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【Jerry Chu】シミュレーションは遊び手の想像力を刺激する
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印刷2017/09/30 12:00

連載

【Jerry Chu】シミュレーションは遊び手の想像力を刺激する

Jerry Chu /  香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー

Jerry Chu「ゲームを知る掘る語る」

Twitter:@akemi_cyan


シミュレーションは遊び手の想像力を刺激する


 ビデオゲームはシミュレーションである。

 ジャンプしたら身体が空中に上がって落ちる。壁にぶつかったら止まる。球が平面に当たると跳ね返る。棘に触れたら傷つく。戦闘を繰り返すと経験値が溜まり,能力値が上がる。
 ゲームは現実世界の現象をシミュレートすることによって成り立っている。戦争や街づくりといった複雑なシステムを再現するシミュレーションゲームもある。

 もちろん,ゲームは現実世界を忠実にシミュレートしているわけではない。「テトリス」のような抽象的なゲームは,そもそも現実世界をシミュレートしようとしていない。リアルなオープンワールドゲームでも,ゲーム機の計算力に制限があり,シミュレーションの精度には限りがある。

 とはいえ,ゲームを面白くするために「嘘」をつけるのはゲームの魅力だ。現実の人間は二段ジャンプができない。空中で方向転換もできない。空中で銃を撃つことで滞空することもできない。
 だが,アクションゲームを面白くするために,デザイナーは物理法則を曲げることができる。現実世界の法則にアレンジを加えることで,新しいゲームプレイが生まれるというわけだ。


「掛け算の遊び」を実現した

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」


 前回の記事で取り上げたとおり,「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」Nintendo Switch / Wii U 以下,「BotW」)は最初からすべてのアイテムを開放することによって,自由度の高いゲームプレイを実現した。
 だが,「BotW」の自由度はそれだけではない。用意された攻略法を辿るのではなく,物理や化学を駆使して,自分なりの解法でパズルを乗り越えられるのは,「BotW」の大きな魅力だ。

 「BotW」の冒頭の出来事だった。筆者は川を渡ろうとするが,橋が見当たらない。リンクは川を泳げるが,限られたスタミナでは川を渡り切ることが無理だった。
 「スタミナを鍛えてから,ここに戻ろう」と考えて踵を返そうとしたときに,あることを思い出した。その直前,「アイスメイカー」というアイテムを手に入れていたのだ。アイスメイカーは水面に氷を作れる。同時に作り出せる氷は3個までだが,氷はつかんで登れるし,足場になる。

 川の水面に氷を作って,その上に登る。氷の上に立ち,目の前に新しい氷を作り出して,それに飛び移る。前の氷を壊して,新しい氷を作る。これを繰り返せば,川を渡れそうだ。

氷を作る→飛び移る→また氷を作る……と繰り返すことで,水面歩行が可能になる
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 「氷を作れば川を渡れる」とは,ゲームが与えたヒントではない。そもそも「川を渡らなければいかない」というわけでもなかった。「水面に氷を作れる」「川には水が流れている」という要素を頭の中で組み合わせることで,「氷を作れば川を渡れる」という発見ができたのだ。

 磁力で金属の箱を積み上げて高所に登る。磁力で持ち上げた箱で高所にある宝箱を落とす。木の矢と棒に火をつけて,火矢と松明を作る。果物に火を近づけて,料理を作る。現実世界の「常識」とゲームならではの「ルール」を理解すれば,予期せぬ発見が待っている。

磁力で金属を操ることで,高所にある宝箱を落とせる
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 「BotW」ではオブジェクト同士が互いに影響し合うことで,さまざまな遊びを実現している。この仕組みを「BotW」の開発陣は,「掛け算の遊び」と称した。
 GDC 2017の講演において,テクニカルディレクターを務めた堂田卓宏氏は「世界を一貫した物理法則でつなげていくと,試してみたくなることがどんどん増えていくのです」と語った。鉄板を磁力で持ち上げたら,敵の頭上で落としたくなる。川に浮かんだ丸太を見ると,それに乗って流れてみたくなる。
 「簡単なことの組み合わせで複雑なことが起こる世界。遊んでいて試してみたいことが,次々と思い浮かんでくるワクワク感。それこそが我々の目指すゲームではないかと考えました。ここに『掛け算の遊び』の片鱗を感じました」と堂田氏は解説する。

Breaking Conventions with The Legend of Zelda: Breath of the Wild

Clik to Play
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関連記事:[GDC 2017]開発者が語る「ゼルダの伝説 BotW」のとてつもなく自由なゲームプレイはこうして実現した


 「BotW」の世界のあらゆるオブジェクトは,物理と化学の法則によってつながっている。オブジェクト同士が影響し合うことで,多彩な遊びが可能になる。
 「火を点けて草を燃やす」「オブジェクトをつかんで登る」といったことは,ほかのゲームでもできるが,「燃やした草から発生する上昇気流に乗って空を飛ぶ」「勢いをつけたオブジェクトをつかんで遠くに飛ぶ」といった複数のルールを利用したテクニックは「BotW」特有の楽しさだろう。
 物理と化学のシミュレーションによって,「BotW」はプレイヤーの好奇心をそそり,想像力をかき立てる。

