2017-09-30

けもフレ騒動を、元アニメ版営業が丁寧に解説する(1)

けもフレ炎上に関して、

アニメ版権ビジネスに携わっている人間から解説がないと感じるので書く。

「外部の人間からこそ、好き放題に書ける」前提もあるし、

仮に真実と違っていたとしても、価値のある内容になると思ったからだ。

まず結論から言うと

けもフレ製作委員会からプレスリリースの内容が真実だとすれば

(仮にあれが真実でないとしたら訴訟モノだし、ヤオヨロズ真実から黙っているのでは)、

今回の話は8割方、ヤオヨロズ社に非がある話だ。

同時に、あの製作委員会からリリースは、外から見えている事実の経緯と矛盾していない。

正しい知識もないくせに、KADOKAWAを叩くのはやめよう。

自己紹介と前提

私は広告代理店人間である

つい先月まで、アニメ版権を使った、タイアップ販促キャンペーン企画担当していた。

今もファミマけもフレチャームがもらえるキャンペーンをやっているが、

まさしく「ああいうの」である

そのため、今回の問題言及するにあたって、平均以上の知識がある。

アニメの持ち主は「製作委員会

製作委員会というのは、幹事会社と、そのアニメへの出資企業構成される組織だ。

この方式には、出資から見れば、失敗のリスクを最小限に抑えながら、

会社のカネになる権利をとりに行くことができるメリットがある。

幹事会社から見れば、リスクを抑えながら、製作資本を集められるメリットがある)

というのも、すべての商業アニメには、作品に付随する権利が発生している。

映像に関する権利音楽に関する権利出版に関する権利、グッズに関する権利など様々なものだ。

作る物に応じた権利を持っている会社しか、そのコンテンツ公式制作物は作れない。

勝手に作ったら、もちろん訴訟である

(知っての通り、個人二次創作同人誌は、その辺りグレーゾーンだ)

