<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=794925553999638&ev=PageView&noscript=1"/>

スマートフォン版はこちら

title banner

つれづれイタリア~ノ<101>自転車が地方を救う 過疎化対策でイタリアがサイクリングロード整備・拡充に本腰

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO

 9月29日にイタリアで興味深い法案が可決されました。その名は「小さな自治体過疎化防止法案」。日本と同じようにイタリアでも限界集落や大きな街から離れた自治体の過疎化が急速的に進み、戦後に消滅した村は数えきれないほどです。国が過疎化を食い止めるため、人口5000人未満の村を対象に補助金を用意しました。その補助金のなかで多くの予算を占めるのが「サイクリングロード整備」。ぜひとも日本でも参考にしてほしいです。

イタリアの人気サイクリングイベント「エロイカ」のコース上にある集落たち ©Eroica.it

イタリアで過疎化がとまらない理由

イタリアの歴史ある街並み ©Anci

 そもそもイタリア中部やアルプス地域では、無数の集落が存在しています。人口が少ないにもかかわらず、石造りの教会と小さな広場を中心に数百年の歴史を超える建物が多い。しかし、大きな病院や大きな幹線道路が近くにないことに加え、農業、林業や漁業以外は働き口がない理由で、若者の流出が止まらず、人口が著しく低下している自治体が多いので日本の状況とよく似ています。

 Anci(イタリア全国自治体協会)の調査によると、5000人以下の自治体はイタリア全自治体の約70%を含んでおり、イタリア国土の54%を占めています。

人気のサイクリングイベント「エロイカ」のコース ©Eroica.it

 しかし、一部の地域では人口増加に転じる現象が起きています。その要因は大型サイクリングイベント実施のようです。サイクリングイベントが行われている地域では、人口が確実に増加しています。トスカーナ中部でビンテージバイクを対象としたサイクリングイベント「エロイカ」の例を見てみると、大会のコース上にある村々の人口が2000年に最低を記録して以来、その後プラスに転じています。

 さらに人口増加を後押ししているのが、自治体が独自に行なった対策です。人気大会のコースを示す誘導看板を設置し、いつでもコースを走れることを可能にしました。そこでサイクリストを受け入れるためにレストラン、ホテルやショップが増加し、働き口が増えたことで人口流出に歯止めがかかったのです。

「エロイカ」のコース上にある集落 ©Eroica.it
人気のサイクリングイベント「エロイカ」のコース ©Eroica.it

エロイカ大会周辺市町村における人口統計(ISTAT調べ)

自治体ごとの2001年の人口→2016年の人口
ガイオレ・イン・キャンティ町:2380人→2752人
カステリナ・イン・キャンティ町:2669人→2888人
グレーヴェ・イン・キャンティ町:12874人→13819人
フィリーネ市:21799人→23420人

サイクリングロード整備に70億円

 国が「小さな自治体過疎化防止法案」の可決で重視したのが、サイクリングロードの設置をかなめに、働き口の確保と村の生活を豊かにすることです。具体的に補助金の使い道を見てみましょう。

「小さな自治体過疎化防止法案」内容

サイクリングロード整備予算:5400万ユーロ(70億円)
2017年度自治体整備予算額:1000万ユーロ(13億円)
2018〜2023年度自治体整備予算額:1500万ユーロ(19億5000万円)

主な使い方:
・サイクリングロードの設置と建設
・歴史的地区の保全と修復
・企業の誘致
・高速インターネットの整備
・新聞や雑誌の販売拠点増加
・農産物の販売拠点(道の駅)増加と促進
・文化的イベントの実施
・公共交通手段の確保
多目的ホール・文化施設の建設

アマルフィ周辺の集落 ©Anci

 際立つのが、サイクリングロードに対する予算です。国が70億円を投じて、イタリア全土にサイクリングロードの設置を目指しています。こうすることでサイクリングという観光資源の誘致だけでなく、住民たちの文化的生活を高めることで、住んでいる地域を誇りに思えるようになるという案のようです。結果として人口流出を食い止めるだけでなく、人口増加できると期待されています。

◇         ◇

 イタリアの村の価値をもっと知ってもらうために2001年に立ち上げた組織「イタリアのもっとも美しい村連合」の製作した動画を紹介します。この組織は、フランスが1982年に立ち上げた組織がベースとなっています。公式ガイドも発行し、現在日本でも「日本でもっとも美しい村連合」が活動中。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

関連記事

この記事のタグ

つれづれイタリア~ノ

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載