目次
- 大所帯バンド・小規模バンドの違い
- 昔の大所帯ファンクバンド
- 多国籍な期待の新人:Lakuta(ラクータ)
- 踊れる技巧派集団:KC Roberts & The Live Revolution(KCロバーツ&ザ・ライブ・レボリューション)
- アナログすぎる?!:NO!BS Brass Band(ノー!BS ブラス・バンド)
- 懐かしの王道ファンク:Orgone(オルゴン)
- 流行りのジャジーグルーヴ:Dynamo(ダイナモ)
- さいごに
大所帯バンド・小規模バンドの違い
当たり前ですが、大所帯・小規模バンドの違いが最も顕著に表れるのが
楽器の数です。小規模バンドの利点としては小回りが利き、学生がコピーバンドを組むのにもうってつけ。またロックなどのメジャーなジャンルは少人数でも演奏に支障が少ないため、ライブ出演や練習・音源化のスケジューリングに無理が出ず大所帯バンドよりも多くの人の耳に届く機会は多いでしょう。何よりライブでの生演奏・少人数ならではのゴリ押し感は観客の心を熱くさせます。
対して、大所帯バンドであることはドラム・ベース・ギター・ボーカル・キーボードという王道編成に加えて、よりリッチなサウンドを作り上げられるコーラス陣、オーケストラや管楽器メンバーを複数抱えられるのが利点。豊かな表現が可能になります。
本記事では数ある大所帯バンドの中でもノリが良く自然に身体が動き出すような、今後のファンクシーンを担うであろう大人数のファンクバンドに注目して紹介していきます。
昔の大所帯ファンクバンド
冒頭でも紹介したように、Kool & the GangやEarth,Wind & Fireは大所帯ファンクバンドを語る上で外すことはできません。
Celebration(1980) / Kool & The Gang
September(1979) / Earth,Wind & Fire
バラエティ番組などでも頻繁に使われる名作です。聞き馴染みのある方も多いでしょう。
Kool & the GangにしろEarth,Wind & Fireにしろ、彼らの名作ディスコソングのほとんどは1970年代後半から80年頃の発表となります。
このディスコブームが来るまで、70年代当初ジャズアーティストとして稼げなくなった彼らはソウルの世界に歩み寄りジャズで培ったテクニックを活かせるジャンルである“ファンク”に力を入れていました。
Give It Up (1969) / Kool & The Gang
C'mon Children (1971) / Earth,Wind & Fire
この他、70年代ファンクバンドといえばTower Of Power(タワー・オブ・パワー)も人気でした。
What Is Hip? (1973) / Tower Of Power
これらの古き良きファンクは今日私たちが想像するファンクと少し離れているところもありますが、これから紹介する現代の大所帯ファンクバンドの中にはきっと皆さんの欲しい音があるはず……!
多国籍な期待の新人:Lakuta
Rice & Peace / Lakuta
昨年夏、イギリスのブライトンからデビューした10人組アフロファンクバンド・Lakuta。
ギター、ベース、ドラムに加えコンガやトランペット、バリトンサックス、トロンボーンなど大所帯バンドならではの編成に心惹かれます。
10人いればメンバーも多種多様。メンバーの出身地はケニア・タンザニア・ガーナ・スペイン・マレーシア・イギリスなどとても多国籍で、濃厚なアフロビートの中に様々な音楽ジャンルを溶かしこんだ彼女達の音楽性にも妙な信憑性が…
同じく大所帯バンドのレジェンドであるIncognito(インコグニート)のコンサートではオープニングアクトを任され、あのジャズアーティストRoy Ayers(ロイ・エアーズ)との共演も果たしたデビュー1年目とは思えぬほどの活躍ぶり。
作品はまだアルバム1枚のみと今後の動きに期待です!
踊れる技巧派集団:KC Roberts & The Live Revolution
Future Funk Chant / KC Roberts & The Live Revolution
Jamiroquai(ジャミロクワイ)の再来とも叫ばれた、カナダはトロントにて結成されたKC Roberts & The Live Revolution。
ギタリスト兼ボーカリスト・KCロバーツを中心にキーボード、ベース、ドラムに加えパーカッションとブラス隊を抱える8人構成のファンクバンドです。
ヴィンテージ感溢れるファンクサウンドに現代的なヒップホップやロック、ジャズをクロスオーバーさせた唯一無二のサウンドは稀代のアシッドジャズバンド・Jamiroquaiに劣らぬ格好良さ。
余談ですが、ロック界ではしばしばギターヒーローなるカリスマ性抜群のアーティスト(レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジやガンズのスラッシュ等)が生まれることがあるのですが、大所帯バンドにおいてのギターヒーローといわれるといまいちパッとしません。
しかしこのバンドのフロントマン・KCロバーツはその可能性を十分に秘めています。
卓越した演奏技術と抜群の存在感、魅せる時は魅せ、潜る時は潜るメリハリあるパフォーマンスは現代のギターキッズのハートを熱くする…!
もちろんその他のメンバーもかなりの技巧派。自身らの楽曲(Let's Get Out Of HereとBack to Acton)を含めアレンジした超絶セッション動画を見てほしい。
Lil' Funky Thang / KC Roberts & The Live Revolution
フロントマンだけでなくメンバー全員の確かな技術に裏付けられたKC Roberts & The Live Revolutionの楽曲達、現代のファンクシーンを揺るがすこと間違い無し!
アナログすぎる?!:No!BS Brass Band
「アナログすぎる」という表現、どういうことか分からない方も多いことでしょう。
しかし本当にそのままの表現なんです...