この権利というのは、もちろん自分で使ってもいいし、

かに期間を設けて「貸す」(=許諾する)ことでもお金になる。

からどの会社も、ヒット作品権利がほしくてたまらない。

ただし元手のお金がなければ、権利以前に、作品を作ることすらできない。

から、中心になって製作委員会を立ち上げる「幹事会社」は、作品企画書を作ってばらまく。

出資する側の会社は、それを読んで「この作品は当たる」と感じたら、ヒットを祈りながら出資をする。

出資に伴って、権利が手に入る。

これが、作品が当たれば、ゆくゆくは大きなカネになるというわけだ。

具体的に言えば、サーバルかばんのドラマCDを出すために音楽周りの権利が要るし、

フェネックフィギュアを出すためには、商品化(グッズ化)周りの権利必要だろう。

あるいは、アライさんオンリーアンソロジーコミックを出したい会社からお金をとるために、

出版周りの権利必要なのである

けもフレに関しては、KADOKAWA委員会窓口であり、幹事会社であるように見えるので、

以後の文章もその前提に立って書く。

ともかく、以上のようなギャンブラー的な前提があって、商業アニメは生まれている。

余談だが、出資がなかなか集まらず苦しむ場合ほとんどで、アニメ化自体が立ち消える作品も多い。

おそ松さんのように、どの会社出資に見向きもしなかった作品が、大当たりした事例もある。


ヤオヨロズ立ち位置

これは様々なツイートでも指摘されているが、

ヤオヨロズ作品の持ち主である製作委員会から発注を受けて、

仕様に沿ってアニメをつくって、納品しただけである

言い換えると、

ヤオヨロズ製作委員会には入っていないため(作品に対する出資リスクをとっていないため)、

あくまで「下請け制作会社」にすぎないのである

一般的に、アニメのような制作物を納品する際には、委員会に対する(二次利用を含めた)著作権譲渡と、

著作者人格権をの不行使を含めた契約を結ぶことがほとんどであり、

おそらく、現状ヤオヨロズ社に残っている権利ほとんどないと言っていいだろう。

私がここではっきりさせておきたいのは、「けもフレアニメは、ヤオヨロズ作品ではない」点だ。

言うまでもなく、たつき氏の作品でもない。

まり製作委員会への確認と、その結果としての許諾がない限り、

好きに内容を作ったり、コンテンツに関する情報を発信することはできない。

なぜならそこには、「発注される→アニメを納品する」関係しか存在しないから。

この辺りを曖昧にせず、前段も踏まえて、契約上明確にNGであることをしっかり理解すべきである

たつき氏の行為の、一番の問題点

製作委員会からの許諾なく、「12.1話」を勝手に作り、発信した点。

さらには、それが「公式」の制作であるかのような受け止められ方をしてしまった点だ。

もっとかい部分では、恐らく各社への確認に回していないであろう、

キャラクター立ち絵セリフが入った1枚画像投稿行為などもあるが、これはまあ相対的には重要でないだろう。

12.1話に関しては、コピーライトに注目すると良い。

コピーライトとは、それが権利者の確認正式な許諾を受けて公開されたものであることを示すサインだ。

けもフレ場合は、「けものフレンズプロジェクトA」、簡略化した短縮表記で「KFPA」のようだ。

けもフレTwitter公式アカウント画像欄などを確認すればひと目で分かる通り、

けもフレアニメにまつわる全ての制作物は製作委員会確認と監修を受け、

コピーライトが入っていなくてはならない。

しかしながら、

http://www.nicovideo.jp/watch/sm30968065

ご覧の通り、コピーライト存在しないことが確認できる。

これで12.1話は、「たつき氏が製作委員会許可をとらず、勝手に作った」制作なのだと分かる。

ところがファン側には当然知識がないので、こうした制作物を「公式が出した物」だと思って視聴する。

では、たつき氏が12.1話を公開したことで、どんな問題が起こった(と想像できる)のだろうか?

・このアニメのせいで、進行していた企画が「公式なのに二番煎じ」になってしまい、内容の修正必要になった

・以降のマーケ戦略露出スケジュール組みを検討し直さなくてはならなくなった

主幹事のKADOKAWAから事前の確認依頼ができなかった件で、製作委員会所属企業への説明謝罪対応に追われた

etc

例えばこうしたトラブルKADOKAWA側に起こっていた可能性は、容易に想像がつく。

KADOKAWAから見た際の、最も大きな事件はこの12.1話の公開だっただろうし、

今後はやめてくださいね、というヤオヨロズへの警告には、れっきとした正当性がある。

たつき氏が自分お金持ち出しでつくったとか、だから何?やめてね。って話なのである

この業界には、適切なタイミングで、適切な内容の情報イラスト動画なども含む)を解禁し、

意図した形での盛り上がりの山を作るために、日夜、検討検討を重ねている人々がいる。

たつき氏は、アニメ業界人間でありながら、本当にそういったことに想像が及ばなかったのだろうか?

JRA日清とのコラボ映像が世に出たのは何もおかしくない

こうした販促タイアップキャンペーンの進行について解説しながら書く。

この2本の企画に関しては、

日本中央競馬会クライアント) - 代理店キャンペーン企画) - KADOKAWA委員会窓口)

日清食品クライアント) - 代理店キャンペーン企画) - KADOKAWA委員会窓口)

という体制でやっていたであろうと想像できる。

こうした企画代理店を挟む理由は、当事者同士で進めるとケンカになって基本うまくいかないのと、

単純に調整事項が多すぎて面倒くさいからだ。

通常のスケジュールとしては、もちろん規模感にもよるが、6ヶ月~4ヶ月前くらいに、

委員会の窓口企業に対し、コンテンツの期間使用に関して、代理店から打診をする。

打診というのは、

お金を払うので、一定期間、競合企業にそのコンテンツを使わせないでもらうことはできますか?」

という相談だと思ってもらえればいい。

たとえば日清食品は、今回のけもフレとのコラボ映像を作って公開するためにお金を払い、

コンテンツの期間使契約を、企画をした代理店越しに、委員会窓口であるKADOKAWAと結んでいるだろうが、

この契約を結ぶことで、東洋水産とか、マルちゃんとかは、けもフレコラボができないことになる。

(だからマリオとかポケモンとかの強いコンテンツは毎年、高額での激しい取り合いになる。)

