こんにちは。駆け出しライターの長橋と申します。
ライターの皆さん! 原稿の進捗いかがですかー?

筆者は現在フリーライターとして活動しているのですが、ライターになる前は個人ブログを書く程度だったため、メディアからの執筆依頼を受けながら日々新たな経験を積んでいっています。この記事を読んでいる駆け出しライターの中にも、経験がないまま「ライター」としてデビューした方もいるのではないかと思います。

記事を書く際、駆け出しライターが気をつけないといけないことは山ほどありますが、その中でも記事中に使用する「写真」について、皆さんはどこまで気を使っていますか。

まさかこんな雑な写真を使ってはいませんよね?

ということで今回は、活躍されている編集者・ライターの皆さんにお話を聞き、日頃から記事内に使用する写真について気をつけていること、より記事が読まれやすい効果的な写真テクニックについて教えてもらいます。

駆け出しライターのみなさんはもちろん、ベテランライターの方も必見です!

■Case 1 コンテンツメーカー 有限会社ノオト代表 宮脇 淳氏

一人目は、インターネット・メディアを中心に、企画、編集、原稿執筆などを手がける、コンテンツメーカー・ノオト代表の宮脇淳氏。運営するコワーキングスペース「CONTENTZ」や全国各地で定期的にライター交流会を開いており、駆け出しのライター・編集者にとって、とても頼りになる大先輩です。

宮脇氏には、取材中に撮影してはいけないモノや著作権問題など、「記事に使用する写真のルール」についてお話を聞いていきます。

「撮ってはいけない」より、「撮れていない」ほうが問題

ーー取材時に撮ってはいけないモノや場所があると聞いたのですが……。どのように気をつければ良いのでしょうか?

たしかに、無断で使ってはいけない写真はありますね。例えば、東京タワーやディズニーランド、JRの駅構内などは、施設写真の“商用利用”を禁止しています。しかし、実際にその写真を記事の中で使うかどうかは、あとで編集者が判断すればいい話なんですよね。取材が終わった後に、「あれ、あの場面の撮ってないの?」となってしまうのは一番避けたいので、編集者としては掲載する可能性のあるカットはしっかり撮っておいてくれたほうが、実はありがたいですね。

ただ、「判断する能力」がその編集者に備わっていないといけません。メディアリテラシーが薄い企業からの依頼で、編集者が間に入っていないケースもあるかと思いますが、その際はライター自身が判断能力を備える必要があります。

また、今はフィルムではなくデジタルで撮れる時代。せっかく取材に行ったなら、ケチらずに一枚でも多く撮っておいたほうが良いですね。とくに人物のインタビューでは、その人が顔を上げてしゃべったり笑顔を見せたりするのはほんの一瞬なので、多めにシャッターを切ったほうがいいでしょう。もちろん、現場での撮影そのものが禁止されている場所もあるので、確認は必要です。

撮影者や制作者へのリスペクトがあれば、引用を許す場合も。

——「Google画像検索で見つけた写真は安易に使ってはならない」。これはよく聞く話ではありますが、どこまでが引用OKなのか教えてください。

そもそも「引用」は、他者の著作物の一部を説明の材料や批評などのために自己の作品中で使用するものであり、著作権法で定められている行為のひとつです。ただ現行の著作権法って、インターネットを全く想定せずに作られた法律なんですよね。そのため、インターネット上ではどこまでを「引用」として扱って良いのかが曖昧で、とてもグレーなんです。

書籍の場合、「引用の範囲が全体の◯割までなら問題ない」といった話もありますが、インターネットの場合だとその判断が難しい。例えば、誰かのTwitterのつぶやきをまるまる記事内に掲載すると、引用部分の割合は100%となり、著作権の侵害ではないかという主張もできるでしょう。しかし、Twitterの利用規約では、エンベット機能(埋め込み)を使って表示させることを同意した上でユーザーはTwitterを利用しているので、無断転載には当たりません。インターネットでは、ケースバイケースでこういったルールが敷かれていることがあり、著作権法の範囲で括れないことが多いんです。なおかつ写真の場合は、写真1枚が情報の全てをあらわしているため、テキストのように「何割」という計算自体ができません。

また、引用が認められるか否かは、「引用によって、作り手が新たな創作物を生み出しているかどうか」が重要なポイントとなるため、そのまま全文を貼り付けているだけの記事は「無断転載」となってしまうのです。とはいえ報道目的で使う場合は、引用が成り立つケースもありますから、これはケースバイケースでの判断になるでしょうね。