このご時世に電気を一切使わず、ストリートでも本領を発揮できるバンド編成。
トロンボーン5人、トランペット4人、サックス1人、チューバ2人、ドラム1人の計13人で構成されたアナログすぎるブラスバンド、No! BS Brass Band。
まずは聞いていただきたい。そして「アナログすぎる」ファンクであるという表現に共感して欲しい。
RVA All Day / No! BS Brass Band
バンド名にブラスバンドと付いているだけに学生時代の吹奏楽部のような音楽を想像してしまいますが、一聴してわかる通り現代的なファンクやロックを管楽器と打楽器のみで表現するバンドです。
ここまでブラスセクションを前に出すファンクは珍しいと思います。
途中にラップやコール&レスポンスが入ったりするのもかっこいい。
というかチューバとトロンボーンといった低音担当メンバーが7人もいることで音の重圧感が半端ない... ヘッドホン越しに地響きを聞いているような、歪んだ低音が頼もしいです。
ちょっと特殊なファンクバンドですが、ブラスファンク界のダークホース的存在としての今後が楽しみなバンドです。
懐かしの王道ファンク:Orgone
Do What You Came To Do / Orgone
アメリカ・カリフォルニア発のファンクバンド・Orgone。
現在は8人編成、、、だったと思うのですがYouTubeのOrgone公式チャンネルでは2人ほどバックコーラスの男性がいるので10人編成になったのでしょうか...?
最近のバンドにしては珍しく、敢えて60年代から70年代の旧世代を踏襲した正統派サウンドが特徴的です。
この曲が2016年リリースってマジか... 真っ直ぐすぎるオールドファンクスピリット。
今回紹介した曲以外にも、ディスコファンクやダウンテンポなものまでこなす意外とオールマイティなバンドです。時にはブラス隊を外したり、正規ボーカリストのAdryon De Leòn(アドリアン・デ・レオン)の代わりにTiffany Austin(ティファニー・オースティン)やFanny Franklin(ファニー・フランクリン)をボーカルとして迎えた楽曲も多く発表しており、理想のサウンドのためにストイックな一面も...
Don't Stop(feat.Tiffany Austin) / Orgone
実はこのバンド、Roy Ayers創設の名門Ubiquity RecordsなどからCDリリースをしており、またファンクバンド御用達のColemine Recordsからしばしば7inchでのシングルカットリリースがなされています。
冒頭で紹介したEarth,Wind&Fireなどが好きな方はお耳に合うかと!
流行りのジャジーグルーヴ:Dynamo
Ashland City / Dynamo
2012年、アメリカはナッシュビルにて結成された11人組バンド・Dynamo。
生きてるような滑らかなフィルターシンセと優しいギターサウンド、いやらしさの全くない超絶ドラムを暖かいベースがサポートし息の合ったブラスが重なる。
ファンクといえばファンク、ジャズといえばジャズ。多種多様なジャンルがまろやかに混ざり合う音楽。半世紀前のアーティスト様方、現代の音楽はここまで進化しました。
こういう複合的な音楽ジャンルはアメリカの不特定多数の音楽集団・Snarky Puppy(スナーキー・パピー)をはじめ、現代の大所帯バンドを語る上では欠かせない音楽ジャンルです。
正直このバンドをファンクバンドとして紹介していいものか大変迷いました。
このバンドの楽曲をいくつか聞いていただくと気づくと思いますが、総じてジャジーでファンキーでフュージョンな雰囲気。こういうバンドは大体ジャンル欄にJazz、Funk、Fusion、R&B、Soul、Hip-Hopのどれかが最低3つ以上連なって書かれてる気がします。しかもそのジャンルが全て均等な割合でサウンドに昇華されていて「強いて言うならこのジャンル!」と言い切れないのが難しい...
とりあえずと思いDynamoのFacebookを覗くと、
ジャンル R&B/Funk/Jazz
やはり・・・この手の複数ジャンル融合バンドの代表・Snarky Puppyはどうだろうか。
ジャンル Jazz / Funk / World / Soul / Pop
洗練された独自のサウンドで一定の地位を確立したSnarky Puppyですら自身の音楽を文字で表現するのに5つも単語を使っています。
もはやこのジャンルは現代のジャズやファンクシーンではすっかりメジャーになっているので、誰かいい感じのジャンル区分をお願いします...!
さいごに
最近日本でヒットした音楽も、そのアーティストの通常編成では考えられないほど多くの楽器が使われているものが多いです。
恋 /星野源
バンドに比べて圧倒的に編成にとらわれないシンガーソングライターは弾き語りを辞めてオーケストラを総動員させる始末。国民はリッチな音を求めている…
ライブで迫力を出す上で嫌味なく生楽器を多用できるのは、それこそ大所帯バンドかメジャーシンガーソングライターくらいでしょう。
では実際日本でヒットした大所帯ファンクバンドってどれくらいいるのでしょうか。
クレイジーケンバンド、JAGATARA(ジャガタラ)、在日ファンク、ズットズレテルズ…
最近のアーティストって結構少ないな、、、
ファンクが人気ないのか、はたまた練習日程が合わない等の事情で大所帯でいられなくなってしまったのか。
今回は不本意ながら海外の大所帯ファンクバンドばかりピックアップしてしまいました。
国内でもより多くの大所帯ファンクバンドが生まれ、人生のスパイスになるようなアンセムが私たちの身体を揺らすお供となるよう切に願います。
Let's Groove / Earth,Wind & Fire
Let's groove tonight
Share the spice of life
Baby, slice it right
We're gonna groove tonight出典:うたまっぷ.com