じゃらんnet>じゃらんニュースTOPページ>東京都>総力特集!ラーメン官僚が選ぶ、東京の「今」が分かるラーメン店
今や、日本人の「国民食」として盤石の地位を築くに至ったラーメン。現在、日本全国に存在するラーメン専門店は3万軒を超え、人々は、好みやその日の気分に応じて、様々な種類のラーメンを楽しむことができる。中でも、東京には4,000軒に迫る数の店舗がひしめき、食べ手がより満足できる1杯を提供するため、日夜研鑽を重ねている状況。
そして、もちろん、そんな日本一の超激戦エリア・東京には、腕に自信のある作り手が集中する。提供されるラーメンの種類も、店ごとに百花繚乱の様相を呈しており、食べ手もクオリティの高低に極めて敏感だ。
この記事では、そんな4,000軒に及ぶ都内のラーメン店の中から、自信を持っておススメできる優良店を、厳選してご紹介する。紹介するのは、今年オープンした新店のみ!これらの店舗に足を運んでいただければ、日本のラーメンの「今」を知ることができるはずだ。
オープンは本年4月23日。誕生してから日は浅いが、2016年における都内新店のエース格として、数多くのラーメン好きから絶大な支持を得ている。店先から延びる大行列は、もはや、大森の風物詩だ。
同店でまず食べていただきたいのは、「醤油らあめん」。圧倒的な滋味を有する赤笹シャモの血統を引く「やまがた地鶏」の丸鶏を贅沢に用い、本枯節や昆布を合わせたスープは、鶏に由来するイノシン酸とコンブに由来するグルタミン酸とがせめぎ合い、うま味の協奏曲(コンチェルト)を創出。
「自らが手掛けたスープに最も合うのは、自家製麺しかない」と、試行錯誤を重ねて創り上げた麺も、スープの存在感に飲み込まれない、毅然とした佇まい。
味が良いだけではない。随所から作り手としての矜持を感じさせてくれる、ラーメンという名の芸術作品だ。
各地方の地域性を採り入れた独特の味わいがラーメン好きの心をとらえる、ご当地ラーメン。札幌味噌、博多豚骨などがよく知られるが、都内にも、八王子を中心に、長い歴史を有するご当地麺「八王子ラーメン」が存在する。
国産の鶏ガラと豚骨をベースとした朴訥な醤油スープにストレート麺の組合せ。ラードを垂らし、具に刻み玉ネギを配する1杯は、余計な装飾を排したミリマリズムが魅力。必要最小限のギミックで、最大限の満足を食べ手から引き出す、引き算の美学の結晶。
同店の「ラーメン」も、そんな八王子ラーメンのセオリーに忠実だが、修業先である名店『みんみんラーメン』にならい、すりおろし玉ネギを採用。豚骨、魚介を多用することで、関東ローム層のように分厚いうま味を表現。やや太めの菅野製麺製の麺を用いている点が、「今」を感じさせてくれる。
店主は、「超」が付くほどのラーメンマニア。若くして担々麺に魅せられ、そのルーツを探究。本場中国四川省の担々麺が汁なしであることを知り、究極の汁なし担々麺を完成させるべく、日夜研鑽に励んできた。
そんな店主が満を持して提供するのが、1,000種類を超えるレシピの中からベストなものを選び抜いたという、「汁なし担々麺」だ。
ラー油等に由来する「辛さ」と中国山椒に由来する「痺れ」を、それぞれ小・中・大の3段階から指定できるが、辛さは単なるラー油の分量調整で対応せず、「辛さ大」にはハバネロを投入し、「辛さ小」には辛みが穏やかなラー油を用いるなど、全く異なるレシピを用意。
汁なし麺の良し悪しを決定づける麺へのこだわりも尋常ではなく、松本製麺所と試作を重ね、タンタンタイガーの汁なし担々麺のためだけに作ったオリジナル極太ストレート麺を投入。盤石の態勢で、客の来訪を待ち構える。
都内でも指折りのラーメン激戦区・高田馬場で超人気店として君臨する『麺屋宗』。そんな同店の店主が、本年8月、満を持して秋葉原にセカンドブランドをオープン。それが、『百年本舗秋葉原総本店』だ。
「日本人のみならず、観光に日本を訪れる外国の方々にも、日本のラーメンの魅力を理解してもらいたい」との想いから、外国からの観光客が多い同地を選んだ。
鶏と豚のガラ、モミジをじっくりと炊き上げ、香味野菜の甘みとクロスオーバーさせたスープは、動物系素材を幾重にも折り重ねることによって生まれる束矢のように重厚なうま味が、食べ手の喉元に突き刺さる会心の出来映え。
