精神科医のボードゲーム日記

海外ボドゲデザイナーへのインタビュー記事を翻訳

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海外のオンラインボードゲーム・マガジン「ボードゲーミング・ライフ」から、
ライナー・クニツィアのバトルラインについてのインタビュー記事
の全訳(前編)
全2回を予定しており、後半は1週間後アップ予定

【訳した経緯】
「バトルライン」は、プレイされている方も多くおられると思いますが、人気のある2人用ボードゲームです。
僕は「バトルライン」と「カルカソンヌ」で一気にボードゲームにハマった口なので、大変思い入れがあるゲームです。
他の「アグリコラ」や「カタン」を知ると、「ああ、バトルラインは底の浅いゲームだな」と感じて、他の重ゲーを好んでやるようになり、1,2年経ったんですが、最近再びプレイする機会がありました。
ある程度一通りのボドゲになじんだ後に再び真剣に向き合うと、今まで気づかなかった面白さ、奥の深さを感じました。

・シンプルさ(インストのしやすさ)
・プレイ時間15~30分という短さ
・運と戦略の程良いバランス
・手が完成したときの気持ちよさ
・頭をかなり使うが、プレイ後の疲労が少ない
・2人ゲーム特有のギスギスや後腐れもない

「これは本当によく出来たゲームだ、稀有なものだ」と感じていたところ、作者のインタビュー記事を見つけたので、今回訳しました。

「バトルライン」のルールや実際のプレイの動きは「たっくんのボードゲーム日記」の解説記事がたいへん分かりやすいです。

※適宜意訳・改変しています(ご意見・ご指摘はコメント欄まで)
転載許可申請中


以下原文
ーーーーーーーーーーー


Mark.D (インタビュアー。記事作成者。以下M):
イメージ 3

バトルラインは私にとって特別です。
というのも、私は元々ルールブックが100Pもあるものや、ハードコアな戦争ゲームを好むような人間だから。それと比べて、15分で終わり、ルールも簡単なバトルラインはあまりに軽い。
しかし、私はバトルラインのメカニックスが大変気に入っています。少し大雑把なたとえですが、バトルラインは9手を同時進行で行うポーカーだと捉えています。
バトルラインははじめて(出来心で)買ってしまったカードゲームで、また初めてやったカードゲームでもあります。そして、覚悟して聞いてほしいんですが、妻が一緒にやりたがってくれた初めてのゲームでもあるのです!
フィルム包装されたままの予備のバトルラインも持っています。ここまでハマったゲームは「ヴィクトリー・ゲーム社の「コリアン・ウォー*」以来です。(*訳注:朝鮮戦争をモチーフにした2人用ボードゲーム。邦訳は恐らく未発売)
シンプルなルールとわかりやすいコンポーネントにもかかわらず、バトルラインというゲームはかなり深く、そして自由度が高いです。ピンチの際に投入される「ワイルドカード」の存在も大きいわけですが。(詳しくは私のバトルラインのレビュー参照)
私は、ゲームデザイナーの頭脳からは貴重な洞察が盗めると常々感じています。インタビューを通じてちょっとした豆知識だったり、奇抜なプレイングを知る機会があったり、ゲームシステムの、車でいうエンジン部分に手を入れたことがないと簡単には気づけないような、コンポーネント同士の思わぬ相互作用だったり。
こういったことを考えながら、バトルラインをデザインしたライナー・クニツィアと、バトルラインの戦略について話し合うこととなりました。場所は海の見えるアパートでした。

ライナー・クニツィア(以下RK):
ゲームデザイナーがそのゲームの最良の戦術家」ということはありえないよ。今回いろいろコメントはするけれど、別に私の発言が、このゲームの戦術・戦略において最も権威がある、ということにはならないので、注意してください。世の中には2種類の人間がいる。ゲームをデザインする人間、としてそれをマスターしようとする人間。私は前者だ。


M:
ライナーは「ターンの最初にしかフラッグを倒してはならない」という上級ルールが好きらしい。このルールだと、フラッグを倒された側のプレイヤーにカードを出し返す一手分の猶予が与えられます。たいていその一手を使って戦術カードを出し返して、敵のフラッグ倒しを無効にするのだけれど。多くのプレイヤーはこのルールを採用しているでしょう。というのも、ライナーが言っているように「このルールだとバランスの取れた優れたゲームになる」から。
実は、バトルラインでの大局的な戦略というのはあまりない。ゲームの前に大まかな戦略を取ろうとすることはできるものの(例:アレクサンダーカードを取るために、戦術デッキから多めに引くようにするぞ、とか)、 このゲームは全てが戦略ではなく戦術です。いかにその時々で正確に反応しゲームを展開させられるかが重要になってくる。

※訳注:
戦略strategy戦術tacticsの細かい意味の違いを説明する必要がある。
戦略…全体で戦うための方策。ゲーム全体を、時間的にも空間的にも広く見渡すイメージ。大局的な考え方
戦術…個々で戦うための方策。特定の時間・状況でどう戦うか。局所戦的な考え方
(訳注はこちらを参考にして作成)

とはいえ戦術レベルではいくつか考えるべきキーポイントはあります。バトルラインで勝つには、フラッグを3本連続させて奪う(3連フラッグ)か、合計5本のフラッグを取る必要があります。
3連フラッグ狙いで、左右の両端に良カードを集中させて、左右の片方だけでも3連を作ろうする戦術があります。逆にチェスの考え方が染みついたプレイヤーであれば(私もそうですが)、ボードの中央を支配することをより重視する者もいます。 
ライナーは中央も端も取り立てて狙わず、むしろ最も効率良くプレッシャーを与えられるあるフラッグに焦点を絞るのです。

