UXデザインは「ゆりかごから墓場まで」
加藤貞顕(以下、加藤) 10月1日に、深津貴之さんがピースオブケイクのCXO(Chief eXperience Officer)に就任してくださいました。そこで、経緯や就任を決めてくれた理由などについてうかがっていきたいと思います。深津さんはいま、THE GUILDという会社の代表取締役を務めつつ、いろいろな企業のアプリやウェブサービスのユーザーエクスペリエンス(UX)の設計やコンサルティングをされているんですよね?
深津貴之(以下、深津) THE GUILDは会社というよりも、クリエイティブチームと呼ぶほうがしっくりくると思います。一人ひとりでも独立してやっていけるデザイナーやエンジニアが集まった共同体というイメージでしょうか。全員の仕事の窓口とポートフォリオを集約し、スケールメリットを出すという仕組みになっています。
加藤 メンバーは、個人で仕事を受けてもいいんですか?
深津 もちろん。でも、フリーランスとして一人でやると、弱い立場に立ってしまったり、大きな仕事を受けられなかったりしますよね。ギルドはそういったフリーランスを繋げて、相乗効果や付加価値を生み出すための組織です。理想は、ギルドにいれば広告代理店や製作会社に属するより自由があり、フリーランスでいるよりも責任や機材などの後ろ盾がある、という状態を作ることです。これは、もともとロンドンのクリエイター集団「TOMATO」をモデルにしています。
加藤 非常に未来的で、すばらしい組織ですよね。ドラッカーが『ネクスト・ソサエティ』の冒頭で書いていたのが、まさにギルドみたいな働き方だったんです。これからの仕事の仕方はこうなっていくんじゃないかと思います。
—— 深津さんご自身は、どういうお仕事をやってこられたんですか?
深津 THE GUILDを作ってからは、日経新聞さんのアプリのコンセプトモデル提案や、現在までの監修などをしています。あとは、GMOペパボさんのminne他のUI/UXの顧問など。くわしく言えませんが、自動車会社や証券会社、通信キャリア、TV局さんなどとも、いろいろな案件でお手伝いさせていただいています。
—— えーと、あの、ここで改めて聞くのも何なのですが、CXOってなんですか? あまり耳にしたことがないのですが……。
深津 CXOというのは、ユーザーの体験を設計し、良くしていく責任者ですね。
—— 深津さんが参加すると、noteやcakesがすごくおしゃれになるんですか?
深津 すごくおしゃれ……にはならないですね(笑)。今のところは。もちろん見た目を良くすることも、UXデザインの一部としては重要な要素です。でも残念ながら、そこに手を付けるのはもっと後です。まずはもっと大きなUXから考えていかないと。
—— そもそも、ユーザーエクスペリエンス、UXデザインって何なんですか?
深津 そのプロダクトに関わる、あらゆるユーザーの体験を設計することがUXデザインです。一言で言うと、「ゆりかごから墓場まで」ってことですね。
—— ますますわからなくなってきました……。
noteのことを耳にするところからUXは始まっている
深津 UXというのは、きっと一般的に想像されるよりも広い範囲にわたっているんです。みんなUXデザインと聞くと、アプリを使いやすくするとか、エフェクトを気持ちよくする、みたいなことを想像するでしょう。でも、それはUXデザインのほんの1%くらいしか説明していません。ピースオブケイクのサービスであるnoteを例に説明してみましょうか。まず、「noteってものがあるらしいよ」と耳に入るところから設計するのがUXデザインです。
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