週刊朝日のウェブサイトで津田大介氏が、電波オークションについて「解説」している。彼によると、安倍政権がいったんつぶしたオークションを導入しようとしているのは「政治的な思惑」があるという。

一度は自ら潰すことで放送局に大きな恩を売った現政権が、突如導入を持ち出した(そしてそれを政権に近いとされる産経新聞のみが報じている)ことには、経済的な面から放送局に揺さぶりをかけたい思惑が透けて見える。電波オークションは時代の流れとして導入すべき制度だが、同時に日本では政権のメディア統制という文脈があることも踏まえて議論しなければならない。(強調は引用者)

「政権のメディア統制」というのは意味不明だが、オークションを導入すると政権がメディアを統制できるという意味だとすると、これは逆である。総務省がオークションをつぶしたのは、テレビ局(とその系列の新聞社)を支配下に置くためだ。現在の命令と統制による電波の配分さえ守れば、テレビ局は呼びつけなくてもいうことを聞く。電波を「配給」する裁量権を政府がもっているからだ。

これは私も参加した2003年の会議で、レッシグなどが論じたことだ。ここでは「コモンズ」として利用することがベストだという議論と、電波を財産権で守るべきだという議論があったが、どちらも日本のような命令と統制による電波の配分は、合衆国憲法修正第1条(表現の自由)に違反するということで一致した。

自民党も電波官僚も、津田氏のように資本主義がきらいだ。それは人々に自由を与え、政府の統制から解放するからだ。ところが彼のような「リベラル」は、電波の配給制度が憲法に違反することすら知らないで「立憲主義」を語っている。日本人の意識の中に埋め込まれた社会主義を卒業することは容易ではない。

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