——ちなみに以前、宮脇さんが編集長を務める「品川経済新聞」内の写真をバイラルメディアに盗用されたことがありましたが……。

ありましたね。このケースの場合、盗用したのは企業ではなく個人が運営しているバイラルメディアでした。ですので、記事内に「品川経済新聞というメディアで、こんなお店の情報を見つけたよ」というバックリンクを返してくれていれば、我々も厳しく言及するつもりはなかったんです。しかしあのケースでは、一切「品川経済新聞」に触れずに写真を無断転載していたため、盗用と判断しました。

<BUZZNEWS閉鎖> 悪質“パクリメディア”の増長に歯止めを ノオト代表・宮脇淳

しかし私自身は、まとめサイトなどであれ、引用元の撮影者や制作者へのリスペクトが感じられるなら、引用を許しても良いのではないかと思っているんです。私と同じ意見の編集者さんやライターさんは多いんじゃないかな、と思いますよ。

しかし、どこまでがセーフでどこからがアウトかというものは、あいまいすぎてそもそも駆け出しのライターさんにはなかなか判断できないかな、と。著作権にまつわるトラブルが遭ったときにきちんと理論武装できるかどうかは、やはりたくさんの経験を積んで知見をためていくしかないと思います。

宮脇 淳
コンテンツ メーカー 有限会社ノオト代表。品川経済新聞編集長。コワーキングスペース「CONTENTZ」管理人。コワーキングスナック「CONTENTZ分室」オーナー。R25の外部編集者などを経て、現在は企業のメディアづくりを中心に編集業に従事している。宣伝会議「編集・ライター養成講座」でも12年以上講師を務める。1973年3月生まれ。和歌山市出身。

■Case 2 フリーライター 地主恵亮氏

次は、記事に使用する写真を自ら撮影し、その撮影テクニックで「妄想彼女」などの人気コンテンツを生み出し続けている、ライターの地主恵亮氏にお話を伺います。

地主氏には、取材時の撮影テクニックや記事に使用する写真のセレクト方法についてお話を聞きました。

ピンボケ、ブレ、白く飛んでいてもかまわない。構図が全て。

——記事に使う写真について、こだわっている部分があれば教えてください。

駆け出しの頃は、一人で三脚とコンパクトデジタルカメラを使って撮影していたんです。しかしライターとして活動を続けていくうちに、「あれ? もしかしてインターネットの読者は文章を読まないんじゃないか」と思い始めたんですよ。特にスマートフォンを使ってる読者には、パッと見の写真が大事なんじゃないかと思ったんです。
とりあえず写真を綺麗に撮れば、記事自体も良いものとして認識されるのでは? と、それまで使っていたコンパクトデジタルカメラをやめ、借金をして一眼レフカメラを買いました。

——そうだったんですね。ではその一眼レフを使ったテクニックをひとつ教えていただけませんか。

少しだけですよ(笑)。僕が書くようなインターネットの記事は、RAWで撮ってあとで現像して……ではなく、リアル感がある写真が良い写真だと思うんですよ。ゆえに、構図が全てです。ピンボケ、ブレ、白く飛んでいてもかまわない。

で、これは僕の必殺技なんですけど、広く撮っておいて、後でトリミングするという……。

——ははあ、なるほど……。

トリミングを念頭に置いて撮影する場合、できれば広角のレンズを使ったほうが良いですね。僕は18mmのレンズを使っているので、かなり広く撮れるんです。ちなみに、フルサイズよりもマイクロフォーサーズという規格の方がピントがシビアじゃないので撮りやすい。ピントを全体に合わせるようにして撮れば、後でトリミングをしてもピントが違和感なく合うんですよ。こういったトリミング方法を使うことで、特殊な機材を使い手間をかけて撮っているように見えるんです。

——その撮影方法は、カメラ好きの人には考えられない話かもしれません(笑)

そうですね(笑)。

「いつもこんな感じです」と撮影の様子を見せていただいた

次の日に写真を見返し、記憶に残っている写真だけ使う。

——プロのカメラマンを使わない理由はどんなところなのでしょうか。

当たり前な話ですが、記事に欲しい画はライターである僕が一番わかっているんですよね。プロのカメラマンに頼むと、気を使ってくれるのは嬉しいのですが、RAWで撮って現像した美しい写真になり、記事に使うとなんだか嘘っぽくなっちゃうんです。そういった写真はどうしても僕の記事には合わないんですよ。

——ちなみに、一回の取材で何枚くらいの写真を撮られるんですか?

