2016年、または2017年問題と言えるほどに、ここ1、2年のうちに地方都市の中心商店街の風景が急激に変わっている。
老朽化が進み、廃業を決め、空き物件として放棄されるか、高層マンション等の住宅に変えられる百貨店、ホテルなどが続々と増加しているのである。
こうした急速な変貌は、従来語られているように中心部の移動や、後継者不足など(だけ)によってもたらされたわけではない。より直接的な背景となったのは、近年の災害に対する不安である。
東日本大震災後、より安全な街をつくることを目指し、2013年に耐震改修促進法が施行された。それによって、経年化した大型施設の耐震診断の結果報告が2015年末までに義務づけられたのである。
結果、多くの地方中心街の大規模建造物が耐震基準を満たしていないことが判明し、何らかの対処が求められている。たとえば山形県では14施設、青森県では9施設、福島県では19施設が名指しで倒壊の危険性が高いことが指摘され、耐震改修や再建が促されている。
こうした動きは、たしかに英断といえる。新しい建物や道路をつくるのではなく、今ある建物の安全性を検証し、できれば補強することがようやく都市計画の課題の中心に上り始めた。
ただし地方都市では、それはパンドラの箱を開けることにもなった。耐震改修、または再建築のためには、今後の経営の見通しが立たなければならない。
しかしそれができる百貨店やホテルは限られており、他は身売りや廃業の道だけが残る。南東北を例とすれば、福島駅前のにぎわいを支えてきた中合2番館が、また山形駅前でも十字屋百貨店が今年閉店を決断しているのである。
安全・安心の追求は、こうして皮肉にも地方中心街の空洞化や宅地化を招いている。ひとつには、地方都市の経済的沈降のためである。活発に消費を行う層が先細りし、さらに郊外に流出することで、中心街への新たな投資がむずかしくなった。
ただし具体的にみれば、商店街の衰退は、少子高齢化や郊外化、またはEコマースの興隆といった最近の現象を原因としているとは片付けられない。
商店街が現在、危機を迎えているのは、それをこれまで繁栄させてきた「歴史」そのものが足を引っ張っているためではないか。いうなれば商店街は、20世紀後半の繁栄を支えてきたその「遺産」を食い潰し、逆にしっぺ返しを受けているようにみえるのである。