打診に対して、委員会窓口からOKです、提案していいですよ」の返事があれば、

代理店は、そのコンテンツを使った企画クライアント提案する。

もちろん不採用になることの方が圧倒的に多いが、採用になれば、その旨を委員会窓口に連絡し、

許諾契約の締結と並行して、コンテンツ制作が始まる。

今回、日清食品企画開始は2017年6月だと明記されているので、

おそらく4月末くらいに日清から代理店オリエン代理店からKADOKAWAに打診、5月頭にOKの返事が出、

5月初旬くらいに代理店から日清への企画提案があって、2~3週間くらいで社長OKが出て実施正式決定、

6月から表記の通り「委員会連携しながら」企画をかためていった、というような流れだったのだろう。

スケジュール的には、十分な余裕があるかはさておき、本当のことを言っているだろうな、という感じだ。

なので、たしか日清食品にとってみれば、

6月段階では「8月に入っての、ヤオヨロズからの辞退の申し出」は知り得ないし、

どこの制作会社を使うのかは製作委員会が決めることなので、まさしく「関与できる立場にない」。

そもそも、これまで述べてきたような製作委員会の仕組みを知っていれば、

日清食品に問い合わせをするのが無駄迷惑行為しかないことがわかる。

なのでやめようね。

(というのを、KADOKAWAヤオヨロズたつき氏も発信すべきだったのでクソ)

8月に入ってヤオヨロズ制作を辞退したはずなのに、ヤオヨロズ制作映像9月に世に出ている」

指摘に関しては、これもヤオヨロズがイチ制作会社にすぎないことを踏まえて考えれば、

2期制作に関しては辞退の申し出をしつつも、すでに発注を受けてしまった進行中のタイアップ案件に関しては、

ヤオヨロズKADOKAWA】、【KADOKAWA日清】の、2つもの契約不履行の状況が生まれしまうので、

お互いケンカしながらも、まぁ納品までは最後まで一緒にやった、というだけの話だろう。

矛盾でもなんでもないことがご理解頂けるだろうか。

(2)に続く

https://anond.hatelabo.jp/20170930051452

記事への反応 -
  • anond:20170930045332

    3行にまとめられないやつは無能

  • anond:20170930045332

    まさにKADOKAWAの人間に会ったことがある人間が便乗して叩いてる気がするけど

  • 『けもフレ』騒動を、元アニメ版権営業が丁寧に解説する(2)

    https://anond.hatelabo.jp/20170930045332 の続き 経緯の解説 ※業界関係者としての想像 まず前提として説明しておきたいのが、コンテンツ制作を生業にするこの業界には、 「0から1を生み出す...

    • anond:20170930051452

      要するに、カドカワの中の人のほうがたつき監督とヤオヨロズより作品に思い入れがあるから、カドカワの中の人が理不尽なことをするはずがない。ヤオヨロズとたつき監督が社会人と...

      • anond:20170930053501

        すごい読み方する人もいるんだね。君みたいなタイプって自分の中に結論が先にあるでしょ。。 制作会社にとって(もちろんKADOKAWAにとっても)、クリエイターを宝として扱いたいの...

        • anond:20170930055803

          んー、まだわかんないな。 私はもう結構なおっさんで、大企業の元受けも知っているし、孫請けフリーランスも知っているけど、ヤオヨロズの調整がダメで現在の炎上につながる、とい...

          • https://anond.hatelabo.jp/20170930074602

            ブサヨがーだろ

          • anond:20170930074602

            まさしくそこが普通のビジネスと違って難しいところで、 だから、あの業界で働く人には「モノを作るクリエイターが一番エラい」認識が 浸透していることに触れたんだよね。 一言...

            • anond:20170930142402

              一体何の「リスク」だよ低能w カドカワこそがリスクだろうがwww

              • anond:20170930143810

                w たつきが勝手に12.1話のような創作物をアップすることで、 内容修正しなくちゃいけなくなった出版物なりが発生したり、想像つかないのかな? 12.1話の話題で持ち切りになっちゃっ...

                • anond:20170930144730

                  現状はカドカワによって引き起こされたものだぞw 藁人形叩いてないで現実見ろよw 内容修正が必要な出版物とは? 解禁日ずらしに関しては心配はいらないな ヤオヨロズはカドカワの...

