「希望の党」代表の小池百合子都知事は9月29日の記者会見で、安保法や憲法改正などで政策が一致しない公認希望者について「(リベラル派は)排除いたします」と明言した。
「公認希望者は民進から離党を」「政策不一致なら公認はしない」――。設立間もない保守政党「希望の党」は、かつて政権を担った野党第1党を、瞬く間に事実上解党へと追い込んだ。
"踏み絵"を迫られ、出馬のキャスティングボードを小池知事側に完全に握られた民進党。特に「護憲」などを掲げてきたリベラル派の間には動揺が広がっている。
■阿部知子氏「一緒にやりたい」⇒「新しい独裁者はいらない」
民進前職で社民党出身の阿部知子氏(神奈川12区)は、憲法9条の堅持や安保法反対を掲げている。
阿部氏は29日、希望の党への事実上の「合流」について、「政権交代につなげるために何をすべきかの(動きの)結果」と評価。「原発ゼロ」を掲げたことを歓迎し、「ぜひ一緒にやりたいと思う」と述べていた。加えて、「私もリアリストだから」と合流への思いもにじませていた。
ところが、小池氏がリベラル派の「排除」を打ち出すと、その評価は一変した。
「(希望の党が)イデオロギーで選別するなら希望の党には参加しない」
阿部氏は30日にこう述べ、街頭演説でも、阿部氏は小池知事について「安倍(晋三)首相に代わる新しい独裁者はいらない」と批判した。
朝日新聞デジタルによると、阿部氏は枝野幸男氏ら、同党のリベラル派議員らと「より多くの仲間が戦える枠をつくる」ための協議を始めたとし、新党結成の可能性も示唆した。
産経ニュースによると、阿部氏は地元支持者の意見を聞いており「決断は週明けになる見通し」だという。
■社民党出身の辻元清美氏は...
かつて社民党で土井たか子氏の薫陶を受けた「護憲」派の代表的存在、元国交副大臣の辻元清美氏(大阪10区)の去就も注目されている。
28日の両院議員総会の直後、辻元氏は報道陣に囲まれるも、「希望の党」に公認申請をするか否かを明言せず、党本部を去った。
朝日新聞デジタルは陣営幹部の話として「辻元氏は28日夜に大阪に戻り、29日も大阪府内で関係者らと接触している」という。
陣営幹部は「無所属で闘うのか、希望から出るのか、本人から伝えられていないので分からない。ただ、期限があるので一両日中に態度を決めないといけないと思う」と話している。
ただ、同じ選挙区には、維新前職の松浪健太氏が立候補を予定。「希望の党」と日本維新の会の間で候補者調整が進んでおり、辻元氏が選挙区で公認が得られるかは不透明だ。
30日、辻元氏は党本部前で報道陣の取材に応じ、「私は、リベラルの力を信じている。ですから私は、(希望の党には)行きません」と、「希望の党」に参加しない意向を明言。無所属で立候補する意向を明かした。
■「ミスター年金」長妻昭氏は...
民主党政権で厚労相を務めた「ミスター年金」こと長妻昭氏(東京7区)はどう動くのか。
長妻氏は、安保問題では集団的自衛権に反対し、「あくまで個別的自衛権の範囲内で法整備を急ぐ」との立場で、集団的自衛権を限定的に認める「安保法」を容認する「希望の党」とは、スタンスが異なる。
28日、民進党は次期衆院選で公認候補を出さないことを決めている。ところが、地元で30日の朝刊に折り込まれていた長妻氏の広報チラシには、「民進党」のロゴが入っていた。
長妻氏も、どのような立場で選挙に臨むのか固まっていないのだろう。チラシに書かれたメッセージの最後には、こう書かれていた。
私は闘い続けます。
闘う相手は、誰になるのだろうか。
■逢坂誠二氏、無所属で立候補の方針
足場が固まらない候補予定者がいる一方で、逢坂誠二氏(北海道8区)はいち早く無所属での出馬を決めた。今国会で成立した「共謀罪」の趣旨を含む「改正組織的犯罪処罰法」を国会審議で激しく非難した逢坂氏。北海道新聞によると29日、「希望の党とはどうしても合わない。できれば無所属でやりたい」と述べた。
逢坂氏は30日、自身のTwitterで動画配信サービス「ペリスコープ」を通じて、「あまり変なことに惑わされないで、自分の思いを伝えていく」と語った。
■そして、リベラル派の代表的人物の「あの人」は...
先の民進党代表選で、前原誠司代表(京都2区)と一騎打ちで争ったリベラル派の代表的存在、枝野幸男氏はどう動くのか。
共同通信は関係者の話として、枝野氏が「無所属で出馬する方向で検討に入った」「考え方の近い前議員らとの新党結成も視野に入れている」と報じている。
枝野氏本人は、自身のTwitterで「地元の地方議員の皆さんに経緯を報告し、自分の考え方を伝えて了解を得た」としつつ、「考え方の中身と具体的対応については、今後、状況に応じてお伝えします」と述べるに留めている。
「希望」か、無所属か、新党か、それとも出馬見送りか――。
目下、民進党所属の候補予定者には、離党届と「希望の党」への公認申請用紙が党本部から配られ、各候補者は決断を迫られているという。その提出期限は10月1日。考えている時間は、もうない。
「排除」されるリベラル派が、一つの旗印のもと再結集を図ることはできるのだろうか。
【UPDATE】2017/09/30 19:05
辻元清美氏のコメントを追記しました。