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【社説】

参院定数判決 格差3倍で合格点とは

 一票の格差が最大三・〇八倍あっても最高裁は合憲とした。昨年夏の参院選では初の合区があり、この是正策を評価したからだ。だが、三倍の格差を著しい不平等と認めない判断には釈然としない。

 十五人の判事で一人、実に明快な意見を書いた判事がいる。元内閣法制局長官の山本庸幸氏だ。

 <投票価値の較差(格差)は国政への政治力に地域間の差異をもたらすので、いずれの国民も平等に選挙権を行使できなければ、憲法前文にいう代表民主制に支えられた国民主権の原理は画餅に帰する>

 その上で「投票価値の平等は、他に優先する唯一かつ絶対的な基準として真っ先に守られるべきもの」と述べた。だから、あくまで平等原則を追求する。許容される差は一・二倍程度と考える。

 山本判事は「違憲無効」の意見であった。弁護士出身の鬼丸かおる判事も「違憲」の判断だった。

 多数派が合憲だったのは、合区の評価のほかに改正公職選挙法の付則がある。次の参院選までに抜本見直しをするという国会の約束を明記したことを重視したのだ。

 ただし、今回の判決で不思議な点がある。二〇一四年の判決で、「参院選の投票価値が衆院選より後退してよい理由はない」と述べていた。衆院選の格差は約二倍で違憲状態だった。参院選の約三倍は明らかに劣後しているのに合憲を与え、かつその理由を全く説明していない。なぜか。

 もう一点、指摘する。一四年の判決で「都道府県単位の現行方式をしかるべき形で改める」などと強い調子で仕組み自体の見直しを迫っていた。それで徳島・高知、鳥取・島根の合区ができたが、何と今回の判決では「都道府県を単位とすること自体を不合理なものとしない」と述べているのだ。正反対の意味に受け止められる。

 まるで改革にブレーキをかける書きぶりではないか。合憲とした判事たちは、一四年の判決からなぜ考えを変えたのか。その理由を明記しないのはなぜか。

 大学卒の人だけが二票持てば、みんな怒る。男性が二票で女性が一票なら大ブーイングだ。なぜ住む地域により三票も持つ現実を許容できるのか。明らかな不平等さえ認めない最高裁の姿勢は不可解というほかはない。

 むろん政治は一票の平等に向け、もっと動くべきである。議員の選び方が大事なのは、正統性が疑われず、民意を正しく反映させるためなのだから。

 

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