川面に咲く満開の桜の花びらのような薄切りチャーシューも、丼に彩りと華やぎを添える。大胆さと繊細さが共存するこの1杯。秋葉原の新名物となる日も、そう遠くはないだろう。
ここ数年、東京においては鶏白湯ラーメンの人気が爆発し、新店はもちろん、既存のラーメン店においても、鶏白湯を味わうことができる機会が激増した。ただ、見方を変えれば、そのような状況は、鶏白湯に対する食べ手の味覚が肥え、生半可な水準では生き残れない事態が到来したことを意味する。
そんな中、『うかんむり』の「鶏つけそば」は、「博多水炊き鍋」の製法を忠実にトレースし、鶏ガラと丸鶏のみを徹底的に炊き上げることで、鶏本来のナチュラルなうま味を引き出すことに注力。鶏の魅力をひたすら追い求め、うま味に棹(さお)を差さない店主の真摯な姿勢が垣間見える。
麺もスープ同様、感動のため息がこぼれるほど秀逸。口の中でバネのようにパツンと弾ける三河屋製麺製の低加水麺は、類まれな個性を放ちながらも、スープと水魚の交わりを結ぶ、同メニューの隠れた主役。
「スープOFF」という特性から、具やタレの種類などに工夫の余地が生じ、比較的簡単に作り手のオリジナリティを表現できる油そば。食べ手にとっても、店によって異なる味が楽しめるという点は魅力的に映るようで、最近では、各店舗の油そばを重点的に食べ歩くコアなマニアも増えてきた。
他方、創作の自由度が高いという特性は、味に難がある粗悪品を生み出す素地ともなり得る。そんな現状に警鐘を鳴らすべく、創成期の油そばの味を再現しようと試みる店舗が徐々に増加の兆しを見せている。その代表格が、田無の『油そば5坪』だ。
油そば発祥の地である武蔵野に店舗を構え、正統派の油そばを実直に提供。甘じょっぱいタレは、素朴ながらも大樹の幹のように骨太。北の大地・盛岡から直送される中野製麺製の極太麺も、タレに拮抗するだけの力強さを持ち合わせている。
今年の首都圏ラーメンシーンにおける最大のブームが煮干しを用いたラーメンであることに、異論を唱える人は少ないだろう。
煮干しは、他の素材では表現することが難しい落ち着いたうま味を表現できる点と、日本料理に通じる「和」の興趣を演出できる点において他の素材に勝り、ついには、「ニボラー」という愛称さえ登場するほどの人気を獲得するに至った。
そんな人気爆発中の煮干しラーメンを手掛ける店舗の中でも、板橋の『一剣』は、徹底的に食べ手に寄り添った味を提供している点において、その他大勢とは一線を画する。
ヒラコ、セグロなど、数種類の煮干しを時季によって使い分け、味に更なる膨らみを持たせるため、アジ、サバなどの魚介も投入したスープは、煮干しの苦味を程良くフィーチャーしながらも、動物系素材の介添えも相まって、食べ手を選ばない絶妙な着地点。下味がほんのりと沁み込んだ煮玉子も必食だ。
随所に昭和レトロの残滓を漂わせる下北沢は、身近で庶民的な雰囲気が、若者に人気の街。そんな下北沢の街並みに溶け込むように佇むのが、こちらの『中華そばこてつ』だ。
メニューは、「中華そば」「塩ラーメン」「つけ麺」の3種類と、そのバリエーション。中でも私が特におススメしたいのは、「中華そば」にワンタンをトッピングした「ワンタン麺」。
親鶏のガラと豚ガラをじっくりと炊き込んだ動物系のダシに、数種類の節と煮干しを約1対1の割合で投入した魚介系ダシを合わせたスープは、こいくち醤油を巧みに用いた醤油ダレの香りの輪郭を、より一層鮮やかに彩る役割をつかさどる。
麺も、八王子ラーメン提供店などに卸している田村製麺のものを、わざわざ取り寄せるこだわりよう。至高の味を求めて妥協を許さない店主の姿勢に、限りない伸びしろを感じる。
店主は、『麺屋武蔵』など、複数の実力店で修業を重ねたすご腕。そんな店主の腕の確かさも相まって、同店は、近年、都内を中心に怒涛の勢いで増えている担々麺専門店の中でも、抜きん出た存在感を放っている。
「担担麺」、「汁無し担担麺」などの定番メニューも提供するが、私が強くおススメしたいのが、夜の部の限定メニューである「立石担担麺」。下町立石が誇るモツ煮込みを大量に担々麺に搭載する、垂涎ものの1杯だ。