                  • anond:20170930150252

                    バカすぎる…。 確かにヤオヨロズを外す「通達をした」のはKADOKAWAだろうけど、 何をもって「現状を引き起こしたのはKADOKAWA」って言ってるの? そもそも現状、公式コメントは製作委員...

                    • anond:20170930150917

                      「公式コメント」の定義が問われるなw 低能世界では公式コメント以外は事実にならないのかな? 大本営発表信者ってとこ?www 知識思考が足りないのはてめーだよ低能www 公式...

    • anond:20170930051452

      1期はKADOKAWA側もアニメの担当部署じゃなくて書籍の担当部署のスタッフがやってたみたいで、そこは最終的にBD付きガイドブックが作れれば問題ないやくらいのルーズな管理でやれてたん...

      • anond:20170930055712

        それはありそうですよね。 最初は好きにして良かったくせに、ヒットしたからって急に 「ちゃんと」管理しようとしてくるなよ、何なのお前ら、みたいな。 ただそうなると結局、正当...

    • anond:20170930051452

      たつきが「大人の喧嘩」を知らなさすぎたのが問題じゃないの? 「大人の喧嘩に巻き込まない」という扱いだったから「大人の喧嘩」を知らないままだったから、ツイートしちゃったと...

    • anond:20170930051452

      コラボ企業や声優がお詫び出しているのに当の製作会社が何も言わないってのがアホ さっさとハッキリさせろって

    • anond:20170930051452

      いや、12.1話みたいなことをやりたいなら情報を共有しろ→嫌だ→決裂 の間には当然、KADOKAWAが無茶な条件を突きつけてヤオヨロズが辞退した説と、普通の条件だったけどヤオヨロズがト...

    • anond:20170930051452

      話が決裂した旨そのものに対する守秘義務は無いもんなの? 「おとなのじょーしきとしてふつー黙ってるだろJK」で済ますもの?

    • anond:20170930051452

      (1)(2)両方読んだ。 自分も似た領域で働く身であり、元増田氏の主張の殆どは正論だと思った。憶測も多く含まれてる主張だが違和感は感じ無かった。でもあまり「ゴミオタクども...

  • anond:20170930045332

    これで12.1話は、「たつき氏が製作委員会に許可をとらず、勝手に作った」制作物なのだと分かる。 この話が出るとき何度もテレ東Pのインタビューが貼られてるんだけど http://otapol.jp/...

    • anond:20170930083435

      そりゃヤオヨロズの福原はそう言うだろう

    • anond:20170930083435

      福原さんはヤオヨロズの取締役だからそう言う以外ないし、 「各所」がKADOKAWAだとは書かれてないことに気をつけなきゃいけない。 嘘は言ってないにせよ、声優事務所なりを指している...

      • anond:20170930135645

        問題があったらとっくに削除されている 逆にされていないのならそういうことだ で結論出てるのに何うだうだ言ってんだこいつら

        • anond:20170930142749

          返信もれてた。 たしかに12.1話はいまも削除されてはいないけど、 それは内容に大きな問題がなかったのと、 作品のファンが大喜びで、支持される内容だったからで、 消したら消した...

          • anond:20170930170908

            低能はー、なんでー、製作委員会から既に外された(それも意に沿わない排除をされた)人間がー、製作委員会に遠慮する必要があると思ってるのかな?www いや、馬鹿だから、だよ...

            • anond:20170930171216

              こら、どうしてすぐお友達に絡むの? 増田ちゃんが同じこと言われたらどんな気持ち? お喋りしたいなら優しく話しかけようよ ママのお願いきいてくれるかな?

          • anond:20170930170908

            テレ東のプロデューサーに事前連絡があり、権利についての言及で「同人です」で済ませられている。 http://ch.nicovideo.jp/rgrey-siga/blomaga/ar1237533 ・12.1話について たつき監督から現段階で...

  • anond:20170930045332

    24時間経って2ブクマですか 残念じゃったな とはいっても時間費やした長文が無反応なんてよくあることよね

記事への反応(ブックマークコメント)

 
 
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