作家・海猫沢めろんさんが革命的新技術「ハプティクス」の核心に迫るルポの第2回! 前回、取材を終えたものの原稿が書けずに途方にくれためろんさんは、時間をおいて再び大西公平先生のもとを訪れた…。
〔→第1回はこちら gendai.ismedia.jp/articles/-/52456〕
最初の取材から1ヵ月近くが経った某日。
ぼくは日吉駅から歩いてすぐの、慶應義塾大学キャンパス内にある喫茶店にいた。
「すいません……わざわざお時間とっていただいて。リアル・ハプティクスはやっぱり伝えるのが難しくて……」
そう伝えると、大西先生は、しょうがないなーという様子で「まあ、あれを伝えるのは難しいですよね」と笑ってくれた。
そうなのだ……悩んだ結果、ぼくは大西先生に再度取材をお願いしたのである(すいません!)。
前回の取材後に大西先生の著書(『リアルを掴む!』)を読んだことで気づいた、この技術を伝えるポイントとはなにか。
それは、これが「引き算の技術」であるという部分だ。
一体どういうことなのか?
たとえば本のなかで、リアル・ハプティクスに使われているABCコアというチップで、GPアームという新しいロボットアームを作ったという話が出てくる。
ロボットアームというのは工場の作業や、農産物の選別など、あらゆるオートメーションの場で使われているのだが、力加減が難しい。たとえば豆腐を持つアームと鉄を持つアームは根本的に違う設計になる。
しかし、このチップを使えばこれがひとつの同じもので可能になる。
しかもセンサー類や最近話題のAIなんかも使っていない。
なぜそんなことが可能なのか。
普通に考えると、プログラムというのは、普通は順番に行動を組み立てているわけで、ロボットアームが作業するためには、まず作業するモノを認識しないといけない。
たとえば座標軸で指定して、ここにいったら、これをやって、右に何十度回すとか、そういう命令を書いている。
認識をして、それをつかんで、回したり、掴んだりするわけだ。
ところが、GPアームはそうした測定を行わない。人間のやっていることをそのままやっているだけなのだ。
とにかくそこにいって、何かをつかめという命令だけがある。
そのあと、触ってからは前に人間の触ったデータを使う。
それだけだ。
そうなると一回教えたこのコップでしか使えない……と、ふつう思うだろう。
ところがGPアームは人間と同じように汎用性を持っている。本当に人間と同じような力加減で動く。
なぜそんなことが可能なのか。