昭和考古学とブログエッセイの旅へ

昭和の遺物を訪ねて考察する、『昭和考古学』の世界へようこそ

国名を小文字にすると、意味がガラリと変わってしまう英単語

 

 

チンパンジーが何故人間になれたのか。いきなり人類学的な課題になりますが、これには諸説あり私のような素人は口を出せません。
しかし、アフリカで発生したホモ・サピエンスが何故白黒黄色に分かれ世界中に分布したのかは、
おそらく知らない地を見てみようという知的好奇心もあったのかもしれません。言ってしまえばリアルドラクエファイナルファンタジーか。
外国語の勉強も、実は同じです。
外国語の勉強は、受験英語で懲りた人も多いと思います。
しかし、外国語は本来我々にはわからない世界。そうである以上、外国語の勉強は未知の世界を探検しているようにワクワクするものです。
それも、言葉は生き物なので、常に変化し進化していきます。勉強してもしてもキリがない。その分一生やってても飽きないのがメリットです。

その中でもお馴染みの外国語が英語です。
しかしこの英語、普段使っている割にはけっこう謎が多い言語でもあります。
そんなことはない!と思っている方、ならこの疑問に即答できますか?

Q1:牛はcow, oxなのに、「牛肉」になると何故beefなの?

Q2:海はsea、oceanなのに、「海軍」は何故navyなの?

Q3:makeはなぜ「メイク」なの。何故「マケ」と読まないの?

Q4:何故疑問文の冒頭にDoがつくの?そもそもこのDoって何モノ?

言われてみればそうだなーという、素朴な疑問でしょ?
このように、英語のジャングルの中には面白い種もたくさんあります。
国や地域、人の名前の冒頭は大文字にする。これは英語の基本中の基本です。これは英語だけではなく、ヨーロッパの言語すべて共通の特徴です。
その国名・地域名を小文字にするだけで、意味がガラリと変わってしまう単語も存在します。

今日は、そんな英語の不思議の世界をどうぞ。

 

 


China:中国  china:陶磁器

青磁陶磁器china

これはもう有名でしょう。porcelainという正式名称(?)もありますが、TOEIC満点取りたい人以外は覚える必要はなく、一般的にはchina=陶磁器です。
中国最高の芸術と言えば、書画などもありますが、陶磁器を真っ先にイメージする人が多いと思います。実際に昔の中国の陶磁器を間近で見ると、ため息をついてしまうほど美しいのです。
陶磁器は、昔の中国の重要な輸出品でした。chinaが陶磁器になっているのは、それだけヨーロッパで知られていたということ。
中国の陶磁器は国内にはほとんど残っておらず、海外に多いのですが、その理由に国内の戦乱などを原因に挙げる人がいます。
それはそれで当たりなのですが、最大の理由は陶磁器自体が海外向け輸出品だったため、国内にあまり流通しなかったこと。
簡単に言えば、車の北米仕様が日本でほとんど流通していないのと同じことです。

で、中国の陶磁器と言えば、江西省のけっこうな奥地にある景徳鎮(けいとくちん)。
陶磁器に興味がなくても(私も興味ありませんw)、景徳鎮という名前は聞いたことがある人が多いほどの陶磁器のブランドになっています。
かなり昔、ローカル列車を乗り継いで景徳鎮に行ったことがあります。陶磁器の街だから街中陶磁器ばかりなんだろなーという、勝手なイメージをぶら下げて。

しかし!その通りでした。
陶磁器の街だけあって、そこらじゅうに陶磁器市場がありました。タクシーのボディまで陶磁器で出来ていました。・・・ウソです。

 

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当時の写真を探してみたものの、見つからなかったのでイメージ画像でお許し下さい。
まあ、こんな感じでした。

 

Japan:日本  japan:漆器

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漆って日本独特の植物のイメージがありますが、漆自体は全世界に存在しています。日本の漆器で使われる漆も、今は輸入ものが9割らしいです。
漆は生活用品に使われただけではなく、秦の始皇帝兵馬俑の人形にも一体一体に漆が塗られていました。
兵馬俑のあれは色がない「素焼き」のイメージがありますが、元々はすべて着色され、防色剤代わりに上から漆が塗られていました。

 

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土から出てくる時の兵馬俑は、実はこんなふうにものすごくカラフルなのです。しかし、上に塗られた漆が空気に触れると、2~3分で俑から剥がれ落ちてしまい、

 

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このような「無色」になってしまいます。


漆器自体も全世界、特にアジアに多く分布しています。中国・朝鮮・タイにもかつては実用品・芸術品としての漆器が存在していました。
しかし、今は英単語のjapanに見られるように、漆器=日本というイメージが完全に定着しています。
日本の漆器の歴史は古く、1万年前の遺跡から古典的な漆器が発見(それも北海道で)されています。縄文時代=土器というイメージがありますが、ほぼ同時進行で漆器も存在していたのです。

ちなみに、英語ではjapanは漆器ですが、スペイン語やドイツ語では違うようです。陶磁器のchinaも他の言語にはあまり載っていないので、英語独特の表現かもしれません。


Turkey:トルコ  turkey:七面鳥

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七面鳥は北米原産の鳥ですが、それが何故「トルコ」なのか。それにはある説があります。
アフリカに棲む鳥が、トルコ人によってヨーロッパに輸入されていたのですが、同時期に北米から七面鳥もスペイン人によって入ってきました。
その混乱で七面鳥トルコ人が持ち込んだことになってしまい、turkeyになったと言われています。(※諸説あり)
ちなみに、ボーリングで3回連続ストライクもturkeyって言いますよね。これは何故かと調べてみたら、
昔のアメリカでは3回連続ストライクを取ると七面鳥の丸焼きがプレゼントされたことが発祥でした。

