登山者にとって不可欠な道標
山を歩くときは常に道標を意識していなければ、あっという間に迷子になってしまいます。
通常、ほとんどの登山口にある大きな案内板、これも道標であり、大まかなルートを把握しておくには最適なので、山を登る前に必ず見ておく必要があります。
そしてこれ以降も、山を歩いていればいろいろな道標が現れるはずです。
その道標は、木製であったり金属製であったりまちまちですが、「○○まで△km」という具合に目指すべき場所を表示してくれています。
もともとあった道標を、実際に歩いてみた上で誰かがより正確な情報に書き換えていたりするものもあったりします。
しかしこの「○○まで△km」という道標、疲れが出てきたときにこれを見ると、なぜか急に時間の経過が遅くなったような気がしてくることがあります。
また表示通りに到着できないときは落胆し、余計に疲れを感じてしまいます。
道標に書かれている時間はあくまで目安だということをしっかり認識する必要があります。
登山前に自分で立てた計画通りに進めたら良しとして、あまり道標の表示時間に惑わされないようにしてください。
計画を立てる際には山道の場合、1.5km進むのに1時間かかると想定し、計算をしておきましょう。
そして山の奥深くに入って行くと、木の枝や幹などに布やリボンが結ばれていたりしますが、これも道標の一種と言え、冬の登山ではこれを見落とすことはできません。
山の尾根や岩場などに出ると、ペンキなどで○や×などが書かれている場所があります。
このマークは必ずあるというわけではありませんが、見落としてコースアウトしたり滑落したりしないように注意が必要です。
また、登山の途中に目にするケルンと呼ばれる小石を積み上げた円錐形のオブジェがあります。
これは昔から登山道の道標として作られてきたものです。
一般的には登山道に沿って作ってあるので、道に迷ってしまったときに大変役に立つので覚えておいて下さいね。
しかしケルンの中には遭難現場に作られていたり、無意味に作られていることもあるので充分注意が必要です。
道標がたくさんある山ならいいのですが、あまり道標がない山を登るときは不安に思うこともあるでしょう。
ましてそれがソロ登山だったりすると不安も倍増します。
ソロ登山をしている方に、道標のない山道を歩くときはどうしているのか質問してみると、不安な場合はリボンを結ぶなど目印を残しながら進み、もし道を間違えていた場合はリボンをほどきながら引き返してくるのだそうです。
道を間違っていなかった場合は、そのリボンはそのままにしておくと、後の登山者にとって安心な道標となります。
また、分かれ道などで迷うときは、道に残った足跡を確認したり、道にクモの巣が張っていたりして明らかにしばらく人が通った形跡のない道は避けるなどするようです。
ソロ登山の場合、道に迷ったときに気軽に相談できる相手がいないので、自然をも道標として参考にする必要があります。
登山はともすれば命に関わるケースもあり得ますので、己を守るという意味でも身に付けておきたい技術ですね。
山の中で生きた情報を集める
登山中、山の中で出会った他の登山者たちからいろいろな情報を得ることができます。
ソロ登山であっても、登山仲間には山の中で出会えたりするものです。
登山を始める前には、ガイドブックや地形図、インターネットなどで山の情報をきちんと調べておくことは絶対に必要なことですが、ただ、それだけで充分な情報を得られたとは言えません。
土砂崩れなどの突発的な事故などの情報は、山の中で収集していくしかないからです。
ソロ登山の場合だけに限らず、山の中に入ってしまえば、その場で生きた最新の情報を集めていくことが大切になります。
まして、初めて挑む山の場合は、それだけ不安なことやわからないことも多いので、他の登山者から何でも教えてもらおうという意識がなければ厳しいでしょう。
恥ずかしくて他の登山者に話しかけられず、それが原因で遭難したり、事故に巻き込まれてしまったりすれば、大変なことになってしまいます。
それを防ぐためにも、次に説明することを参考に情報収集をするようにしてください。
