さて以下にあげる10の元素に共通するものは何だと思う?
・イットリウム
・イッテルビウム
・テルビウム
・エルビウム
・ガドリニウム
・ツリウム
・スカンジウム
・ホルミウム
・ジスプロシウム
・ルテチウム
正解は「これらの元素は全て同じ場所で発見された」という事だ。
これらの希土類元素は全てスウェーデン諸島ヴァクスホルムにあるイッテルビー村で採掘された一つの鉱石から分離された物だ。
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イッテルビー村は採石場があり、そこで発掘されたガドリン石から様々な元素が発見された。また、これらの元素は分離が困難なため、全ての元素を分離するのに科学者は数十年を要したのである。
少なくとも分離された10の元素のうち4つの元素には村の名前が由来となっている。イットリウム、エルビウム、テルビウム、イッテルビウムである。
1910年代のイッテルビー。採掘所はまだ活気にあふれていた時代である。
image credit:Tekniska museet/Flickr
イッテルビー村、元素発見の歴史
イッテルビーが科学の歴史舞台に登場するのは1787年の事である。
スウェーデンの陸軍中尉であり、科学のパートタイムもしていた科学者のカール・アクセル・アレニウスがイッテルビーの村で奇妙な重量のある黒い鉱石を発見した。彼は見つけて名もない未知の鉱石を「イッテルバイト」と名付けた。
その後アレニウスは当時発見されて間もなかった「タングステン」という元素を発見できる可能性を感じ、見つけた鉱石を分析に回したという。
2年後の1789年、オーボ大学のフィンランド人化学者ヨハン・ガドリンがアレニウスによってもたらされた鉱石から新種の元素「イットリウム」を発見したのだ。その後100年にわたり、この一つの鉱石から9つの性質の異なる元素が発見されることになる。
1843年、スイス人化学者のカール・グスタフ・モサンデルはイッテルバイトが少なくとも3つの金属酸化物から成り立っている、と発表した。
そこで発見された元素は、イットリウムに加え、テルビウムとエルビウムである。それぞれイッテルビーという村の名前に因んで名づけられている。
1878年にはジャン・シャルル・ガリサール・ド・マリニャックが鉱石からイッテルビウムを分離させることに成功している。
その後の科学の進歩により、これら4つの元素を分離させることで新たに多くの元素が発見されていき、かくしてたった一つの鉱石から10個の新元素が発見されるに至ったのである。
これらの元素の一つであるガドリウムは、ヨハン・ガドリンが自身の名前を付け、鉱石はイッテルバイトという名前からガドリナイトという名前に改名された。これもすべてヨハン・ガドリンの功績を考えての事である。
image credit:Ytterby gruva - Wikipedia
イッテルビー村の採掘所はすでに閉鎖されており、木々や藻があたり一面を覆っている。しかしイッテルビー村にほど近い店や道路等には鉱石の名前が使われており、いまだにその栄光は消えていないそうだ。
黄色い部分が発見された元素
イットリウム:
初めてヨハン・ガドリンによって発見された元素である。現在ではLEDやリン、特にテレビの液晶やカソードなどに使われる赤色のリンを作り出すための素材としての応用がなされている。他にもイットリウムの応用は電極、電解物、フィルタ回路、レーザー、超伝導体や医療器具といった多岐にわたる。
テルビウム
:現在では半導体としての利用や、パソコンのSSDなどにも使用されているが、テレビの液晶などに使用される緑色のリンを作り出すための素材としても使われている。他にも蛍光ランプやソナー装置などにも応用分野がある。
エルビウム:
主に光学での応用が多く、レーザーや光増幅器などに使用されている。エルビウムによるレーザーは浸透性が低く、皮膚科や歯科などでの応用もされており、歯の根元や皮膚の最下層を傷めず、表面のみの治療を行うのに最適だ。
イッテルビウム:
ステンレススティールのドーパントとしての使用が主であるが、特に興味深い応用は原子時計だろう。イッテルビウムの時計は100京分の2の誤差もなく正確な時を刻む。これは現在使用されているセシウム時計よりも正確だという。
ASMインターナショナルによるイッテルビーの採掘所記念跡地
image credit:Uwezi/Wikimedia
イッテルビー村で元素発見を記念して名付けられた道路
image credit:Uwezi/Wikimedia
viaYtterby: The Village That Chemists Love | Amusing Planet/ translated by riki7119 / edited by parumoあわせて読みたい
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コメント
1. 匿名処理班
ちょっくらクリプトナイトとアダマンチウムを採掘してくるわ
2. 匿名処理班
こんなに新物質出てきたらすごいよねえ
3. 匿名処理班
イッテルビー村 素敵な名前だ
4. 匿名処理班
イットリウムと言えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)。
今のレーザー技術の基礎となる人造宝石で、医療現場ではYAGレーザーは今も現役。
発展系のYAP(イットリウム・アルミニウム・ペロブスカイト)は複屈折になり、記憶媒体として期待されている(YAGは単屈折のため要領が少ない)。
どちらも宝石としても美しいものだ。
グリーンYAGリング
//thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/bears-gem/cabinet/goteian/04004298/3322s.jpg
5. 匿名処理班
昔は周期表とが元素記号とか大嫌いだったのだが、最近になって『スプーンと元素周期表 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』という本を読んで、元素にハマった。
本の中に、このイッテルビー村の話も載ってる。興味のある方は是非。
6. 匿名処理班
もっと見つかってたら ルビウム ビウム ウム ム まで行ってたのか
7. 匿名処理班
イッテルビー村から出た物が、レーザーにも使われてるだと!
テンション上がって発射するときは、こう言うんだろうなー。
「イッテルビーーーム!・・・ら」
「行ってるバイトはイッテルバイト掘り」
恐ろしい村だ!ダジャレが止められねーw
8. 匿名処理班
ああああ
9. 匿名処理班
本文、イッテリウムとなっている箇所があります。
正式には日本語でイットリウム表記のはず。
10. 匿名処理班
少なくとも列挙された名前の上から四つは「イッテルビー」という名前に基づいているというねw
19世紀は「分子」と「原子」すら定義が曖昧で水の組成式すら固定されてなかった時期。
そんな時期に科学の発展の為に時には命を賭して新元素発見に邁進した世紀。
特にランタノイドはそれまでの分離の仕方だと何百回何千回と分離トライしてやっと見つけたなんて物も少なくない。
ちなみにウランは18世紀末には発見されていた、でも、放射能と放射線という物の発見にはそこから百年ちょっと時間が必要で、ウラン硝子とかトリウムランプとか放射性元素を使った工業品や工芸品も作られていた。
11. 匿名処理班
稀土類元素ってヤツだったかな?
アシモフ博士のエッセイで読んだ事がある、題名は思い出せない、コレから本棚をひっくり返してみよう。
12. 匿名処理班
が。。。がんばるびー
13. 匿名処理班
※1 のアレニウスさんって、有名なアレニウスとは別人なのか
14. 匿名処理班
イッテルビーって、何かグルグルの地名やギャグに出てきそうな響き
15. 匿名処理班
イッテルビウムっていう名前が面白かったから覚えてたわ
なんか感慨深い
16. 匿名処理班
世界の果てまでイッテルビー(言ってみただけ)。
17. 匿名処理班
イッテミテー村
18. 匿名処理班
この原素を発見した当時、なにに使えるかなんてわからない。でも現在は必要不可欠。
日本人はすぐに成果を求めるけど、基礎研究や応用研究は1年2年で暮らしを変えるわけじゃない。
次の世代への貯金なんだよ。
だからもっと研究にはお金を使って研究者の給料も改善しないと、日本から研究者は居なくなる。