日本の電子マネーが束になってもかなわない、中国スマホ・マネーの規模と利便性
Alipayは9月1日、KFCの杭州店で顔認識による決済システム「スマイル・トゥ・ペイ」をテスト開始した REUTERS
<かつて「おサイフケータイ」で世界の最先端を走っていた日本でキャッシュレス支払いが低迷し、その間に中国のスマホ・マネー市場が1000兆円まで爆発的な成長を遂げたのはなぜなのか>
今年8月に北京で同僚と鍋屋で食事をしたとき、ウェイターにお会計を頼んだら、「テーブルに貼ってあるQRコードをスマホで読み込んで支払ってください」と言われた。スマホのカメラをQRコードに向けると、鍋屋のホームページが立ち上がり、食事した金額が表示される。画面に現れた「支払う」というボタンを押すと、スマホ・マネーの支付宝(Alipay)か微信支付(WeChat Pay)のどちらかを通じて代金が店に支払われる。
スマホ・マネーの普及
こういう仕組みが中国のレストランやカフェに登場したのはごく最近のことだ。私が初めて見たのは今年3月、深センの「3W Coffee」というベンチャー支援施設を兼ねたカフェであった。さすが中国の最先端を行く深センだと思って、写真にとって講演のネタとして使ったりした。ところが、その後半年も経たないうちに、普通の鍋屋にまでキャッシュレスでの支払いシステムが普及しているのである。
深センのカフェのテーブルにあったQRコード。これを読み取ることで注文と支払いができる Tomoo Marukawa
いまや北京のコンビニではスマホ・マネーで支払う人が半数以上である。屋台の店にもQRコードが貼られていて、それをスマホで読みこめばキャッシュレスで買い物ができる。現金を入れる穴がない、スマホ・マネー専用の飲料や菓子の自動販売機が現れたし、スマホ・マネーで買い物できる無人コンビニも登場した。
果物屋の店先に貼り出された支付宝と微信支付のQRコード。自分が利用しているほうのスマホ・マネーのQRコードを読み込めばいい Tomoo Marukawa
この1年の間に、あれよあれよという間に中国でキャッシュレス化が進んでいる。スマホに支付宝か微信支付のアプリをダウンロードしてスマホ・マネーの口座を作る。それを銀行口座と結び付けておき、あらかじめそこにお金を入れておく。店先のQRコードをスマホのカメラで読み取るか、または自分のスマホの画面にQRコードを表示し、店員にコードリーダーで読み取ってもらえば、自分のスマホ・マネー口座から相手のスマホ・マネー口座にお金が移転する仕組みである。
スマホで果物屋の代金を支払っているところ Tomoo Marukawa
中国ではスマホ・マネーが急速に普及し、それを前提とする新サービスが次々と現れている。携帯電話・スマホをお金として使う仕組みの導入では日本がはるかに先行していたのに、気づいてみたら周回遅れである。
日本で「おサイフケータイ」が始まったのは2004年。そのころの中国の携帯電話には一回の操作で1元を送金する機能しかなかった。日本の携帯電話は、おサイフ代わりに使えるし、テレビ放送も見られるし(ワンセグ)、音楽もダウンロードできる(着うたフル)ということで、世界最先端の機能を持っていたのである。
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