元同意が必要

4日、取りまとめられた審査書の案は、このあと1か月間行われる一般からの意見募集と、経済産業大臣からの意見聴取などを踏まえて、決定されます。

さらに、この審査書を基にして設備ごとの耐震性や強度などの詳しい設計などをまとめた「工事計画」と、原発事故が起きたときの発電所の態勢や、設備の管理方法など「守らなくてはならないルール」を事業者自らが定めて申請する「保安規定」の認可が必要です。一方、柏崎刈羽原発の審査では、福島第一原発の事故を起こした東京電力に原発を運転する「適格性」があるかを確認する、異例の対応が取られました。

福島第一原発の廃炉に取り組む覚悟や経済性よりも安全性を優先することなどを「保安規定」に盛り込ませ、所管する経済産業大臣への意見聴取の中で、東京電力を監督・指導する意向を示すことを条件に、「適格性」を認めることにしました。

ただ、東京電力の覚悟や取り組みといった抽象的な対応を評価する判断基準は示されておらず、課題となっています。

こうした法律上の手続きが終わっても、再稼働には地元の同意が必要です。新潟県の米山知事は、福島第一原発の事故の検証が終わるまで柏崎刈羽原発の再稼働を認めるかどうか判断しない考えを示します。
検証には、3年から4年かかるとしていて再稼働の時期は見通せない状況となっています。

柏崎市長 規制委の判断評価

柏崎刈羽原発の6号機と7号機の審査で、原子力規制委員会が4日、東京電力が示した安全対策が新しい規制基準に適合しているとして事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめたことについて、原発が立地する新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は「原子力規制委員会がこれだけの年月をかけ科学的で合理的な審査を積み重ねたプロセスを信頼し、尊重したい」と述べ規制委員会の判断を評価しました。

桜井市長は柏崎刈羽原発の再稼働の条件として、ことし7月、東京電力に対して一部の原発の廃炉を申し入れ、7つの原発が集中しているリスクを軽減するとともに廃炉ビジネスの振興につなげたいとしています。

これについて桜井市長は「6号機や7号機の再稼働への準備とともに、原発が集中して立地しているリスクを減らすために1号機から5号機についての廃炉計画を示すよう改めて東京電力側に求めていきたい」と述べました。

新潟県知事 県独自の検証の重要性強調

柏崎刈羽原発の審査で、東京電力の示した安全対策が事実上、合格とされたことについて、新潟県の米山知事は「今回の件によって、新潟県の検証は全く左右されない。県としては広域自治体としてきちんと安全確認しなければ再稼働という議論はできないという立場は変わらない」と述べ、新潟県が独自に実施する原発事故などの検証が終わるまでは柏崎刈羽原発の再稼働の議論はできないという考えを改めて示しました。

そのうえで、「審査書案の取りまとめは設備の技術的なものだけであり、原発事故が健康や生活に及ぼす影響や避難計画についても審査の対象ではない。こうしたことをきちんと検証することは非常に重要だ」と述べ、県の検証作業の重要性を強調しました。

全国の原発状況

再稼働の前提となる原子力規制委員会の新たな規制基準の審査には、これまでに6原発12基が合格し、このうち、鹿児島県にある川内原発など3原発5基が稼働しました。

廃炉が決まった原発を除くと全国には16原発42基があり、建設中の青森県にある大間原発を含め、これまでに26基で再稼働の前提となる新しい規制基準の審査の申請が出されました。

このうち、基準に適合していると認められ、審査に合格した原発は川内原発1号機と2号機、愛媛県にある伊方原発3号機、福井県にある高浜原発3号機と4号機、大飯原発3号機と4号機、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機、それに原則40年に制限された運転期間の延長が認められた高浜原発1号機と2号機、福井県にある美浜原発3号機の6原発12基です。いずれも「PWR」=加圧水型と呼ばれるタイプで、先行して審査が進められました。

このほかのPWRでは、北海道にある泊原発3号機が川内原発などと同じ4年前に審査の申請をしましたが、原発で想定される最大の地震の揺れなどの審議が続いており、合格の具体的な時期は見通せていません。

これに対し、事故を起こした福島第一原発と同じ「BWR」=沸騰水型と呼ばれるタイプの原発では8原発10基で審査が申請されています。

このうち、柏崎刈羽原発の次に審査が進んでいるのが茨城県にある東海第二原発です。ただ、東海第二原発は、来年11月で運転開始から40年を迎えるため、それまでに運転延長に必要な審査に合格しなければ廃炉となります。

審査の山となる最大の地震と津波の想定などは了承されましたが、防潮堤の地盤の液状化対策が必要で、規制委員会が設計に問題がないか確認しています。このため、期限内に運転延長の手続きが終わるかどうか、見通せない状況となっています。