柏崎刈羽原発 問われた東京電力の“適格性”

柏崎刈羽原発 問われた東京電力の“適格性”
柏崎刈羽原発の審査で原子力規制委員会は、原発事故を起こした東京電力に再び原発を運転する資格があるのか、“適格性”を確認するというほかの電力会社には求めていない異例の対応をとりました。
東京電力をめぐっては、原発事故のあと、2か月以上、「メルトダウン」を公表しなかったことや、審査の中で、緊急時の対応拠点の耐震不足を把握しながら誤った説明を続けたことが批判され、組織の体質が疑問視されていました。

このため、規制委員会は、技術的な課題だけではなく、東京電力の安全に対する姿勢を確認する必要があるとして、ことし7月、経営陣から直接、聞き取りを行いました。

この中で当時の田中俊一委員長は「福島第一原発の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すことができない事業者に原発を運転する資格はない」としたうえで、汚染水処理のあとに残る放射性物質を含んだ大量の水の処分や、解体作業で出る放射性廃棄物の搬出など廃炉の課題について触れ、「東京電力の主体性がさっぱり見えない」と批判し、対応を文書で回答するよう求めました。

これに対して東京電力は、ことし8月、廃炉に取り組む姿勢や覚悟などを文書で回答しましたが、具体的な方針は示されず、その後に行われた規制委員会と経営陣との面会でも説明は具体性を欠きました。

ところが、田中前委員長は、東京電力の回答は国民への約束だとして、「安全に対する取り組みの姿勢を示すもの」と一転して評価。先月13日には規制委員会の大半の委員も東京電力の姿勢に理解を示します。

そして、先月20日、規制委員会は福島第一原発の廃炉に取り組む覚悟や経済性よりも安全性を優先して原発を運転することなどを事業者が守らなければならない「保安規定」に盛り込み、所管する経済産業省が東京電力を監督・指導することを条件に原発を運転する“適格性”を認めました。

「保安規定」は、事業者みずからが安全確保の取り組みを定めるルールで、重大な違反だと判断された場合、運転停止など重い処分が出される可能性もあります。

今後、規制委員会は、東京電力が申請する保安規定の内容に問題がないか、審査することになります。しかし、廃炉に取り組む覚悟などが保安規定に違反していないかどうかを判断する基準は示されていません。規制委員会には、審査の内容を新潟県や福島県をはじめ、国民にわかりやすく説明することが求められています。

福島教訓に安全対策

東京電力は、柏崎刈羽原発で原発事故を教訓にしたさまざまな安全対策を進めてきました。

<福島原発の事故では>
福島第一原発の事故では、地震によって外部からの電源が失われたあと、15メートルに達する津波が押し寄せ、非常用の電源や電力を供給する設備などが壊れて原子炉を冷やすことができず、メルトダウンや水素爆発などが起きました。東京電力は、柏崎刈羽原発で原発事故を教訓にしたさまざまな安全対策を進めてきました。

<柏崎刈羽原発では>
(津波対策)
柏崎刈羽原発では、最大の津波の高さを8.3メートルと想定したうえで、15メートルの津波にも耐えられるよう防潮堤が整備されたほか、建屋の扉は、水が入り込むのを防ぐ措置が取られました。

(電源)
また、津波が届かない高台に電源車や配電盤を設置し、持ち運びができるバッテリーなども用意しました。

(注水)
さらに原子炉を冷やす手段として、圧力が高い原子炉に高圧の水を送り込むことができる設備を新たに1基設け、多重化を図りました。消防車も42台配備され、必要な水をおよそ2万トン蓄える貯水池を設けました。

(ベント)
事故では、放射性物質を封じ込める格納容器が破損するのを防ぐため、内部の圧力を下げる「ベント」と呼ばれる操作が、電源がなかったために難航し、事故の深刻化につながりました。柏崎刈羽原発では、電源の強化でベントを確実に実施するだけでなく、新たな対策を取り入れました。

(循環冷却システム)
それは、格納容器内で熱くなった水を建物の外に配置した特殊な車両を介して海水で冷やし、再び、原子炉や格納容器に戻して循環させるもので、ベントと同じように格納容器の圧力を下げることができるとしています。規制委員会は、この循環システムが外に放射性物質を放出することにもなるベントより有効だとしています。

(水素爆発)
また、福島第一原発の事故では、1号機と3号機、4号機の原子炉建屋で水素爆発が起き、放射性物質を拡散させたほか、事故の対応に大きな影響を及ぼしました。柏崎刈羽原発では、大量の水素が原子炉建屋にたまることがないよう、水素濃度を下げる特殊な機器を設置し、対策を講じているということです。
柏崎刈羽原発 問われた東京電力の“適格性”

