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ニュージーランド在住のプログラマがあれこれ書くブログ

「有給休暇は消化して当然」だけど実際どうなの? ニュージーランドの休暇事情

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こんにちは、はっしー(@hassy_nz)です。

突然ですが皆さん、有給休暇ちゃんと消化してますか? 僕がニュージーランドにやってきた理由のひとつは、与えられた有給を使い切る生活がしたかったからです。実際、この国では有給休暇を使ってガッツリ休みを取るのが当たり前。自分も去年は年末年始に16連休を取りましたし、今年の3月には18連休を取って日本に一時帰国しました。

この有給休暇を好きなように使える文化は、日本の友人たちからはメチャメチャうらやましがられます。皆さんの中にも「うわー海外最高じゃん! 自分も海外転職して有給全部使い切りたい!」と感じる人が多いでしょう。

で す が 。

世の中そうそううまい話ばかりではございません。有給休暇が好きなように使えるって話のウラには、それなりの理由があるんです。今日は、ニュージーランドの「不都合な真実」を正直にお話しましょう。

単純な休日の数は日本のほうが多い!?

なかなか気づきにくいんですが、実は日本って世界でもトップレベルに国民の祝日が多い国なんです。

日本の祝日が1年にどれだけあるかリストアップしてみましょう。

1月 元日、成人の日
2月 建国記念の日
3月 春分の日
4月 昭和の日
5月 憲法記念日、みどりの日、こどもの日
7月 海の日
8月 山の日
9月 敬老の日、秋分の日
10月 体育の日
11月 文化の日、勤労感謝の日
12月 天皇誕生日

と、年間で16日あります。

ではニュージーランドの祝日はどれだけあるんでしょうか?

1月 元日、元日の翌日
2月 ワイタンギ・デー
4月 グッド・フライデー、イースター・マンデー、アンザック・デー
6月 女王誕生日
10月 レイバー・デー
12月 クリスマス、ボクシング・デー

はい、これだけ。年間でたったの10日しかありません。正確には、地域ごとに異なる祝日がさらに1日あるので合計で11日なわけですが、それでも日本の16日には全然およびません。

しかも、日本の会社ではお盆や年末年始は休みになるところが多いですよね? 僕が以前勤めていたIT企業でも、年末年始は12月30日から1月3日まで"お正月休業"あつかいで、有給休暇を使わなくても、仕事に来る必要がありませんでした。

そう考えると、日本ではまったく有給休暇を使わなくても、年間20日前後の休みがすでにあると言えます。この時点でニュージーランドとは倍近くの差があるんですよ。

当然、ニュージーランドにはお盆も正月もありませんので、有給休暇を使わない限りは、カレンダー通りに出勤しなきゃいけません。1月3日から働いている人も普通にいます。就職するまでは、正直「どうせクリスマス過ぎたらお正月まで会社休みになるんでしょ〜」とかお気楽に考えてたんですが、全然そんなことありませんでした。

つまり、何もしなければ日本のほうがよっぽど休みが多いってわけです。

日本でも7年働けばニュージーランド並みの有給がもらえる!

「でもニュージーランドでは有給を好きなように使えるんでしょ?」

その通り。この国では、年間で最低20日の有給休暇が保証されています。日本では雇用されて半年で有給休暇が与えられますが、その日数は最低10日

自由に休める日数の多さでいえば、ニュージーランドの方が勝って……いないんですね、実は。

日本では、勤続年数が長くなるにつれて、有給休暇の日数も増えていきます。表にまとめてみるとこうなります。

勤続年数 有給休暇の日数
0.5年 10日
1.5年 11日
2.5年 12日
3.5年 14日
4.5年 16日
5.5年 18日
6.5年 20日

(出典: 年次有給休暇 - Wikipedia)

日本で同じ会社に6年半以上勤めると、有給休暇の日数がニュージーランド並になる! 日本の有給休暇の日数自体は、決して少なくありません。これなら日本で働いて有給休暇使い切ったほうが、よっぽど長く休めますよ。

