部活は日本人の思考停止の象徴

日本のネットで定期的に話題になることの一つに、公立中高の部活問題がありますが、元国連職員で国際経験豊富な @May_Roma (めいろま)さんは、部活は日本人が思考停止の象徴のようだと説きます。

日本のネットで定期的に話題になることの一つに、公立中高の部活問題があります。

21世紀には教育は大きく変わるかと思いましたが、部活に関しては、私がニキビ面の中学生だった30年前とほとんど変わっていないようです。

田舎の方では例えば高校生が朝5時半に家を出て朝練、夕方からの練習を終えて帰るのが、22時や23時というのが珍しくないようです。早朝放課後、月曜日から日曜日まで休みなく部活にすべてを捧げることが、根性があるという理由で、進学の際の内申書や、就職の時に有利に評価される様です。

教員はそういう活動に無償でつきあっているようです。

さて、これを欧州からみるとどうなのか。

私的には日本人の思考停止の原因にこの部活があるように思えてなりません。

そもそもスポーツというのは余暇の暇つぶしとして産まれたものでありました。

近代においても、庶民や労働者というのは日々の労働で疲弊し、工場でススまみれになり、畑では泥だらけになり、お遊びの運動などする必要も暇もなかったのです。

たかだか100年ほど前の資料や写真をみましても、どこの国でも庶民の生活というのはそれはそれは悲惨でした。

まず日本の場合です。イザベラ・バードというイギリスの女性は裕福な家庭に産まれ、世界各地を旅行して様々な旅行記を残していますが、日本が気に入っていたらしく、随分熱心に書いた本を残しています。

彼女の本の一つである日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー) を読むとよくわかりますが、明治初期の日本の農村や庶民の生活というのは大変悲惨でした。

大半は木造のあばら家に住み、雨が降れば雨漏りは当たり前。食べるものは小石や砂が混ざった米や雑穀、具がほとんどない塩辛い味噌汁と漬物、たまに干し魚という具合です。

「美しい日本」とか、時代劇に出てくるような生活をしていたのは、大都市に住む一部の武士階級や商人のお話でした。

これは欧州も同じです。

例えばイギリスの場合は、産業革命前の庶民は夜明けから暗くなるまで農場で働き、食べ物というのは、3食大量のパンや大麦を湯や牛乳でといた粥、少々の塩、週に数回のクズ肉でありました。

イタリア南部も庶民の生活は苦しく、少しでもカロリーをとるために、オリーブ油に塩、少々の豚の脂身で大量の炭水化物をかきこむという食生活が誕生しました。

当時のギリシャやスペインも大変貧しく、庶民の中には靴さえ履いていない人もいたほどです。水不足で乾いた大地での農業は困難で、海辺だと海で取ってきたほんの少々の魚を焼き、堅焼きのパンで食べるのが精一杯。今のように肉や乳製品をたっぷり食べられたわけではありません。

電気も冷蔵庫もネットもないので、生産性は異様に低く、衛生状態も良くなく、食料生産も限られており、ガスだってありませんので、料理は薪や炭を使ったトロ火。日々の生活さえも重労働だという時代が長年続きました。子供は労働力として、農場や工場でドロドロになって働き、早死にしていたのであります。余分な運動など必要はないし、する余力も暇もありませんでした。

古代ローマ時代より、スポーツなどできるのは、金と時間に余裕のある貴族様や、奴隷を抱えた皆様であります。そういう人々が、ウサギのウンコの穴に玉っこを落としてみたり、棒で打ってみたり、と暇つぶしのためにやっていたのがスポーツです。日本だって蹴鞠を嗜んでいたのは貴族です。

暇で金のある人々が、奴隷同士を棍棒で殴りあわせたり、猛獣と戦わせるのを眺めて、アハハと笑っていたのがスポーツ観戦でありました。

そういう単なる暇つぶしがスポーツの起源です。そもそも有閑階級の単なるお楽しみ。奴隷になるための根性を鍛えるためにスポーツをやるというのは、本末転倒であり、ダサいことで、粋でもなんでもないのです。

日本人というのは、スポーツというものの起源が一体何なのか考えることなしに、スポーツを修行僧の苦行のような「儀式」にしてしまいました。娯楽が溢れ、技術が発達し、生活レベルはかつてと比較にならないほど向上したというのに、貴族になることを選ばずに、子供に優秀な農奴になる活動をやらせているわけです。

さらに、部活動が根性があることの証明になるのかどうか。熟考する方はおりませんね。

私は体育は万年学年で最低の成績で、運動部にも所属したことがありません。中学校時代はヤンキーのたまり場だった英語部の幽霊部員かつ帰宅部でした。読書やHR/HMの鑑賞、映画鑑賞が多忙であったので、仕方がありません。

この私の様な人間でも、一応人並みに稼いできたわけですが、体育会系の部活動をやらないと真人間にならないというのを、どう証明するのか。元運動部で長い事失業中の元同級生に伺いたいものであります。

そういえば相撲部屋では力士を竹刀で殴っていたりしましたね。あれは何なんでしょうか。

ところでイギリス人はスポーツをやる気がありません。疲れるのが嫌いだからです。ナイジェリア人やオーストラリア人が死にそうになりながらテニスやサッカーをやっているのを横目みて、昼から飲んでいます。

そんなイギリス人は欧州一の肥満で、ウインブルドンもプレミアリーグも外国人だらけです。オリンピックで強い競技は飛び込みとヨット。中距離走で金メダルをとったのは元ソマリア難民のイギリス人でした。ここの人達はスポーツでは外国人に頑張ってもらうのです。学校の体育も部活も日本の基準ではユルユルでお遊び半分です。

イタリア人はヨットや水泳が大好きです。マラソンや野球は嫌いです。自分が美しく見えることと、楽なことが重要なので、泥にまみれるようなスポーツは嫌いです。丸刈りなんてもっと嫌でしょう。

人生というのは楽しむためにあります。なんでも中庸に、自分が楽しいと思う範囲でやるべきでありまして、苦しむのは人生ではないのです。部活で子供がレギュラーになれないと嘆いている方は、今一度、スポーツとは何なのか、考えてみたらいかがでしょうか?

ケイクス

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世界のどこでも生きられる

May_Roma

海外居住経験、職業経験をもとに、舌鋒鋭いツイートを飛ばしまくっているネット界のご意見番・May_Romaさん。ときに厳しい言葉遣いになりながらも彼女が語るのは、狭い日本にとじこもっているひとびとに対する応援エールばかり。日本でしか生き...もっと読む

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コメント

kaitenneco たしかに部活やってた人間と帰宅部の人間では大人になってからの感受性が全く違うw 14分前 replyretweetfavorite

kodoku_no_tora 部活は同時にいじめの温床にもなる。 出来る出来ない経験未経験でカーストが形成され、できない人間が見下される。 部活のために学業が疎かになる本末転倒もあってどうしようもない。 25分前 replyretweetfavorite

snipe1014 めいろま氏の新記事「 28分前 replyretweetfavorite

iron_klaus_ 狭い世界に押し込められて修行してるだけなのに青春だの何だのと錯覚している日本人。でも数十年した時、ただのオッサンオバサン率が高い。何のための部活だったのやら。 29分前 replyretweetfavorite