北朝鮮の非対称ジメチルヒドラジン製造能力について
宇宙
最近、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が話題になっております。
ミサイルと言えばロケットエンジンを搭載し、それによって飛行するわけですから、当然燃料とそれを燃やすための酸化剤が必要となります。
北朝鮮の弾道ミサイルの多くには燃料として、「非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)」が使用されているとされています。この非対称ジメチルヒドラジンの製造が北朝鮮の国内だけで可能なのかどうかが話題となっています。
ロケット、またはミサイルの燃料には色々なものがありますが、その中でもヒドラジンは「常温で液体のまま保存が可能」であることと、「酸化剤と混合するだけで自然に発火・点火が可能(ハイパーゴリック)」という特徴があります。
そのため撃たなきゃいけないときにすぐ撃てなければならない、という性質を持つ弾道ミサイルには適した特性の燃料であるため、各国で広く使われているミサイル燃料でもあります。一方で毒性が強く、取り扱いが難しいため、製造には高い水準の技術が必要であると言われています。
北朝鮮では咸興(Hamhung)と漢南(Hungnam)と呼ばれる地域での化学工業が盛んであり、UDMHもここで製造が可能ではないかと考えられています。
また、北朝鮮の科学刊行物には2013年から2016年にかけてUDMH製造に関する内容の論文が発表されていることが確認できます。
といった論文が発表されているようです。
前者2つはUDMHの製造過程で発生する廃液の処理に関するものであるため、背後には実際にUDMHの製造が行われていた可能性が高いとされています。
最後の1つは、ヒドラジンの水溶液に含まれる水の量によって変化する伝導率を測定することで、UDMHの品質を測定できるという技術です。
また、洪南(ハンナム)の合成繊維「ビナルロン」の製造施設とされた工場は、1969年ごろのアメリカCIAによる偵察衛星画像の調査によって、塩素とアンモニアを行っている工場である可能性が高いとされました。
▲UDMHの製造を行っているのではないかと言われているビナルロン工場の偵察衛星画像
塩素とアンモニアは「オリンラシヒ法」と呼ばれるヒドラジンの製造工程において必要とされるため、UDMHの製造も、近年のこの工場の改修によって比較的容易に行えると考えられたそうです。
北朝鮮はこれまでUDMHを国外から輸入していたとされていますが、自国内での製造が可能になったことから、北朝鮮の禁輸措置などを行ったとしても、ミサイル開発が継続できるのではないかと言われています。
参考:DOMESTIC UDMH PRODUCTION IN THE DPRK
(http://www.armscontrolwonk.com/archive/1204170/domestic-udmh-production-in-the-dprk/)
ミサイルと言えばロケットエンジンを搭載し、それによって飛行するわけですから、当然燃料とそれを燃やすための酸化剤が必要となります。
北朝鮮の弾道ミサイルの多くには燃料として、「非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)」が使用されているとされています。この非対称ジメチルヒドラジンの製造が北朝鮮の国内だけで可能なのかどうかが話題となっています。
ロケット、またはミサイルの燃料には色々なものがありますが、その中でもヒドラジンは「常温で液体のまま保存が可能」であることと、「酸化剤と混合するだけで自然に発火・点火が可能(ハイパーゴリック)」という特徴があります。
そのため撃たなきゃいけないときにすぐ撃てなければならない、という性質を持つ弾道ミサイルには適した特性の燃料であるため、各国で広く使われているミサイル燃料でもあります。一方で毒性が強く、取り扱いが難しいため、製造には高い水準の技術が必要であると言われています。
北朝鮮では咸興(Hamhung)と漢南(Hungnam)と呼ばれる地域での化学工業が盛んであり、UDMHもここで製造が可能ではないかと考えられています。
また、北朝鮮の科学刊行物には2013年から2016年にかけてUDMH製造に関する内容の論文が発表されていることが確認できます。
- UDMHの酸化過程
- UDMHと水の酸化反応
- UDMH水溶液の電気伝導度の測定に関する研究
といった論文が発表されているようです。
前者2つはUDMHの製造過程で発生する廃液の処理に関するものであるため、背後には実際にUDMHの製造が行われていた可能性が高いとされています。
最後の1つは、ヒドラジンの水溶液に含まれる水の量によって変化する伝導率を測定することで、UDMHの品質を測定できるという技術です。
また、洪南(ハンナム)の合成繊維「ビナルロン」の製造施設とされた工場は、1969年ごろのアメリカCIAによる偵察衛星画像の調査によって、塩素とアンモニアを行っている工場である可能性が高いとされました。
▲UDMHの製造を行っているのではないかと言われているビナルロン工場の偵察衛星画像
塩素とアンモニアは「オリンラシヒ法」と呼ばれるヒドラジンの製造工程において必要とされるため、UDMHの製造も、近年のこの工場の改修によって比較的容易に行えると考えられたそうです。
北朝鮮はこれまでUDMHを国外から輸入していたとされていますが、自国内での製造が可能になったことから、北朝鮮の禁輸措置などを行ったとしても、ミサイル開発が継続できるのではないかと言われています。
北朝鮮の学術誌で公表されたUDMH製造関連の論文
- Kim Ryong Soh, Hong Jeong Hyun, “The Oxidation Process of 1,1-dimethylhydrazine,” Chemistry and Chemical Engineering, 2013, 2013, no.2, pp.38-40
- Kim Ryong Soh, Hong Jeong Hyun, “1,1-dimethylhydrazine-H2O Oxidation,” Chemistry and Chemical Engineering, 2015, no.1, pp.41-42
- Cha Seok Bong, Kim Yeong No, “A Study on Measuring the Electroconductivity of Unsymmetrical Methyl Hydrazine-water solution,” Chemistry and Chemical Engineering, 2016, no.3, pp.41-42.
参考:DOMESTIC UDMH PRODUCTION IN THE DPRK
(http://www.armscontrolwonk.com/archive/1204170/domestic-udmh-production-in-the-dprk/)
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