芝麻醤、甜麺醤、肉味噌など、担々麺の味を決定づけるパーツは、すべて自家製。スパイスの香りを活かし切るため、営業前に毎日山椒を挽くなど、手間暇を惜しまない姿勢には頭が下がる。
その真摯な味づくりは、スープにも反映される。丸鶏と豚骨をベースとしたコク深いスープは、日によって、鶏の部位を変えるなど、「妥協」の二文字が入り込む余地はない。
本年4月に、都内屈指のラーメン激戦区である荻窪にオープン。味噌ラーメンの人気店『麺処花道』の2号店であるこちらも、提供メニューの主力は味噌ラーメンだ。
札幌の名門製麺所である西山製麺に特注した熟成縮れ麺を使用。明快に表現された味噌のうま味に、鶏と豚のコクが折り重なるスープは、1号店とは構成を変え、豚の比重を高めることで、舌上でうま味が弧を描く、まろやかな味わいに仕上がっている。
特筆すべきは、スープの上に掛かった生姜餡。色彩的に絶妙なグラデーションを構成するとともに、ショウガの涼やかな香りがスープに溶け出すことによる風味の移ろいを、明確に知覚することができる。
一般的に、ベースとなる味噌の風味の強さから、アレンジを施すことが難しいとされる味噌ラーメンにもたらされたニューギミック。その発想力には、ただ感服するほかない。
本年3月にオープンした直後から、提供するラーメンのクオリティの高さに定評があった同店だが、完璧主義を貫く店主の更なる創意工夫により、その味はさらに向上。今では都内屈指の実力店として認知されるまでに至った。
寸胴に7㎏もの鶏ガラを投入し、鶏の滋養味を搾り取ったスープは、口の中で鶏が駆け回っているような感覚を覚えるほど。そのスープに、尖りを丁寧に取り除いた生姜油とすりおろし生姜を重ね合わせる。
生姜と鶏のバランスを綿密に調整し、滋味深い鶏のコク、涼やかな生姜の香り、力強い塩ダレの甘みを一体化させる。鶏、生姜、塩ダレの三者が紡ぎ出す味わいは、唯一無二。レンゲを持つ手を動かし続けるしかない惹きの強さを持ち合わせる。
「ラーメンは大衆食。ありきたりの素材で、どこまで良いものが作れるか。それが腕の見せどころ」
そんな店主の信条が偽りではないことを思い知らされる、極上の1杯だ。
店主は、都内の複数の人気店で修業を重ね、本年3月、念願だった一国一城の主となるに至った。屋号は、『ほっこり中華そばもつけ』。
「もつけ」とは、津軽弁で「お調子者」という意味合いを有する言葉だが、繰り出される1杯に込められた店主の思いは、屋号とは裏腹。真剣そのものだ。
鶏ガラ、節、昆布などをじっくりと丁寧に炊き上げたスープは、特に、昆布のうま味の捌き方に優れ、数多くのラーメンを味わってきたマニアすら唸らせる渾身の出来映えに仕上がっている。「スープを自分で作るのであれば、麺も自分で用意するのが当然」と、北海道産小麦を使用した薫り高い自家製麺を使用。
素材の銘柄にはこだわらず、「ありきたりの素材で、実直に上質なラーメンを提供していきたい」と店主。日々発生する長蛇の列が、店主の仕事ぶりの正しさを雄弁に証明している。
同店が店舗を構えるのは、ラーメン店のみならず、星の数ほどの飲食店が立ち並ぶ銀座の路地裏。小料理屋のような外観には清潔感があり、ラーメン店にあまり馴染みのない方でも気兼ねなく入店できそうだ。
「塩そば白」、「醤油そば黒」などの定番メニューも提供するが、今回、ご紹介するのは、筆頭メニューである「濃厚酒粕そば」。
鶏をはじめとする動物系素材を駆使して仕上げたスープに、ラーメンの素材としては珍しい「酒粕」を織り込んだ薫り豊かな1杯。スープを啜る度に、酒粕のフルーティかつ芳醇な薫りが、そよ風のように優しく鼻腔を駆け抜ける。
北海道産などの国産小麦を使用した中太ストレート麺は、断面が真円に近い独特の形状とザックリとした硬質な食感が印象的。うま味豊かなスープをしっかりと受け止め、寸分の取りこぼしもなく口元へと運び込んでくれる頼もしい相棒だ。
※この記事は2016年8月末時点での情報です
通称「ラーメン官僚」。ラーメン食べ歩き歴20年以上、実食杯数は11,000杯以上に及ぶ。直近の数年間は、毎年700杯~800杯のラーメンをコンスタントに実食。2016年現在、日本でラーメンシーンの「今」を最もよく知る人物。