◆ドリーム 感想◆
評価/オススメ:★★★★★
この作品ジャンルは?:ヒューマンドラマです。
オススメしたい人は?:すべての働く人達。何かを成し遂げたい目標がある人。
印象を一言で?:本年度屈指の勇気の出る映画!
重い話ですか?:実は宇宙開発というのは作品のエッセンスのひとつで、見どころはいろいろな偏見と戦う女性たち、人間たちの物語。テーマは重いですが、天真爛漫なキャストたち明るさがそれを見事に中和しています。
◆synopsis◆
東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。
ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていた。
リーダー格のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職への昇進を希望しているが、上司ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまう。
技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志しているが、黒人である自分には叶わぬ夢だと半ば諦めている。
幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めてハリソン(ケビン・コスナー)率いる宇宙特別研究本部に配属されるが、白人男性だらけである職場の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらない。
それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAのマーキュリー計画に貢献しようと奮闘していた。
※公式HPより
※ネタバレ防止に付き、一部文月によりカット
◆comment◆
日本では2017/9/29より公開。文月は幸運にも公開初日に鑑賞できました。
監督はわたしのおすすめ作品のひとつである
『ヴィンセントが教えてくれたこと』のセオドア・メルフィ。
→文月の過去の紹介記事(この頃はまだ短いポスト)
【映画 感想】ヴィンセントが教えてくれたこと ―大人になると、気が付かないうちに色眼鏡を掛けている―
『ヴィンセント~』で不覚にもおいおいと泣いてしまって以来のファンです。
よって、今回の作品は不安もなにもなく安心して劇場に足を運べました。
不安、といえば、この作品は邦題を巡って一悶着あったことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。
わたしも以前の投稿で言及しました。
→文月の過去の紹介記事
ディストピア パンドラの少女 感想 ~子供がまだ『喰って』る途中でしょうが!~【映画レビュー】
本作はマーキュリー計画を題材とした作品。
つまり、『ライトスタッフ』達を支えた多くの人達、とりわけ理不尽なしがらみを乗り越えて業績を残した女性達の物語です。
光と陰。
言ってみれば、ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリーの様に、これまであまり語られなかった外伝として捉えることもできますが、実話であることが本作のミソです。
よって、わたしは本作を鑑賞した後に改めて『ライト・スタッフ』を観てみるつもりです。
『ライト・スタッフ』予告編
●ドリームとは?
さて、本作が描いているのは、マーキュリー計画の最大の難所であったアメリカ初の有人地球周回飛行が成功するまでの過程です。
しかしながら、意外と扱っているテーマは重いのです。
オープニングからいきなりそのものずばりの人種差別、女性蔑視から始まり、
職場でのしがらみ、嫌がらせ、困難な課題への挑戦。
仕事を通して、そして私生活を通して、浮き上がっては頭を悩ませる現実という壁。
生きること≒働くこと というのは多くの人が共通して抱えているものですが、
この作品も『誰もおそらくが毎日感じていること』を映し出しています。
何かすごいことをした遠い国の本当にいた人のお話、という目だけで観られる人は少ないし、逆にもったいないですよ。
こう書かなくても、自分の生活とダブってしまう方は多いのではないのでしょうか(笑)
●主軸となる3人のレイディはこちら↓
3人とも、優れた才能を持ちながら『何かを耐えている』姿は印象的です。
彼女たちが身内だけに見せる素の姿と外での『ツン』とした態度。
どうしてそんな態度を取るのかはまさしく、
彼女たちが『耐えている』ものに起因しています。
●そんな彼女たちと関わることになる人達はこちら↓
面白いことに、彼らの姿勢、見識が『2対2』で別れているのも見どころです。
誰もが抱えているものと同じ、と書いたのには理由があって、
有色人種である3人の主人公だけでなく、彼女たちと関わる彼らも悩み、苦しみ、耐えているからなのです。
性別や人種など関係なく、自分の才能を活かせるところを掴み取れるということは、理屈なようで理屈でない、とんでもない事なのです。
多くの人が、何かを諦め、何かに苦しんで過ごしている。
わたしだって同じです。
ただ、今よりもはるかに不自由で理不尽なしがらみの中で、決して諦めなかった人たちがいた。
簡単に一括りにはできないし、映画として造られた以上、作中彼女たちが直面する差別という名の現実は、本当はもっと凄まじいものであったはず。
キング牧師のあの時代なのです。
それでもこの作品を明るくしているのは最高に明るくて、そして強く、デカルチャーでタフなレイディ達の姿に他なりませんな。
自分の居場所は、自分で勝ち取るもの。
そして居場所は自分でつくるもの。
つらい状況は誰にでも起こり得て、そしてその中で再起不能に陥ってしまうこともあるのだけど、
そんな時でも劇中のキャサリンのように背筋を伸ばし、
ドロシーのように図太く学び、
メアリーの様に不敵に挑む。
『ドリーム』という邦題を考えたライターさんなり、配給会社さんとしては、
彼女たちが魅せた不屈の姿に『古き良き健全なアメリカン・ドリーム』(頑張って金持ちになりましたというのではない)を見たのだろうなと考えました。
ま、『新感染』とかいう、座布団全部持っていかれそうなのボロクソタイトルと比べれば、まあアリですな。
(誤解のないように。『TRAIN TO BUSAN』はマ・ドンソクのタフガイぶりに最高に燃えた口です。はい。わたしがケチを付けているのはこの邦題。何が「新しい感染」なのか、
詳細なレポートを提出してもらいたいくらい個人的には憤ってます)
人類初の有人飛行を成し遂げた人。
アメリカ人初の地球周回軌道飛行を成し遂げた人
その陰に、アメリカの黒人女性初の偉業を成し遂げた女性がいた。
エンドロールが「良かったね!めでたし、めでたし」だけでなく
しっかりと彼女たちにフォーカスして終わります。
観る側としては、それをしっかりと心に刻むことで真のエンディングを迎えられることでしょう。
●ちなみに
IBMの特設サイトには、主人公の彼女達にフォーカスした動画もあって、改めてすごいことをした人達なんだなと脱帽しちゃいます。興味のある方は御覧ください。
→映画「ドリーム」とIBM(IBMの特設サイト)
しかし本作は『走る、走る』
観客席から立ち上がって応援したくなるくらい、走る。
象徴的なシーンなので必要な描写なのですが、
あたし、仕事中にあんなに走ったら、すぐに早退します。
2017年映画鑑賞 160本目
次回予告、『コノヤロー!バカヤロー!』なあの映画です(笑)
◆overview◆
・原題:Hidden Figures 2016年アメリカ公開
・上映時間:127分
・監督:セオドア・メルフィ
代表作:『ジーサンズ はじめての強盗』『ヴィンセントが教えてくれたこと』
・脚本:セオドア・メルフィ アリソン・シュローダー
・メイン・キャスト
タラジ・P・ヘンソン
オクタビア・スペンサー
ジャネール・モネイ
ケビン・コスナー
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