「即脱原発」について、再生可能エネルギーの観点からエントリー を書いたところ、このブログやBLOGOS の方で多くのコメントを頂きました。本当に関心の高いテーマなんだなと思います。コメントいただいた方に感謝いたします。
「完全な脱原発は『北極星』のようなもの。その方向に向かって常に、着実に歩いていきたい。ただし、今すぐ飛びつけるわけではない。」というのが私の趣旨です。
そういう中、「現状の固定化で良いではないか。『北極星』みたいな遠い存在ではない。」というご指摘がありました。それも一つの見解だとは思います。
ただし、それにはまず、「現在、輸入超過になっている3兆円を超える化石燃料の追加負担をどうするか。」という問題があります。すぐに消し去ることが出来る金額ではありません。また、その分を再生可能エネルギーで代替しようとすれば、少なくとも「短期的には」巨額の投資と効率性の観点からの負担が生じます。そして、それはすべて利用者負担です。電気は誰もが使うものですから、ここでの「利用者」は「国民」とほぼ同義です。既に現在、九州電力を始めとする各電力会社が料金改定をせざるを得ない状況です(各電力会社はほぼ貯金が枯渇しており、料金上昇で賄わなくてはならない状況です。)。
また、すべての原子力発電所を廃炉にすれば、その廃炉費用を別途捻出しなくてはなりません。更には、これはBLOGOSでご指摘がありましたが、廃炉にするということは企業の会計上は「資産」から落ちてしまいます。多分、すべて廃炉となった瞬間に沖縄電力以外の電力会社は債務超過になってしまい破綻するでしょうから、すべて国有化した上で膨大な負担が出るということもあります。
ここで「短期的」と強調しました。中長期的な姿はどうなるかは分かりません。技術革新がとても進むかもしれませんし、その結果として非常に効率的なエネルギーの姿が見いだせるのかもしれません。そして、それが成長産業になるかもしれません。しかし、それの効果発現はすぐには出て来ません。少なくとも、経済学的には、楽観的に見て「中期」、恐らくは「長期」のタームで考えるべきものでしょう。
ここで押さえなくてはならないのは、「巨額の投資が必要になる」、「そして、その効果が非常に強力に発現して、現在のコスト差を賄えるようになるがいつかは現時点では明確には言えない。」ということです。となると、「即脱原発」は少なくとも「短期的」には非常にコスト上昇要因となることを否定することは出来ないでしょう。しかも、そのコストは巨額なものであり、消費税分に直しても数パーセントになるということです。
なので、「即脱原発」の方は明確に「少なくとも『短期的には』国民負担が増え、生活を直撃するけども、即脱原発の方が優先順位が高いのでやるべき。」とはっきり言うべきです。私の知り合いの方で、そういう思いを熱く語られる方がいます。私は、その方の話はきちんと聞くようにしています(別にそれ以外の方の意見をきちんと聞かないということではありませんが)。それは、メリット・デメリットを明確にした上で、それでも「あえてやるべき。」とされているからです。
今の日本が置かれている状況に「魔法のステッキ」、「皆、バラ色」は絶対に存在しません。原子力発電所はどちらに進んでも、メリット・デメリットがあります。原子力発電所を続けることのデメリットは、既に福島第一原子力発電所の事故で明らかになっています。しかし、原子力発電所を即廃止してしまうことのデメリットを語る方はあまりいません。
「脱原発」と「即脱原発」との間には距離があります。その一つのキーワードは「時間軸」です。何となく、その時間軸の概念が曖昧なまま、断片的な要素で多くの議論が行われているような気がしてなりません。
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