普段僕が書いているような記事だと、だいたい20〜30枚の写真を使います。その場合の撮影枚数は600〜1,000枚を超えますね……。多いと思われがちですが、そのくらいの枚数を撮っておいたほうがあとあと執筆する際に困らないんです。

——そこまで多いと、写真をセレクトする時は大変じゃないですか?

たしかに大変ですが……セレクトにはルールがあります。えっとたしか、永六輔さんが以前、「良い歌詞を思いついても、一回寝る。次の日の朝起きて、それでも覚えていたら良い歌詞である」みたいなことを言ってたんです。……たしか。で、僕はそれを聞いて、「コレだ!」と思って。

今でも僕は取材に行ったら、その日のうちには記事を書きません。一晩寝て、強く記憶に残っている写真だけを使うようにしています。記憶に残っているということは、伝えるべき大事なことなのかなと思うんですよ。ですから、写真がないと記事を書けないんです。

地主氏自らセルフタイマーで撮影。躍動感がある

「妄想彼女」(地主氏の著書)が評価されたのは、そのほとんどが海外の方からでした。訳しているわけでもないのにですよ。つまり、みんな文字は読まずに写真だけで判断しているってことです。写真だけでわかるくらいのシンプルなストーリーが、実は一番良いのかもしれません。

ライターなのに、文章より写真の方がパワーを持っているのもおかしな話ですけどね(笑)。

地主恵亮
1985年福岡生まれ。基本的には運だけで生きているが取材日はだいたい雨になる。2014年より東京農業大学非常勤講師。著書に「妄想彼女」(鉄人社)、「インスタントリア充」(扶桑社)がある。Twitter:@hitorimono

■Case 3 フリーライター・編集者 五十嵐 大氏

最後に登場するのは、紙とWeb両方のメディアに詳しいライター・編集者。エンタメ系雑誌での編集・ライティング経験を持つ一方、Web媒体でも活躍している五十嵐大氏に聞きました。

取材ナシの記事の場合、どのような画像を配置するのが最適か、テキストを邪魔しない画像の選び方など紙媒体に携わってきた五十嵐氏ならではの意見を伺います。

ストックフォトのイメージ画像を使う場合、二つのパターンがある。

——ニュース記事やコラム、プレスリリースなど、取材ナシのWeb記事の場合、どのようなイメージ画像を使えば良いか教えていただけますか。

ストックフォトのイメージ画像を使う場合、二つのパターンがあるかと思います。例えば「ネット炎上」というテーマの記事に、イメージ画像を入れるとします。この場合、「記事のイメージに近い抽象的な画像」を使うのか、もしくは「記事内の事実に即したリアルな画像」を使うのかを考えます。

「記事のイメージに近い抽象的な画像」の場合、例えば「パソコンが炎に包まれているようす」の画像などはテーマである「ネット炎上」をうまく表現しています。一見、その記事とは全く関係無いように見えますが、読者は「なにか恐ろしい重大なことが起きている」といったイメージを膨らませることができるんです。
一方、「記事内の事実に即したリアルな画像」であれば、「上司に怒られているサラリーマンの写真」も良いでしょう。読者は瞬時に「炎上するとこうして上司に怒られるんだな」と認識することができます。

どちらを使うのが正しいかは、記事の内容や読者層にもよるのですが、このチョイスには経験によるセンスが必要になるかもしれません。

——そういった画像を駆け出しのライターが選ぶのは難しいのでしょうか。

やはり、ある程度の経験と勉強が必要になるのかと思います。ただこの勉強とは、「ライターになるためには」といった指南書を読むのではなく、活躍しているプロのライターが書いた記事を読んだ方が早いでしょう。たくさんの記事を読んで、「こういう写真を入れると効果的なのか!」「この画像があるから内容が理解しやすいんだな」など、地道に感覚を養っていくしかないと思います。

美味しそうなハンバーグの写真に、「美味しそうなハンバーグ」というテキスト情報は不要

——五十嵐さんは、もともと紙出身でありながら、今はWebでもご活躍されていますね。紙媒体とWeb媒体の写真の使い方に、違いはあるのでしょうか。

そうですね。そもそも紙媒体は情報を載せるスペースが限られているため、無駄な情報はなるべく削ぎ落とさなければいけないんです。ゆえに、「写真とテキストが極限まで相互補完している媒体」とも言えます。美味しそうなハンバーグの写真の下に「美味しそうなハンバーグ」というテキスト情報は、写真が持つ情報と重複するため、不要ですよね。