太平洋戦争のマリアナ沖海戦で、米軍は日本の艦載機を最新レーダーやVT信管などで狙い撃ち。
あまりに圧倒的な勝利のため、米軍はのちに
マリアナ七面鳥撃ち(Great Marianas Turkey Shoot)」
と言いました。
turkeyは「ドジ」「マヌケ」という意味もあるので、特攻以上の愚かな攻撃にturkeyという言葉に託したということです。
時は経って戦後のある日米交渉の時のこと。
米の理不尽な要求に怒った日本側のある官僚が、
「俺たち怒らせるなら、もう一回真珠湾やってやろうか?俺の戦友はマリアナ七面鳥撃ちの犠牲になったから、敵も取りたいしな!
前で失敗は反省したから今度はお前らの好きにはさせん!」
とすごんだことがあるそうです。
米側はまあ落ち着いてとなだめたそうですが、それは言うだけにしてほしいものです。


以上はネタとしてよく出てくるパターンです。
しかし、次からは辞書によっては載ってもいない単語を。

 

Shanghai:中国の上海  shanghai:本文参照

上海フリー画像

上海は、その昔「魔都」と呼ばれていました。

漢字というのは便利なもので、「魔都」という文字からマフィア、世界中のスパイ・特務機関、アヘンの匂いまでただよわせ、恐怖と同時に磁石のような魔力をも発生させる、上海だけに与えられた称号でした。


その魔都時代、若い男性が夜に一人で街を歩いていると、途端に蒸発することがありました。そのまま行方知れずとなるのですが、本人は船に乗せられ「蟹工船」真っ青の奴隷船員として死ぬまで働かされたとか。

そんな話、本当かどうか。しかし、Shanghaiはそのようなことが十分あり得る、何でもありの魔都だったのです。私も10年ほど中国(そのうち2年は上海)に住んでいましたが、その経験から言わせてもらうと、まああっただろうなと。


その名残が、実は英単語のshanghaiに残っています。
この小文字から始まるshanghaiは、
①(水夫にするために)人を連れ去る、誘拐する
②(脅しや暴力を使って)人に~を強要させる
今風に表現するなら、「拉致る」に近いニュアンスかもしれません。

②には、Weblo辞書にはご丁寧に例文まで掲載されていました。
She was shanghaied into buying a mink coat.
彼女はだまされてミンクのコートを買わされた.
shanghaiの過去分詞はshanhaiedという衝撃。だったら現在分詞はshanghaingか。


Hong Kong:香港  hong kong foot:水虫

フリー画像香港

水虫を中国語(特に南方)で「香港脚」と言うのですが、それをそのまま英語にしたのでしょう。香港や東南アジア英語(シングリッシュ)として定着しています。

中国南方(台湾・香港を含む)はその昔、「瘴癘(しょうれい)の地」と言われていました。
「瘴癘」とは熱病を中心とした伝染病のことで、「瘴癘の地」とは今風に言えば「伝染病の総合商社」。空気が乾燥しウィルスが繁殖しにくい北方と比べ、常に高温多湿で、湿度100%などふつうにある南方は、病原菌が大好きな環境なのです。
鳥インフルなどの新型インフルエンザは常にこの地域から発生し、マラリアデング熱・肝炎などはお友達。本当に「伝染病百貨店」でした。最近でも、インフルエンザとは関係ないですが、SARS重症急性呼吸器症候群)が広東省からアジア中に伝染しましたし。SARSで大騒ぎだった頃はリアルタイムで中国におり、一部始終を中国&香港で見てきたのですが、これもいつかはネタにしようかと思います。

どこかのブログに書きましたが、三国志の呉の武将がみんな短命、20代30代でどんどん病没するのも呉が瘴癘の地だったこともあるだろうと思います。
証拠はないものの、私個人は銀シャリを食いすぎることによって発生するビタミンB1欠乏症、「脚気」もあると踏んでいるのですが、戦乱の武将が病気でバタバタ倒れていくほどの、ある意味人が住めた所ではなかった土地だったということです。

中華系にとって、水虫=香港というイメージがあるのでしょう。水虫は「香港脚」であり、hong kong footなのです。
実際、香港や広東省では水虫の治療薬が山ほどあり、日本より豊富なほどです。香港では街ごと免税店のフリーポートなので、世界中の水虫薬が売られていると言っても言い過ぎではないのですが、それだけ水虫などザラにあるということと同義語です。
思い出してみれば私も広東省に住んでた頃、水虫ではないのですがよくインキ・・・いや、なんでもありません。日本の薬は全く効かなかったものの、香港の薬を使うとあら不思議、めちゃくちゃ効くんです。

ちなみに、100年以上前のイギリス英語では、スラング
Go to Hong Kong !!
と言うと、「地獄へ落ちろ(=死んじまえ)」という罵り言葉でした。それほど香港は、伝染病のはびこる衛生環境の悪い地獄の一丁目だったのでしょう。


Argentine:アルゼンチン(の) argentine:銀の

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元々国名のアルゼンチンがラテン語のARGENTUM(銀)から来た由来があります。小文字スタートのargentineもラテン語が起源なので、同じなのは当然と言えば当然。
ちなみに、アルゼンチンの語源は「銀」なのですが、アルゼンチンで銀は全く取れません。

 

 Japanとjapan、Chinaとchinaくらいはすぐにでも思いついたかもしれませんが、他はなかなか出てこなかったと思います。英語と漠然と捉えていても、深く掘っていくと今まで気づかなかった発見があります。もちろん、日本語も普段使い慣れているからこそ、気づかない新しい発見があるかしれません。

すぐに掘ってみると、どっぷりハマって気がついたら夜が明けてた・・・ということもあるかも!?