市や町、地元の山岳会などが入山口に設置する登山相談所、ここでは登山者カードを記入する間に、最新の登山道の情報を収集することができます。
また、登山相談所には危険な場所をより詳しく明記した、独自の地図が置かれていたりするのでぜひ参考にしましょう。
もしも登山相談所がない場合は、入山口にある売店などで聞いてみてください。
売店にいる店員さんはその山に詳しいことも多く、非常に参考になるでしょう。
そして、登山をする上で最も大切な情報は、山の中で出会う他の登山者から得られることが多いものです。
自分がこれから向かおうとする道の最新情報を、持っているはずだからです。
迷いやすそうな道があるか、崩れそうな場所はあるか、橋が落ちている場所はあるかなど、これから歩く道の情報は、遠慮せず積極的に聞いてみましょう。
もしもこの先の道に危険な場所があると教えられたときは、その道をやめて他ルートから目指すも良し、その登山者が対処した方法を教えてもらうも良し、とにかく教えてもらっておいて損になることはありません。
ソロ登山をしている人は、なぜか他の登山者に会っても挨拶をするだけでさっさと行ってしまう人も少なくありませんが、立ち止まらなくても、すれ違うときに少し会話をする程度でも情報収集はできるものです。
自分が持っている情報が正確かどうかを確認するためにも、他の登山者との会話は大切です。
また山小屋の方から、最近の登山者は道を聞かない、と心配する声が上がっています。
ソロ登山をする人の中には、道がわからなくなっても人に聞かず、自分で見つけたいと思う人が少なくないようで、同じ道を行ったり来たりしている姿を見ることがあるようです。
見かねて声をかけると、そこでやっと道がわからないと答えるのだとか。
山小屋にいる人が一番その山のことを知っているので、無駄な体力を消耗する前にさっさとわからないことは尋ねてほしいという人は多いものです。
山小屋の方は、ガイドブックの間違いを指摘してくれたり、登山の際のペース配分の相談に乗ってくれたり、美味しい湧き水のある場所や帰りに寄ることができる温泉を教えてくれたり、とても有意義な情報を持っていることが多いものです。
もらった情報をすべて参考にする必要はありませんが、会話をしてみないことには情報を得ることはできません。
ソロ登山をより楽しく、より安全にするためにも、無意味な意地は捨てて、誰にでも話しかけるつもりで登山に臨みましょう。
登山中のことはしっかり記録しておこう
登山記録を残していくことは、危険を察知する能力を高めたり、ソロ登山の技術を向上させることにつながります。
どうしたらソロ登山が上手くなりますか?という質問に対し、登山記録を残していくこと、と答える人も少なくないでしょう。
登山記録をあとで読み返してみると、楽しい記憶だけでなく、忘れてしまっていた危険までも思い出し、次の登山に際に役立てることができるからです。
浮石を踏んでしまって転落しそうになったとか、落石があって怖かったとか、遭難しかけてしまったなどという情報を残しておけば、読み返すたびに思い出し、次の登山では注意することができるでしょう。
そういう危なかった体験の情報を蓄積していくことで、危険を事前に察知する能力が高まっていくはずです。
そういった記録を残していなければ、すっかり忘れ去ってしまい、次の登山でまた同じ過ちを犯すこともあるかもしれません。
頭の中の記憶は、覚えているつもりでもいつの間にか忘れてしまうものです。
身をもって体験した大切な情報は、きちんと記録に残しておきましょう。
登山中にメモを取る場合は、所要時間や道の状態、周りの様子、水が飲める場所、出会った植物や動物、天気などを記しておきましょう。
それだけでなく、自分の服装のことや、壊れそうな装備のことなども記録しておくと、次の登山までに準備や修理を忘れてしまった、などということを避けられるでしょう。
登山中のメモはあくまでメモとして、下山後にあらためてきれいな字でまとめ直す方がいいでしょう。
少し面倒かもしれませんが、記憶があるうちにまとめ直すことで、後で読み返したときに「字が汚くて何て書いてあるのかわからない」ということを防いだり、より情報が整理され記憶として定着させることができるでしょう。