「有給休暇を使うのが当たり前」とは「有給休暇を使わないと休みがない」でもある

旅行サイトのエクスペディアが2016年に行った調査では、日本人の有給休暇取得率は50%で、調査対象の28カ国中最下位。にもかかわらず、休みが不足していると感じる人の割合は34%で、これまた最下位という不思議な結果になっていました。*1

でも、休みの日数を考えてみれば納得です。日本では有給休暇を半分しか使わなくても、年に30日は休暇が取れるんですからね。1年のうち、1ヶ月はまるっと休んでいると考えればそんなに悪い話ではありません。ハッピーマンデーのおかげで頻繁に3連休がやってくるし、そりゃ十分休んだ気にもなるでしょう。

一方で、ニュージーランドでは有給休暇を使い切って、ようやく年間31日の休暇になるんです。こりゃ逆に、有給がこれ以上減ったり、好きに使わせてくれなかったりしたら暴動が起きますよ。

「有給休暇を使うのが当たり前」というのは、「有給休暇を使わないと、ろくに休みがない」ことの裏返しでもあるわけです。

正直言って、ニュージーランドから日本のTwitterのタイムラインをながめてると、「えっ! また3連休なの!?」「お盆で1週間休み? こないだゴールデンウィークで1週間休みだったじゃん!」とか、そんな印象ですよ。しょっちゅう休みがあってみんな遊んでる感じ。

日本を出たら休みがどーんと増えるぞー! と期待しすぎると、肩透かしを食らうことになりますぞ。

長い休みが取れるのはニュージーランドのいいところ

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じゃあニュージーランドのいいところは無いの? と疑問に思う方がいるかもしれません。もちろんそんなことはないです。

やっぱり、日本では考えられないほど長い休暇を好きなときに取れるのは、サイコーですよ!

最初に紹介したように、僕は今の会社で2週間を超える休暇を2回も取りました。こんなの日本で働いてたときは考えられませんでしたね。いくら長くても10連休が最長じゃなかったかな。

最近は、同僚が1ヶ月半休みを取ってヨーロッパ一周の旅に出てっちゃいました。こんなことも許されちゃうんですねぇ。会社の文化や交渉次第だとは思いますが、有給以外に無給の休暇を申請して2ヶ月の旅行に出かけるなんて猛者もいたと聞いたことがあります。

これほど長い休みが取れるのも「有給休暇は好きなときに使うのが当然」という文化があるからでしょう。

ただし繰り返しになりますが、年に1回の長期休暇のほかは、たいして休みがないってことは覚えておいてくださいね。休みの日数だけ見ると日本とほぼ同じで、短い休みを毎月のように取るか、長い休みを年に1回取るかの違いしかないんです。

まとめ ー ニュージーランドが労働者天国ってわけではないよ ー

総合的に見れば、確かにニュージーランドは働きやすい社会です。仕事と同様にプライベートの時間も尊重されるし、マネジメントの失敗を現場に押しつけることも少ない。特にITエンジニアの待遇は、日本とは段違いに異なります。ニュージーランドにやってきて本当によかったと思ってます。

しかし、この国に期待しすぎていたのも事実なんですよねー。ガンガン有給で休みを取って、もっと働かずにのんべんだらりと暮らしていけると思ってた、笑。

そりゃ毎日定時で帰れるけれど、残業しない働き方は決して楽ではないし、成果が出なけりゃクビにもなる。言語の壁だって当然あります。自分で努力し続けることができない人にはキツイ環境かもしれません。

ニュージーランドも労働者天国ってわけじゃない。ほかの国だって同じこと、それぞれの社会に良さも悪さもあります。海外転職を考えている人は、表面的な情報だけに踊らされずに、ほんとうの姿を見きわめるようにしときましょう。

ニュージーランドについて気になることがある方はお問い合わせフォームよりご連絡いただければ、なんでもお答えしますよー!