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静岡大井川電源開発60年 枯れぬ情熱◆水一滴もエネルギー
中部電力による静岡県の大井川電源開発で第一陣となった井川水力発電所(静岡市葵区)が、一九五七年九月の運転開始から六十年を迎えた。周辺工事を含めて七十二人の犠牲者を出して完成し、今では流域全体で六万世帯分の電気を生み出す。東日本大震災後に注目を集める再生可能エネルギーとして、発電量を増やす取り組みも進めている。 井川発電所は山深い里にもかかわらず、建設が最盛期だった五三年ごろは全国から三千人以上の作業員が集まった。中電と施工業者、住民の間で一体感が生まれ、「逢う瀬 逢わぬ瀬 井川じゃひとつ 同じ想いのダムとなる」と井川地域の小唄にもなった。資材運搬のため大井川鉄道井川線も建設された。 当時を知る元中電社員の丹羽哲郎さん(91)=名古屋市昭和区=によると、ダム建設には重機もなく、人海戦術に頼った。高価なコンクリートの使用量を減らすよう指示もあり、丹羽さんはセメントと砂利の配合を工夫するなどコンクリート強度の研究を重ねた。「戦後復興はエネルギーからとの思いで休みなく働いた」と懐かしむ。 五〇年代の発電は水力がメイン。名古屋など都市部の電力需要に合わせ、中電はその後も大井川の開発を急ぐ。五七年には上流で畑薙第一水力発電所(葵区)の建設に着手。コンクリート節約のため、ダムの堤の内部を空洞にする中空重力式を採用し、この構造としては世界一の高さ(百二十五メートル)のダムとなった。
大井川水系には現在、十三の発電所があり、総発電能力は六十一万キロワットに達する。ダムの適地は開発され尽くしているが、中電は既存のダム横で放出されるわずかな水を利用し、今年二月からは十四番目の水力発電所を建設している。新たに三百五十世帯分の使用電力量を生み出せる見通しだ。 井川発電所のダムなどでも、ためた水を無駄に下流に放水しないで済むようダムでの貯水と発電のタイミングの最適化を進めている。杉本公成・井川水力管理所長(57)は「貴重な純国産エネルギーの水を一滴も無駄にせず発電に活用したい」と話している。 (小柳悠志) |
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