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北朝鮮よりも恐い隣国が、着々と「軍事強国」化を遂げている

中国中央テレビが映す人民解放軍の変貌

国慶節と「軍民融合」

10月1日の日曜日、中国は建国68周年を迎えた。今年は4日の中秋節(旧盆)と重なり、14億中国人は、「夢の8連休」である。

首都・北京の国慶節(建国記念日)の朝は、天安門広場で日の出の時間に人民解放軍が行う国旗掲揚式に、「愛国的市民」10万人以上が詰めかけたというニュースから始まった。

早くも冬の訪れを告げるかのような冷空の下で、「愛国的市民」たちに、中国中央テレビのマイクが向けられる。

「習近平同志を核心とする党中央の指導の下で、まもなく『十九大』(第19回共産党大会)を迎えるため、今年の国慶節は、特に晴れやかな夢と希望に満ちています」

「愛国的市民」たちは、口々に「模範解答」をする。

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そんな中国で、このところめっきり増えたのが、人民解放軍の「果敢な雄姿」を伝える軍事ニュースである。習近平主席は「軍民融合」というスローガンの下、14億国民が「空気や水のように」人民解放軍と一体化することを説いている。

9月29日からは、夜8時から10時までのゴールデンタイムに、中国中央テレビの総合チャンネル(1チャンネル)で、8回シリーズのドキュメンタリー番組『強軍』が始まった。毎夜2話ずつ放映していて、国慶節の日だけは特別番組『中国の夢 祖国の祝福』(習近平主席を称える紅白歌合戦のような番組)を放映したため、10月3日の晩まで続く。

 

『強軍』は、習近平中央軍事委員会主席の下、この5年間で、中国がどれほど「強軍の強国」という「中国の夢」を実現してきたかを誇示するドキュメンタリーだ。私も前半の1話から4話までを見たが、隣国の実態として「強軍の大国」の姿を把握しておくことは重要と思われるので、以下、その要旨をお伝えしよう。

「中国の夢は、強国の夢である」

【第1話 夢を遂げる】
2012年12月8日午前、習近平新総書記、新中央軍事委員会主席は、初の視察として、深圳の蛇口港に停泊したミサイル駆逐艦「海口」の甲板上にいた。

その二日後、習近平主席は、当時の第42集団軍の演兵場の、砲火轟鳴の中にいた。その場で習近平主席は「強国の夢」を説いた。「中国の夢」を説いてから、わずか10日後のことだった。

「中華民族の偉大なる復興という中国の夢は、強国の夢である。軍隊で言うなら、強軍の夢だ!」

約170年前、アヘン戦争によって、中国は西欧列強に痛めつけられ、そこから苦難の道を歩んだ。1860年の第2次アヘン戦争では、1.8万のイギリス軍と7000人のフランス軍が、皇帝の園庭である北京の円明園を灰塵にした。

2012年11月15日、初めて中央軍事委員会を招集した習近平主席は、「必ず国家主権を守っていく」と宣言した。

「強国のためには強軍が必須である。強軍によって初めて国は安まる。強国強軍は、中華民族の百年の夢想なのだ!」

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2013年3月11日、全国自民代表大会(国会)の人民解放軍分科会で、習近平主席は説いた。

「中国共産党の指揮に従い、戦争ができて戦争に勝てる、態度の良好な人民軍隊を建設することは、共産党の新たな形勢の強軍目標に合致したものである」

2013年4月9日、習近平主席は海南島・三亜部隊を視察し、「強軍戦歌」を聞いた。兵士たちは高らかに歌う。

「将軍たちは党の指揮に従う。戦争ができて戦争に勝てる。対度良好、強敵を恐れず、敢然と、祖国の決戦勝利を目指して戦う♪」