火は棘を燃やしたり,果物を焼いたりと,さまざまま使いみちがある
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド


簡単なことから複雑な事象が生まれる


 「簡単なことの組み合わせで複雑なことが起こる」という堂田氏の言葉を聞いて,Commodore 64(コモドール64)のことを思い出した。

 Commodore 64とは1980年代のパソコンであり,ユーザーは青いコンソールにコマンドを打ち込んでさまざまな機能を利用する。そのなかに面白いコマンドがある。

10 PRINT CHR$(205.5+RND(1));:GOTO 10

 一見,複雑そうだが,コンソールに「/」と「\」をランダムに出力し続けるだけのたわいもないコマンドだ。いざ実行してみると,「/」と「\」がつながって,まるで迷宮のような複雑な図形ができあがる。

Commodore 64に「/」と「\」をランダムに出力させると迷宮のような図形ができる(VICE: C64 emulatorで実行)
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

「|」と「ー」をランダム出力するとこうなる(VICE: C64 emulatorで実行)
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 一個一個の符号は意味を持たないが,数多の符号が並ぶと複雑なパターンになる。単純なルールから予想外の結果が生み出されるという例だ。

 「複数のオブジェクトに単純なルールが働きかけることで予想外の結果が生まれる」現象は,「創発(emergence)」と呼ばれる。
 細胞がつながれば生物になる。生物が集まれば生態系に発展する。人間が群れを成せば社会や経済が築かれる。複数の個体を集めることで,個体の特徴からは予測できないようなシステムが形成されるという現象だ。

 ソフトウェアにおける創発の例として,「Conway's Game of Life」(日本語ではライフゲームと呼ばれる)が最も有名ではないだろうか。数学学者であるJohn Horton Conway氏が1970年に考案した,生態系をシミュレートするゲームだ。

 2次元のグリッドに生物が点在する。生物は移動しないが,以下の4つのルールを元に誕生と死亡をシミュレートするという内容だ。

  • 隣接する生物が1体以下ならば過疎死する
  • 隣接する生物が2体あるい3体ならば,次の世代に生き残る
  • 隣接する生物が4体以上ならば過密死する
  • 空白のスペースに隣接する生物が3体いれば,新たな生物が誕生する

 ルール自体は単純だが,生物の初期配置によって,驚くような動きを見せてくれる。生物の群れが一定のターン数を経て元の配置に戻り,誕生と死亡を永久に繰り返す。一定の方向に新しい生物が生まれ続けて,生物の群れがだんだん遷移する。言葉ではどうにも形容し難いが,「Conway's Game of Life」「ライフゲーム」で検索すれば,ムービーや実際にゲームを遊べるサイトが見つかるので,ぜひチェックしてほしい。

「Gosper glider gun」と呼ばれる,「Conway's Game of Life」のパターン。黒いセルは生物,白いセルはスペースを表す。この初期パターンでゲームを実行すると,生物が無限に増殖する
By Bryan.burgers (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド


「創発」を中心に据えた「没入型シミュレーション」


 「創発」をゲームに当てはめた概念として,「創発的ゲームプレイ(emergent gameplay)」というものがある。クリエイターが予期しなかった方法で,ゲームがプレイされることを指す言葉だ。

 ゲームのルールは開発者によって実装されるものだが,開発者にとって予想外の結果が生まれることがある。
 例えば,爆弾を壁に貼り付けることで階段を作り,本来なら越えられない壁を乗り越える。爆風の当たり判定が扉をすり抜けて,向こう側の敵を倒してしまう。こうしたゲームデザイナーの意図から逸脱した攻略法は,欧米のゲームクリエイターの間では「創発的ゲームプレイ」と称される。日本語に言い換えるなら「裏ワザ」だろうか。

 「創発的ゲームプレイ」を中心に据えたゲームジャンルとして,「没入型シミュレーション(immersive sim)」が挙げられる。「System Shock」シリーズや「Deus Ex」シリーズ,「Dishonored」シリーズをはじめとする,プレイヤーの自由度と没入感を重視したファーストパーソンゲームのことだ。

 「System Shock」と「Deus Ex」を手がけたゲームクリエイター,Warren Spector氏は「没入型シミュレーション」についてこう語った。
 「ただ木偶を操っているのではなく,まるで別の世界に没入しているように感じさせる。スクリプトではなく,ルールと物理とAIを応用することでリアリティを高め,プレイヤーに『自分はゲームをプレイしている』ということを忘れさせる」「こうすることで,プレイヤーはデザイナーの意図を汲み取って用意された攻略方法を見つけ出すのではなく,自分の好きな解法で難関を乗り越えられる」(出典元

