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「女性活躍と言われても無理」そして退職を考える。企業が知らない、"モヤモヤ女子"が抱える両立の不安とは?

「先輩ワーキングマザーがみんなスーパーウーマンみたいな人ばかり。絶望的な気持ちに」(39歳、サービス業)

2017年10月02日 15時44分 JST | 更新 7時間前

「女性活躍」の言葉をここ数年で一体、何度聞いたことだろう。

理念はわかる。でも急に国から「もっと活躍しろ」と言われたって、家事もあるし子供もちゃんと育てたい。そう上手くいくものだろうか。そんな「モヤモヤ」を抱えた若い女性たちが大勢いる。

そんな女性たちの不安の正体を知り、本当の活躍を目指すにはどうすればいいか。子育て支援や学生へのキャリア教育事業などを手がける企業、スリールが制作した「両立不安白書」が話題だ。

92.7%の女性が「仕事と子育ての両立」直面前から不安

白書の主要部分は、子供がおらず、仕事をしている23〜39歳の女性347人に対して行われたアンケート結果で構成されている。

アンケートの結果、仕事と子育ての両立に直面する前から、不安を抱えた経験があるという「両立不安」の女性はなんと92.7%に達していることがわかった。その不安の中身を詳しく聞いてみると、こんな答えが書かれていたという。

夫が長時間労働で帰宅が遅く、子育ての協力をあまり見込めない。自分にばかり負担や責任が増えるのでは?(31歳、コンサル業)

夜遅くまでの仕事が多く、子供との時間を確保できないと思う。(39歳、製造業)

時短勤務になることによって、まわりに迷惑をかけないか。(27歳、不動産業)

回答から読み取れた「不安」の中身は、両立するには、仕事も家事も子育ても、完璧にこなさければいけないという女性たちの意識だった。

スリール株式会社「両立不安白書」

ではいつ、どんな場面で「両立不安」が生まれたのか?その答えには、職場の雰囲気やメディアなどで感じたという、こんな現実が反映されていた。

夜中まで働いているのが当たり前。頑張るのが当たり前の会社。このままでは子育てはできない。(36歳、建設業)

ワーキングマザーがみんなスーパーウーマンみたいな人ばかりで、私にはあれはできないと絶望的な気持ちになったことが何度もある。(39歳、サービス業)

メディアが報じるワーキングマザーの現状は、本当に大変そう。解決策のないまま、報道が終わったりする。(31歳、サービス業)

そして「両立不安」が生じた結果、それが原因で「転職・退職を考えた経験がある」人は50.4%、「妊娠・出産を遅らせることを考えた」人は46.6%に上った。

同じアンケートで、「働き続けたい」と希望する人は約90%。また、「現在の仕事が充実している」という人も約80%だった。であるにもかかわらず、このような不幸な現象が起きてしまっていることが、数字で明らかになった。

白書では、その現実を踏まえて、「両立不安女子」たちが、不安をどう解決し、本当の意味で活躍するためにどんな行動をすべきかという、具体的な解決法についての指南編へと続いている。

働き続けたい女性たち、どう配慮していいかわからない企業

なぜ、女性たちの「両立不安」に着目することになったのか。この「不安」の正体が解明された上で、女性は、企業はどうすればいいのか。スリールの社長、堀江敦子氏に制作の背景や活用法を聞いた。

ーー「両立不安白書」、どんな背景から制作されたのですか?

私たちが、女性たちの思いと働く企業側の考えに大きな乖離を感じ続けていることです。

私はこれまで7年間、1万人以上の学生や若手の女性を対象にセミナーを開催してきましたが、仕事と子育ての両立に直面する前から不安を抱える「モヤモヤ女子」がいなくなることはありませんでした。

モヤモヤ女子たちは「こうしなきゃいけない」という固定観念に縛られています。「仕事は長時間しないと成果が出せない」。「親が専業主婦だから自分も家事を完璧にしなくては」。「小さい子を預けるのはかわいそう」。

スリール株式会社「両立不安白書」より

そんな思いにとらわれている女性たちは、漠然とした不安を抱えているために、転職・退職を検討する人、妊娠を先延ばしにする人が半数近いという結果が出ています。

学生が就職するときにも、例えば「本当は営業職がやりたいけど、事務職にしておこうかな」とか「総合職は辛そうだから、一般職にしておこう」と考えてしまったり。そして、その人にとって本来、楽しいはずの仕事、積みたいキャリア、なりたい自分と全然違う選択肢を選んでいく。

でも、そういう彼女たちの本音は企業側になかなか伝わらない。あるいは言葉で伝えても理解されづらいんです。だからその問題は、これまで企業側に女性の「価値観の問題」とみなされてきました。

でも本当は、それは女性個人だけでなく社会の問題でもある。そういう社会を改善したり、理解しないまま政府が「女性よ、活躍せよ」と号令をかけても、むしろ悪い影響にしかなりません。

企業側が、配慮しているつもりなのに「両立不安」から思った通りに「活躍」してくれない女性たちを見て「結局、働く気がないんだ」「どうせ女は」と、誤解に基づいたレッテルを貼ってしまう危険性すらあります。だから、数値化して白書にすることが重要だったんです。

ーー数値化して企業側の理解を進めるということですね。どう活用していきますか。

この問題に対してポジティブな解決策を見い出すためには、まずは女性たち自身が「自分はどうしたいのか?」を見つめることが大事です。

子育てする前、就職する前の学生のうちからライフキャリアについて考えることが必要です。そういう若い人たちに届けたい。

また、企業側には女性が子育てしながらキャリアアップすることを前提に、実態にあわせた両立支援や女性活用の施策を作って行くために活用していただきたいです。

スリール株式会社「両立不安白書」より

ーー「子育てしながらキャリアアップ」というのは理想ですが、現実としては難しい面もあります。さらに、企業側、特に中小企業にとっては例えば育休や時短などで女性が一人抜けた穴が実質的に生じるという損失は埋めがたい側面もあるのでは。

確かにそれはありますが、大事なのは女性自身が「整理と交渉」を意識すること。なかなか難しいと思いますが一度に考えずに「仕事はどうしたいか」「子供は何歳にどんな事が起こりそうか」「サポートは誰にしてもらうか」の3つに整理してみましょう。子育てをしながら自分はどういうキャリアを歩みたいのか、まず前向きに考えて企業側と共有していくことが重要です。

たとえ、子供を産んで1年目は無理でも、2年目、3年目にはこういう風にしたいんだ、ということを考えて、上司にできること、やってほしいことを自ら伝えていく。働き方を変えながらもキャリアをつなげていくには、そうした関係性づくりが大切です。

例えば育児休業中でも、限定的な条件に当てはまれば、月に80時間以内は働ける(臨時的な場合には育児休業の継続と認められる)半育休はご存知でしょうか?

中小企業の場合、出産後の女性の健康状態は考慮しながらですが、月に1度は顔を出すなども良いかもしれません。ビデオ会議でもいいです。そうして連続性を失わないことで、復帰後もすぐにキャッチアップできる可能性がある。

例えばそんな方法で、できる限りの折り合いを付けていくのが良いと思います。

ーー白書への反応はいかがですか

女性からは「よく言ってくれた!」というのが多いですね。自分ではモヤモヤしていても言語化ができなかったという人もいました。企業の人事部の方などからも「そういうことだったのか」とか、有志の勉強会で活用しましたっていう声もありました。

まずは、2万ダウンロードを目指し、早く「女性活躍」という言葉自体をなくしたいですね。「そんなの当たり前」っていう世の中にしていきたいと思っています。

 
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