外資系金融マンの読書ブログ

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意外と知られていない、女性専用車両を設置する理由

なんだか話題になっていましたね

二項対立はなぜ盛り上がるのか

二項対立のテーマは盛り上がるのが世の常である。

「からあげにマヨネーズはありか」というライトなテーマから、「お金か、愛か」といったやや哲学的なテーマまで、たいていのものは白熱した議論を生む。

専門的な用語は分からないが、いわゆる闘争本能によるものではないかと思う。説明的に言うなら、自分の属するグループが優位であると思いたいという欲求だろう。

このような中でも特に盛り上がりやすいのは、男性と女性の対立、都会と田舎の対立、高学歴と低学歴の対立、高所得者と低所得の対立などではないだろうか。

はてなでは性別については話題が人気らしく、先日も下記の記事が話題になっていた。

toyokeizai.net

念のため、はてな人気だから書いているわけではないということは記しておきたい。

私はあくまで「差別」や「平等」というテーマに関心があるのであって、性別というテーマにはそれほど関心がないことを書いておく。

女性専用車両に関する基礎知識

私は女性専用車両に抗議で乗ったことはないし、そもそも電車をあまり使わない。

このため、事実に基づいてやや客観的な意見が書けるのではないかと思う。

女性専用車両とは何者か

基本的には優先席と同じ構造で、任意協力のもと対象となる乗客を優先的に乗車させる車両である。

優先席に健康な高校生が座っていたとしても、それを高齢者がとがめることはできません。同じように、女性専用車両に男性が乗っていても、それは任意協力に協力しなかっただけに過ぎないので、とがめることはできません。

女性専用車両は性差別ではないのか

この点については、男性の排除に強制力があるなら違憲で、任意協力なら合憲であるという結論が出ている。

女性専用車両は、女性専用という名前がついているだけで女性専用ではないので合憲。

女性専用車両は痴漢防止に効果があるか

結論から言うと、効果はかなり限定的だといわれている。

理由は少し考えれば明らかで、痴漢被害の数は、女性乗客の数よりも加害者の数に強く影響を受けるからである。

たとえば監視カメラのような、加害者を排除できる仕組みでなければ効果は得づらい。

鉄道会社が女性専用車両を設置する理由

なんだかんだで、企業はお金で動く。

当初の導入理由

現在の形の女性専用車両が導入された背景には、痴漢被害の防止がある。

社会的責任や世論を反映して、女性専用車両という名前の車両を導入した。

導入当初は一定の成果が上がったが、結局のところ加害者を排除できる仕組みではないので、話題性が薄らぐにつれて被害の減少は減少した(つまり元の水準に戻った)と言われている。

継続的に女性専用車両を導入している理由

鉄道会社がいまも女性専用車両を設置し続ける理由は2つある。

1つは、設置をやめるのにもコストがかかるからである。導入のほうがコストが高いとはいえ、廃止もコストがかかるので現状維持をしているというわけだ。

もう1つは意外と知られていないことだが、車内広告の単価が高くなるからである。

女性専用車両の乗客は「女性専用車両に乗る女性」という極めて限定的なターゲットとなっている。この意味は自由に解釈していただいて構わない。

最近の若者の中には「電車内の広告なんて見ている人いるの?」と感じる人もいるだろうから、女性専用車両の導入はiPhoneの登場よりも早かったことを補足しておく。

男性専用車両の導入について

上記のように、女性専用車両は性差別の話題というよりは広告費の話なので、私は「女性専用車両は男性差別である!」と声高に叫ぶつもりはない。

ただ、性差別的な側面は確かにあるので、将来的には解決していくべき問題だとは思う。

いま導入されていない理由について

1つは女性専用車両を維持している理由と同じである。

男性専用車両の乗客は「男性専用車両に乗る男性」という属性で固定されるから、確実に広告の単価は上がるはずだ。

鉄道会社が男性専用車両の導入におっくうなのは、要するに単価を上げる自信がないからだと思われる。

女性専用車両が導入された当時とは異なり、いまの車内広告はiPhoneという極めて強力なライバルが存在する。この強力なライバルを前にすると、単価の上昇によって男性専用車両を導入するコストをまかなうことができないのだろう。

将来的に導入される可能性について

一方で、将来的には導入される可能性が高いと感じている。理由は2つである。

1つ目は、都内の生活スタイルの変化による混雑の減少である。

かつて便利だとされた「自家用車をもって郊外に住み、ロードサイドの大型スーパーで買い物をする」がすでに便利ではなくなっている。

自動車は趣向品になりつつあるし、大型スーパーよりもAmazonのほうが便利なのだ。核家族化どころか独身化が進んで郊外の広い家に住む必要もなくなっているため、通勤時間が短縮する傾向にあると思う。

2つ目は、技術の発展である。

男性専用車両の導入にかかるコスト(混雑緩和のための施策コスト)が低くなれば良いので、技術発展に伴ってローコスト化していくとは思われる。

また、ホームにスマートカメラなどを導入できれば、乗客の属性を自動で認識して適切な広告を表示することもできる。痴漢被害を抑制するためのカメラと違って、死角をなくす必要はないので導入数は多くなくて問題ない。

このようなカメラの導入コストについても、半導体やセンサーの価格が低下し、無人化できれば低コスト化できる。これも技術発展に影響される部分だろう。

最後に

はてなブックマークのコメントを見て感じたことだが、女性の皆さんには、痴漢冤罪を恐れている男性が想像以上に多いことに気付いてほしい。

「男性は痴漢被害の多さを理解していない」と主張している女性の多くが、痴漢冤罪を恐れている男性の多さを理解していないように思える。

女性専用車両の話題に限らず、性差別をなくしていくためには、すべての性がお互いを尊重する必要がある。

ふだんからちょっとした表現に気を付けることから、差別の意識を取り除いていくことが大切ではないだろうか。