 「Deus Ex」シリーズの世界には物理とAIが組み込まれており,同じ難関でも複数の解法がある。
 例えば,「Deus Ex: Human Revolution」の序盤,浸水した廊下に電気が流れている。そのまま渡ろうとすると感電して死ぬので,別のルートを探すか,キャラクターを強化するしかない。
 だが,箱を2つ持ち込めば,交互に置いていくことで水に触れずに廊下を渡れる。

箱の上に乗って,電気が流れる水面を渡る。「BotW」においてアイスメイカーを使って川を渡るのと同じ理屈だ(「Deus Ex: Human Revolution」)
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 戦闘においても,さまざまな攻略法がある。正面突破を挑むか,ステルス(身を隠して)でやり過ごすか,ロボットをハッキングして同士討ちさせるか,隠し通路を探して迂回するか。ステージをよく観察することで,思いもよらない突破口が見つかる。

Dishonored - Creative Kills

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「Dishonored」シリーズの主人公は,魔法を使えるアサシンだ。ネズミに憑依して,爆弾を敵の居場所まで運ぶ。罠をハッキングした後,念動力で敵を罠に嵌める。敵が銃を撃った瞬間に時間を止め,敵に憑依して弾道の先に立たせる。複数の能力を組み合わせることで,独自の戦法を編み出せる

 今年発売された「Prey」も「没入型シミュレーション」の流れを汲んでいる。
 進路を阻む障害物に対して,腕力を強化して障害物を取り除くか,爆弾で障害物を消すのか,小さなオブジェクトに擬態して隙間をすり抜けるか,ほかのオブジェクトを投げつけて障害物を動かすか。デザイナーにやらされている感覚はなく,プレイヤーがいろいろなアイデアを自然に思いつける。

オブジェクトを投げつけて障害物を動かし,隙間を作る(「Prey」)
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 一貫したルールを持って世界をシミュレートする。プレイヤーはそのルールの活用して,自分なりの方法でゲームを進行する。デザイナーの存在を感じさせないことで,没入感と自由感をプレイヤーに与える。
 これが「没入型シミュレーション」の魅力だ。


「BotW」は「没入型シミュレーション」の進化形


 「BotW」の開発陣が「Deus Ex」シリーズや「Dishonored」シリーズを参考にしているかは知らないが,本作は間違いなく「没入型シミュレーション」の部類に入ると思う。

箱を積み上げて階段を作るのは,「Deus Ex」シリーズを思わせる体験だった(「Deus Ex: Human Revolution」「BotW」)
ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド ゼルダ | ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 簡単なルールによって複雑なゲームプレイを生み出す。「BotW」の「掛け算の遊び」は,まさに「創発的ゲームプレイ」だ。前回の記事でも触れたとおり,「BotW」はデザイナーによるゲートを最小限にして,プレイヤーに好きな順番で世界を探索させる。デザイナーの見えざる手を感じさせず,仮想の世界に没入している感覚を得る。
 創発的ゲームプレイを重視した高い自由度と,クリエイターの介在を最小限にすることで生まれる没入感。「BotW」は「没入型シミュレーション」の趣旨を十二分に体現している。

 「BotW」にはキャラクターと会話したり,濃厚な世界観に浸ったりする,RPGらしい楽しみが少ない。だが,それを補って余りあるのは,莫大なオブジェクトとルールだ。
 磁力で金属を持ち上げる。物体の時間を止めて勢いをつける。水面に氷を作る。ファンタジーならではの魔法とアイテムがプレイヤーの行動に幅を与える。

 さらに剛体力学のみならず,火や水,電気などの化学反応をもシミュレートしている。火は木の棒を燃やし,嵐の最中に金属の武器を持つと落雷で感電する。エレメントによる化学反応を再現することで,「BotW」はほかの「没入型シミュレーション」よりも奥深く,リアリティの高い世界を作り出した。

 かつて,「Dishonored」シリーズのディレクターであるHarvey Smith氏は,「より精密なシミュレーションをもって創発的ゲームプレイを促進することこそが,ゲームデザインの目指すべき未来である」と主張した。

「ゲームのシステムをより細かく分解することで,プレイヤーの表現の自由を高め,デザイナーの代わりにプレイヤーを主役とするゲーム体験を作り出せる。プレイヤーはデザイナーの意図に気を配ることなく,周りの環境と手元のツールを検討して自らの戦略を導き出してほしい。より深いシミュレーションを元にすれば,古いゲームジャンルは生まれ変わる。さらに新しいゲームの形態が生まれる」(出典元

 「BotW」はより深いシミュレーションを実現することで,「オープンワールドアクションRPG」のジャンルに変革をもたらした。まさにHarvey Smith氏が夢見た未来への大きな一歩だ。

■■Jerry Chu■■
香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー。中学の頃は「真・三國無双」や「デビルメイクライ」などをやり込み,最近は主に洋ゲーをプレイしている。なるべく商業論を避け,文化的な視点からゲームを論じていきたい。
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