RK:
相手が3連フラッグを完成させる能力があるプレイヤーなら、両端は間違いなくあまり重要ではない。私の狙いは別にあるから。もしフラッグに1~9の番号を振るとすると、
イメージ 1

明らかに重要なのはフラッグ#3とフラッグ#7だ。
 
もし#3#7が取れれば、絶対に相手に両端の3本ラインを完成させられることはない。この場合だと、相手が完成させられるのは#4#5#6だけだ。
こういう理由で私は#3#7に特に注意している。
もちろんいつも両方を取れるわけではないよ。もし#3を取られたら#2#5を、#7を取られたら#5#8を狙いに行く。それらを取れれば相手の3連フラッグを阻止できるから。ただ、こういった後手に回った防ぎ方では拙速で、敵が3連を完成させる抜け道を与えかねないが。
それと、もし敵が中央に焦点を絞ってきた場合、中央のすぐ外側に私は集中する。
中央の取り合いをうまく回避して端で3連フラッグを作れる動きというのは、極めて強力だと考えるからだ。
 

M:
戦術デッキからの引きは、重視されることも軽視されることもあります。
ライナーの個人的な好みとしては、戦術デッキからたくさん引くのはあまり好きでないようです。


RK: 戦術デッキから何枚も引くことはしない。たいてい手札には1枚か、多くても2枚。それよりは部隊カードに集中したいから。
とはいえ私も普通のプレイヤーだから、もし絶望的な状況であれば負けを避けるために戦術デッキから引くこともする。


M:戦術カードはあまり好まないといったライナーだが、ゲームの後半で勝利が厳しいものになってくれば話は別で、戦術カードを引くようになります。とはいっても、どのカードがすでに出ているかによって大きく左右するようですが。


RK:
イメージ 2

アレクサンダーとダレイオス。2人のリーダーカードはワイルドカード(ジョーカー)だ。とても使いやすく強力で、戦術デッキの中でも一番の狙い目だ。もしこれらがすでに場に出ているようなら、他の特殊カード*をわざわざ求めて戦術デッキを引く、ということはあまりしない。(*脱走、霧、援軍騎兵など)
私のプレイングを平たく言えば、バトルラインの付属物である戦術デッキは基本的には避け、このゲームのコアの部隊デッキに集中している。
シンプルであること。私はそれを好む。シンプルなルール。ルールが簡素であればあるほど、私にとってゲームは楽しいものになる。私にとっては、戦術カードのないバトルラインは、純粋なゲームなのだ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【編集後記】
局所的な戦術/大局的な戦略の話が、個人的に面白かったです。
優れたボードゲームは戦術面/戦略面が程よいバランスで混じっていますが、比率はゲームによって結構バラバラなように思います。

対人インタラクションの要素(多人数での駆け引き、心理戦、裏切り、協力)が大きいほど戦術寄りで、個人的な要素が強いほど戦略寄りでしょう。
「カタン」「アグリコラ」はきわめて戦術的です。ゲームスタート時に立てた大局的な方針に沿って動けることはめったにありません。毎ラウンド、他プレイヤーの意図や全体の盤面を見ながら、方針を修正していく必要があります。

逆に「ドミニオン」などではまったく逆で、最初の計画が全てです。
・初手の3金/4金で何を買うか
・次のターンでどうするか
・最終的にどういう組成のデッキを目指すのか
・何ターンくらいで属州が買える計算か
これらは他プレイヤーの動きの影響を受けないため、理論上はゲーム開始前に測ることができます。逆に、最初に決めた方針を相手の出方を見て、場当たり的にころころ変えるのは弱者の打ち方です。
「ドミニオン」では高い見通し能力を持ち、運が良いプレイヤーが基本的に勝ちます。

余談ですが、訳者は戦術寄りのゲームが好きです。元々仲の良い人同士での読み合い、協力、裏切りはすごく楽しい。もちろん戦略要素100%の「ドミニオン」も素晴らしいゲームなのですが、やっていると、なんというか徒競走をやっているような感覚に陥ります。「これ、周りのプレイヤーとやってる意味あるか?」「プレイ中の会話がなくないか?」と、つい考えてしまいます。孤独なゲームだと思います。

こうした感覚は、恐らく自分が初めてハマったゲーム(ルーツ)がポケモンのシングル対戦であることが影響していると考えます。「相手依存のメタ読みこそがゲームの一番面白いところだ」という基底的な感覚があります。逆に僕と違って多くのTCG出身の人は「ドミニオン」を好む印象です。

余談の極みですが、「相手視点からは何が見えていて、何を考え何を選ぶか」を考えるのが好きなことと、仕事に精神科を選んだこと(医師は好きな科を専攻できる)も恐らく強い相関があります。

あと、この手の「自分はどういうゲームが好きなのか」的な話は、書くのも聞くのも好きですね。本当に楽しい。最近読んだものでは部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女」の、そのゲームはなぜ面白いのか?を考える(長文)が大変面白かったです。


余談が過ぎました。次週の後編では
・クニツィアの好きなゲーム
・バトルラインの拡張版は出さないのか
オンラインアプリについてどう考えているか
などが語られます。乞うご期待!

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