コモンシドニーオクトパス(Octopus tetricus)は一匹狼として知られてきた。かつてはオーストラリア東部やニュージーランド北部の亜熱帯海域に単独で生息し、仲間に出会うのは年に一度の繁殖期だけだと考えられていた。
だが、このところ彼らが時折小さな町を作り、そこにたむろすることが明らかにされつつある。
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オーストラリア東部にあるジェービス湾で、最近15匹のタコがコミュニケーションを図ったり、共同生活を営んだりする姿が確認された。
専門家はこの場所をタコランティス(Octlantis)と呼んでいる。米アラスカ・パシフィック大学の海洋生物学者デビッド・シェール教授が率いる国際チームによって、これまでの常識を覆すタコの複雑な社会的行動が映像に収められ、『Marine and Freshwater Behavior and Physiology』で発表された。
image credit:University of Illinois at Chicago
タコランティスの謎
どのような経緯でタコランティスが形成されるようになるのか、そしてこうした都市が一般的なことなのかどうかはまだ不明だ。
だが少なくとも、2009年にもジェービス湾付近でまた別のタコの住処が発見されており、こちらはタコポリス(Octopolis)と命名された。
当時、これはまったく異常なことと考えられた。専門家は、この現象について、そこに正体不明の人工物があり、たまたまその周囲にタコが集まってきたに過ぎないと推測した。その物体は30センチほどで、おそらく金属製だった。この場所は7年間にわたり観察が続けられ、その都度、2~16匹のタコがたむろしていた。
が、タコランティスではそのような謎めいた人工物は見つかっていない。
考えられる要因は、タコポリスとタコランティスのどちらにおいても、海底にいくつかの露出した岩が点在することだ。加えて、巣が形成される以前から周辺で暮らしていたタコが食べたハマグリやホタテなどの貝殻が堆積していることも指摘される。そしてタコはここを暮らしやすいように改造した。
Scientists discovered a never-before-seen octopus 'city' — and they named it 'Octlantis
華の都市生活
あらゆる大都会の例に漏れず、オクトポリスとタコランティスでの暮らしは楽ではない。強気でなければ生きていけない。エサは豊富だが、獲物であるタコが集まっているとなるとサメなどの捕食者の目にも留まる。
また仲間内のいざこざも多い。コモンシドニーオクトパスのオスは一部のタコを追い出すことに費やしているようだ。だがその理由について、シェール教授は「調査中」とだけ話す。
タコは仲間と共に社会生活を営んでいた?
ここ10年で、単独生活をすると考えられていたのに社会的行動を営む姿が目撃されたのは、コモンシドニーオクトパスだけではない。
これについてシェール教授は、タコの行動が変わったのではなく、人間の観測技術が向上したのだと考えている。
今日のダイバーは水中カメラなど、以前よりずっと高性能な機器を携えており、また情報交換のスピードも早い。
だからと言って、タコの都市がしごく一般的だということではない。
シェール教授は、こうした共同生活の場はおそらく隠れる場所が乏しい小さな生息域が点在し、かつエサは豊富な場所で形成されるのではないかと推測する。
しかし、このタコが長期間社会生活を送ることは疑わしいという。コモンシドニーオクトパスは一般には単独で暮らしており、こうしたことが起こるには、タコは互いに出会い、定期的に接触しながら世代を重ねなければならないと彼は考えている。
via:tandfonline / qz / boingboingなど/ translated by hiroching / edited by parumo
やはりタコはタダのタコではないようだ。必要とあらば仲間と手を組み共同生活を送ることもできるということで、これもある意味進化の過程によるものなのかもしれない。
関連記事:タコにも心がある?死にそうになっていたタコを助けたところ、感謝の気持ちを触手で表現していたっぽいぞ。
このままタコが進化し続けるとひょっとするともしかして、人間が捕食することがかなわなくなり我々がタコを食べる機会すら減っちまうっていうのかよおい!
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コメント
1. 匿名処理班
力のこもったくだらなさに、久しぶりに鼻からフガーと笑い息が出たよ
2. 匿名処理班
ある日一夜で滅びそう
3. 匿名処理班
タコと和解せよ
4. 匿名処理班
タコランティス駄洒落かと思ったらまじでほぼ原文w
詳しい文章頭に入らなかったw
5. 匿名処理班
たこ焼き何人前と書きたかったが動画だとせいぜい
10人前が限度みたい
6. 匿名処理班
寿命が一年とかでもタコの本能に訴える構造物が集積していくにつれてタコに都合の良い景観がつくられいくんだろうな。タコポリスのタコがそれ以外のタコよりも多くの子孫を残すなら、彼らは集団生活をするタコ、果ては文化を持つタコの進化の分岐点に立っているのかもしれない。
7. 匿名処理班
オクトランティス→タコランティスの訳は見事w
8. 匿名処理班
なんともイアイアする記事
9. 匿名処理班
いあ・・・いあ・・・
10. 匿名処理班
Octlantisをタコランティスと訳すセンス!(=゚∀゚ノノ゙パチパチパチパチパチパチ
観測技術の進歩、ねぇ…
まぁひと昔前の動物図鑑なんてウソ・デタラメのオンパレードだったもんなぁ
専門家の怠慢や思い込みで書かれたレポートだって少なくなかったりして…
11. 匿名処理班
タコは腕が8本もあり吸盤まで付いてるんだから人間以上に器用かもしれない
寿命が50年あれば技術や知識を子や孫に伝えていくことができ、人間が海に進出しなければちょっとした文明が築けたかもしれない
12. 匿名処理班
懐かしゲームネタとして
タコランティスの謎、と投稿しようとしたが
本文で既に先を越されていた・・・
13. 匿名処理班
ルルイエやね
14. 匿名処理班
タコライス
15. 匿名処理班
動物の賢さがわかるほど
人間様は賢いと言えるのかな?
16. 匿名処理班
動物愛「誤」団体の次のターゲットが見つかったなw
17. 匿名処理班
タコ部屋
18. 匿名処理班
タコトピア
19. 匿名処理班
そこはルルイエだろ
20. 匿名処理班
※14
あー、でも、沖縄のタコライスって、タコスの具を使った混ぜご飯で実は「タコ」使ってないんだよね。
「蛸入りの焼きめしや炊き込みご飯などをタコライスと呼称する例は、沖縄でタコライスが誕生する以前から全国各地に存在していた」。にしても。
21. 匿名処理班
非ユークリッド幾何学的な外形を持ってそう
22. 匿名処理班
タコライス禁止
23. 匿名処理班
ラヴやんは正しかったのだ…
24. 匿名処理班
集団になることに何かメリットがあるのかね?
餌の奪い合いになりそうだが...
25. 匿名処理班
イカシティー
26. 匿名処理班
タコは社会的な動物
27. 匿名処理班
タコちゃんぺっ
28. 匿名処理班
タコが好みそうな環境があって、複数が住みついただけじゃないの? と思ってのぞいたら、そのまんま過ぎてどーしようかと思った。
29. 匿名処理班
まさに貝塚そのものだな
あとはタコに言語のような意思疎通手段ができれば
文明を築くことも可能だと思うんだけど
30. 匿名処理班
※29
多分タコやイカの類は、自分の体の体色を自在に変化させてそれによって、仲間同士のコミュニケーションをすると思うよ。
少なくとも、イカについてはかなり昔に読んだACクラークの短編小説とかで、そういうシーンを読んだことがある。