佐賀県武雄市は10月3日、学習者用デジタル教科書の実証研究を開始したと発表した。授業だけでなく、デジタル教科書を家庭に持ち帰った上での、反転学習への活用なども視野に入れる。
同市では、すでに児童生徒1人1台のタブレット端末の環境が整っており、学習者用デジタル教科書の導入は、ICTを活用した新たな取り組みになる。
対象は、同市の小学4年生と中学1年生の約千人で、今年10月から来年3月までの半年間に、国語と算数・数学の2教科で実施する。国語は光村図書出版(株)、算数・数学は(株)新興出版社啓林館から、学習者用デジタル教科書の提供を受ける。
学習者用デジタル教科書を具体的にどのように活用するかや、既存の紙の教科書との使い分けは、各学校の状況や教員によって異なる。漢字の書き順や立体図形などの動的コンテンツの活用などが想定されている。
また、同市では「スマイル学習」と呼ばれる同市独自の反転学習にも取り組んでおり、学習者用デジタル教科書も、家庭での反転学習の教材として活用する方針。
同日に都内で開かれた説明会で、同市ICT教育推進協議会の座長を務める松原聡東洋大教授は、中教審が平成32年度から、教科書について紙とデジタルを併用する方針を出したのを踏まえ、「この実証研究は、日本で想定されているデジタル教科書の使い方のさらにその先。1人1台であれば、書き込みなども保存できるし、自宅に持ち帰れる」と、その可能性に期待を示した。また、「紙の教科書と併用すると、実際の授業でどのような課題が出るのか、利用実態の把握も必要だ」とも指摘した。
小松政同市長は「地域の持続可能性を考えると、教育への投資は何よりも大事だ。武雄の学びを通して、日本全国の学びに貢献したい」と話した。