柏崎刈羽原発 問われた東京電力の“適格性”

柏崎刈羽原発の審査で原子力規制委員会は、原発事故を起こした東京電力に再び原発を運転する資格があるのか、“適格性”を確認するというほかの電力会社には求めていない異例の対応をとりました。

東京電力をめぐっては、原発事故のあと、2か月以上、「メルトダウン」を公表しなかったことや、審査の中で、緊急時の対応拠点の耐震不足を把握しながら誤った説明を続けたことが批判され、組織の体質が疑問視されていました。

このため、規制委員会は、技術的な課題だけではなく、東京電力の安全に対する姿勢を確認する必要があるとして、ことし7月、経営陣から直接、聞き取りを行いました。

この中で当時の田中俊一委員長は「福島第一原発の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すことができない事業者に原発を運転する資格はない」としたうえで、汚染水処理のあとに残る放射性物質を含んだ大量の水の処分や、解体作業で出る放射性廃棄物の搬出など廃炉の課題について触れ、「東京電力の主体性がさっぱり見えない」と批判し、対応を文書で回答するよう求めました。

これに対して東京電力は、ことし8月、廃炉に取り組む姿勢や覚悟などを文書で回答しましたが、具体的な方針は示されず、その後に行われた規制委員会と経営陣との面会でも説明は具体性を欠きました。

ところが、田中前委員長は、東京電力の回答は国民への約束だとして、「安全に対する取り組みの姿勢を示すもの」と一転して評価。先月13日には規制委員会の大半の委員も東京電力の姿勢に理解を示します。

そして、先月20日、規制委員会は福島第一原発の廃炉に取り組む覚悟や経済性よりも安全性を優先して原発を運転することなどを事業者が守らなければならない「保安規定」に盛り込み、所管する経済産業省が東京電力を監督・指導することを条件に原発を運転する“適格性”を認めました。

「保安規定」は、事業者みずからが安全確保の取り組みを定めるルールで、重大な違反だと判断された場合、運転停止など重い処分が出される可能性もあります。

今後、規制委員会は、東京電力が申請する保安規定の内容に問題がないか、審査することになります。しかし、廃炉に取り組む覚悟などが保安規定に違反していないかどうかを判断する基準は示されていません。規制委員会には、審査の内容を新潟県や福島県をはじめ、国民にわかりやすく説明することが求められています。

福島教訓に安全対策

東京電力は、柏崎刈羽原発で原発事故を教訓にしたさまざまな安全対策を進めてきました。

<福島原発の事故では>
福島第一原発の事故では、地震によって外部からの電源が失われたあと、15メートルに達する津波が押し寄せ、非常用の電源や電力を供給する設備などが壊れて原子炉を冷やすことができず、メルトダウンや水素爆発などが起きました。東京電力は、柏崎刈羽原発で原発事故を教訓にしたさまざまな安全対策を進めてきました。

<柏崎刈羽原発では>
(津波対策)
柏崎刈羽原発では、最大の津波の高さを8.3メートルと想定したうえで、15メートルの津波にも耐えられるよう防潮堤が整備されたほか、建屋の扉は、水が入り込むのを防ぐ措置が取られました。

(電源)
また、津波が届かない高台に電源車や配電盤を設置し、持ち運びができるバッテリーなども用意しました。

(注水)
さらに原子炉を冷やす手段として、圧力が高い原子炉に高圧の水を送り込むことができる設備を新たに1基設け、多重化を図りました。消防車も42台配備され、必要な水をおよそ2万トン蓄える貯水池を設けました。

(ベント)
事故では、放射性物質を封じ込める格納容器が破損するのを防ぐため、内部の圧力を下げる「ベント」と呼ばれる操作が、電源がなかったために難航し、事故の深刻化につながりました。柏崎刈羽原発では、電源の強化でベントを確実に実施するだけでなく、新たな対策を取り入れました。

(循環冷却システム)
それは、格納容器内で熱くなった水を建物の外に配置した特殊な車両を介して海水で冷やし、再び、原子炉や格納容器に戻して循環させるもので、ベントと同じように格納容器の圧力を下げることができるとしています。規制委員会は、この循環システムが外に放射性物質を放出することにもなるベントより有効だとしています。

(水素爆発)
また、福島第一原発の事故では、1号機と3号機、4号機の原子炉建屋で水素爆発が起き、放射性物質を拡散させたほか、事故の対応に大きな影響を及ぼしました。柏崎刈羽原発では、大量の水素が原子炉建屋にたまることがないよう、水素濃度を下げる特殊な機器を設置し、対策を講じているということです。