自分が体験して得た生きた情報を蓄積していくことで、きっとガイドブックにも負けない登山記録となるはずです。
折角の体験をそのまま忘れてしまうのはとてももったいないことです。
面倒でも記録していきましょう。
どうしても字を書くのが面倒だという場合は、ICレコーダーに音声で残すという方法もあります。
歩みを止めることなく喋るだけで残せますし、中にはICレコーダーに残した音声をパソコンに取り込む際に自動的に文章にしてくれるものさえあります。
ぜひ一度、購入を検討してみてください。
登山記録では文章や音声だけでなく、写真も重要な情報となります。
カメラは時間を残す機能もあるので、場所ごとに写真を撮っておけば所要時間の記録となります。
また、道中にあった看板や説明書きなどを撮影しておけば、後でゆっくり読み返すことができます。
突然のシャッターチャンスを逃さないためにも、カメラは常に首からぶら下げておくのがおすすめです。
山の天気は天気予報ではなく、観天望気で見極める
山の天気は移ろいやすく、天気予報はあてにならないこともあります。
最近では天気予報の技術も発達し、リアルタイムでスマートフォンなどから局地的な天気の情報を得ることも簡単になってきましたが、昔はもちろんこうではありませんでした。
昔は登山の1週間ほど前からテレビやラジオの天気予報の情報を集めたり、新聞に掲載されている天気図によって気圧の動きを推測する方法が主流でした。
また他には、登山する山にある山小屋に問い合わせたり、登山の直前に天気予報を電話で聞くという方法を取る人もいました。
しかし天気予報は100%当たるものではありません。
天気予報が外れて突然の雨に見舞われた、という経験をしたことがある人も少なくないでしょう。
登山の場合も同じことで、雨は降らない予報だったので雨具の用意をしなかった、なんてことは言語道断で、反対に、雨予報だったので登山を中止したら実は晴れていたということもあったりします。
天気予報はあくまでも予報だということを念頭に置いて、登山の計画を立てましょう。
山で特に注意が必要なのは雷雲です。
天気予報の情報を鵜呑みにせず、雲や空の様子を見て判断することができるようにならなければなりません。
登山の際に必要になってくるのは「観天望気」というものです。
観天望気は天気予測の1種で、自然現象や動物の行動といった幾つかの事象から将来の天気を見極めていきます。
登山者だけでなく、漁師や船乗りにも必要な能力ですね。
正確な予測ができるようになるには時間がかかるものですが、数種類の雲を見分けることができればだいたいの予測は可能となるので、ぜひ覚えてみましょう。
これが起きたらその後、天気が崩れると言われているものをいくつかご紹介します。
・朝焼けが見られたら雨が降り、夕焼けが見られたら晴れる。
・レンズ雲が見られると風が強くなり、やがて雨が降る。
・太陽や月が笠をかぶると、やがて天気が悪くなる。
・飛行機雲が残っていると、やがて天気が悪くなる。
・山に雲がかかると、早いうちに雨が降る。
・遠くにあるはずの山が近くに見えると、雨が降る。
・沢の水音が近くに聞こえると雨が降る。
・星のまたたきが見られないと、天気が悪くなる。
・夜中に雨がやんでもまたすぐに降り出す。
・朝の気温が高いと雨が降る。
このような情報から天気を予想するためには、ある程度の経験が必要になってきます。
一朝一夕で手に入れられる能力ではないので、まだ自信がないうちは山小屋の方に聞いてみましょう。
長年山にいる人は、多くの経験から天気を予測する能力に長けているからです。
長年山にいると、普段から山の天気を記録し、数多くのデータを持っている場合が多いので、ずばりと当てることができます。
このような天気の予測ができるようになると、梅雨の晴れ間を狙えるようになったり、素晴らしい景色に遭遇できる可能性が高くなっていきます。
また、登山中に雨に遭遇してしまうことも少なくなり、より登山を楽しむことができるようになるでしょう。
天気を予測する能力をアップさせるには、興味を持つことが一番です。
普段から楽しんで天気の予測ができるようにしていきましょう。