10日の公示を前に、衆院選の構図が目まぐるしく変わっている。

 民進党の枝野幸男代表代行は2日、新党「立憲民主党」を結成すると発表した。

 記者会見で枝野代表代行は現状を「選択肢がない。安倍政権の暴走に歯止めをかけるための受け皿が必要だ」と強調。「権力は何でも自由にできるものではないという立憲主義と単純な多数決ではなく、みんなで話し合って決める民主主義が大きな柱」と党名に込めた危機感を表明した。

 中道リベラル系の前衆院議員らが参加する見通しだ。これで民進党の前議員は、希望の党への合流、立憲民主党への参加、無所属での立候補の三つに分裂することになる。

 衆院選は政権政党の「自民・公明」「民進の合流組を含む希望」「立憲民主・共産」の三極化が鮮明になってきた。

 民進が反安倍政権の受け皿を目指し、突然、希望に合流することを決め、事実上解党したのは4日前。民進の前原誠司代表が「すべての候補予定者を公認してほしい」と要望したのに対し、小池百合子代表は安全保障政策や憲法観で合致しない人を「排除する」意向を示した。

 希望が反安倍政権の期待を集めたのは事実だが、小池代表の選別で中道リベラルが行き場を失っている。

 立憲民主は、小池代表の選別に反発した前議員らで、中道リベラル系の結集を目指す。そういった立憲主義勢力の選択肢をつくることの意義は小さくない。

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 この間置き去りにされているのは有権者である。

 安倍晋三首相の突然の衆院解散表明にしても、北朝鮮情勢の緊迫化に乗って支持率が回復したのを逃さず、野党の準備不足を突くものだ。

 党内で求心力に陰りが見えている政権基盤を再構築するとともに、再び憲法改正の主導権を握る。支持率低下の原因となった森友学園、加計学園問題をリセットしようとする意図が見え見えだ。

 希望も政権選択選挙といいながら首相候補を示さず排除の論理で保守だけで固めるあまり自民党との違いが分かりにくい。「第2自民党」と批判されるのはそのためだ。

 民進も同様である。前原代表は「どんな知恵を絞ってでも安倍政権を終わらせる」と語ったが、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法に強く反対した党である。希望とは政策の根幹で異なる。吹けば飛ぶような軽い政策だったのか。

 3党に共通するのは決定過程が不透明なことだ。

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 政権の批判の受け皿として野党の役割は大きい。

 三極化は野党票の分散化を招きかねない。一方で三極化といいながら、反安倍政権や憲法改正については二極化に近い状態である。

 発足したばかりの立憲民主は旧民主、民進で積み上げてきた理念・政策が中心になるようだ。

 立憲民主には政策を一日も早く提示し、中道リベラル政党としての対抗軸を鮮明にしてもらいたい。