そういった情報の重複を避けるために、紙媒体では「ここに美味しそうなハンバーグの写真を配置して、店主の人柄や客層、材料や作り方はテキストで見せよう」などと、取材の前にあらかじめ誌面のラフを作ったり構成を固めたりしてから取り組むことが多いです。
Web媒体の場合は、紙媒体よりも自由度が高いのが面白いですよね。現場で思いついたアイデアを取り入れるのも良いですし、アクシデントですらネタになります。また、遠くから人物が近寄ってくる連続写真や、GIFアニメで演出するような動きのあるテクニックも、Web媒体ならではですね。

基本的に紙媒体は購入して読むものです。ゆえに、読者は情報を能動的に取得します。よほどつまらない記事は飛ばしますが、お金を払っているからこそ読んでもらえることも多いですよね。
しかしWeb媒体の場合は無料で得られる情報がほとんどなので、記事の導入部分が面白くなかったら読まれない可能性が高い。そのため、記事を最後まで読んでもらえるように写真を効果的に配置するなど、構成を工夫する必要があるんです。ライターは文章だけでなく、写真も操れなくてはいけないと思います。

使いやすい素材に手を出してしまった駆け出しライター時代

——「これだけはやめておいたほうがいいよ」と駆け出しライターに伝えたいものはありますか?

僕にも経験があるんですが、ストックフォトの中には、使いやすい写真ってのがあるんですよ。スーツ姿の男性同士が握手をしている写真、頭を抱えて困っている外国人の写真、家族みんなで空を見上げている写真……(笑)。駆け出しの頃って、どうしてもこういった使いやすい素材についつい手を出してしまうんですよね。「わかりやすいからこれでいいか……」って。せっかく文章を丁寧に書いても、最後の画像選びをサボってしまうんです。

慣れていないライターや編集者だと、探し方がわからないっていうのもあると思うのですが……。やはり写真選びに妥協をしてはいけないんだな、と僕自身も反省することが多いです。また、写真を選ぶ際に頭の片隅に入れておいてほしいのが、良い意味での「違和感」。記事を読んでいる途中に「ん?」と立ち止まるような「違和感のある写真」があれば、意図的に読者のリズムをコントロールできると思います。ただ、その感覚を養うのもやっぱり勉強ですね。僕自身も日々、勉強中の身ですので。

ストックフォトには、実際に撮影しようと思ったら何十万円もかかってしまうような写真がたくさん用意されています。カメラマンを手配してモデルをキャスティング、スタイリストとメイクも付けて貸しスタジオで撮影……となれば、お金だけでなく、たくさんの時間もかかってしまいますよね。

そのような贅沢な素材を生かすも殺すも、ライターや編集者の腕次第なんです。

五十嵐 大
1983年生まれ。編集プロダクション、web制作会社を経てフリーランスに。『ダ・ヴィンチ』『東京ウォーカー』『月刊オーディション』『ザテレビジョン』などでエンタメ系のインタビューを担当するほか、webメディアのコンテンツに編集から携わることも。

■肩書きは誰でも名乗れるが、優秀なライターになるためには経験が最重要である

今回は3名の編集者・ライターの方々にお話を聞きましたが、いかがでしたか。
筆者が気になったのは、ジャンルがバラバラでありながら、お話を伺った3名が共通しておっしゃっていた「経験が必要」という点。

宮脇氏はインタビュー中、「どこまでがセーフでどこからがアウトかというものは、駆け出しの人には判断できない。というのが、一つの結論です」と言っていました。これはライターや編集者だけでなく、世の中のどんな仕事にも通ずるものではあります。肩書きは名刺を作れば誰でも名乗ることができますが、優秀なライターになるためには、たくさんの経験が必要なんですね。筆者も勉強になります。

駆け出しライターのみなさんも、写真の効果的な使い方を習得し、自信を持って「プロのライター」と名乗れるよう、さまざまな経験を一緒に積んでいきましょう!

ライター:長橋諒/カメラ:高山諒/編集:サカイエヒタ(ヒャクマンボルト)/協力:宮脇淳、地主恵亮、五十嵐大


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