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2017年09月28日

「グーグル」と「FB」が支配するデジタル広告市場、驚くべき寡占化の勢いをグラフで追ってみる

 GoogleとFacebookの2巨人が、デジタル広告市場を寡占している。よく知られている話である。でも、両社による寡占化がどう展開するかをグラフで追ってみると、複占( duopoly)が思っていた以上に異常なレベルに向かっていることに、驚いてしまう。

 米デジタル広告市場のトップ10社の各広告費をeMarketerが予測していたので、それをグラフ表示したのが図1である。2016年から2019年までの、年間広告費の推移を示している。トップ2のGoogleとFacebookが、他の8社を大きく引き離して突っ走っている。トップ2社の勢いだけが特出し、今後もその他グループとの差をドンドン引き離そうとしているのだ。

FBGoogleAdeMmarketer1.png
(データソース:eMarketer)
図1 米デジタル広告費の推移。2016年~2019年の年間売上高を会社別に示している。図ではトップ10のみプロットしている。Googleの広告費にはYouTubeも、Facebook広告費にはInstagramも含む。

 2017年(今年)の予測でも、トップ2のGoogleとFacebookの好調ぶりが際立つ。eMarketerの予測では、Googleが前年比18.9%増の350億ドルに、Facebookが前年比40.4%増の174億ドルに跳ね上がる。米国の合計デジタル広告費が15.9%増の830億ドルとなっている。成長率で平均を上回るGoogleとFacebookが、その他グループとの差を拡大しているのだ。来年以降も、トップ2の成長率がその他グループを上回り続けると見られており、GoogleとFacebookによるデジタル広告市場複占のレベルが高まる一方である。

 この異常事態に待ったをかける動きは出てきている。例えば、AOLと米Yahooを傘下に収めたVerizonが抵抗勢力として注目されている。統合により浮上し同社グループの今年の広告売上高は36億ドルと急増しそうだが、それでもGoogleの350億ドルやFacebookの174億ドルに比べると桁違いに少ない。さらに今後の成長予測は非常に厳しく、2019年の売上高は微増の38億ドルに留まると見られている。高度成長を続けるGoogleとFacebookは、それぞれ2019年の売上高が467億ドルと256億ドルと跳ね上がり、停滞気味のVerizonのはるか先を走り続けることになりそう。

 トップ10の売上高推移を棒グラフで示したのが図2である。GoogleおよびFacebookのそれぞれの広告売上高が、米国の全デジタル広告売上に占める割合も示している。トップ2による複占のレベルが、2017年の63.11%(Google42.17%+Facebook20.92%)から2019年の67.57%(Googel43.33%+Facebook24.24%)へと高まると、予測されているのだ。

FBGoogleAdeMmarketer2.png
(データソース:eMarketer)
図2 トップ10の売上高推移。トップ10以外の売上高は積み上げていない。ただし、GoogleおよびFacebookで示している百分率は、米国の全デジタル広告費に対するシェアである。

 参考までに、eMarketerの公表したデータを図3に掲げておく。

FBGoogleAdeMmarketer3.png
(ソース:eMarketer)
図3 eMarketerが2017年9月に公表したデータ

 このような2巨人によるデジタル広告市場支配は、中国やロシアなどを除けば、グローバルに同時展開している。これまで以上に、今後もさらに両社による市場支配力が拡大していくと予測されているのはなぜだろうか。まず第一にモバイル広告の取り組みに成功したことがある。それに加え、今後とも爆発的成長が見込める動画広告にも先手を打っている点があげられる。

  IAB(the Interactive Advertising Bureau)によると、2016年に初めてモバイル広告がデジタル広告売上の半分以上を占めた。今後は明らかに、そのモバイル広告を中心にデジタル広告市場が展開することになる。comScoreの今年6月調査によると、モバイルユーザーは、モバイル端末接触時間の87%をモバイルアプリを利用しているという。

 そのモバイルアプリのユーザーランキングをcomScoreが発表しているが、2017年6月の調査結果を図4に示す。18歳以上の米国ユーザーを対象にした調査で、利用割合の多いトップ10アプリを掲げている。その中でGoogleアプリが5つ、Facebookアプリが3つも占めているのだ。こうしたアプリを通じてかき集めた個人の行動履歴などのデータが、言うまでもなく広告ビジネスの強力な武器となっている。図4でも明らかに、GoogleとFacebookのトップ2が圧倒的に大量の個人データを収集していることになる。 

MobileAppTop10201706.png
(ソース:comScore)
図4 モバイルアプリのユーザーランキング。2017年6月調査。

 世代別のモバイルアプリ・ランキングを図5に示す。確かにGoogle検索やFacebookSNSは最近、若年層(Age18-24)への浸透が鈍ってきているようだが、それを補う形でFacebook傘下のYouTubeやFacebook傘下のInstagramが上位に食い込んでいる。図4に示すように、YouTubeの広告売上高は2017年の39億ドルから2019年に50億ドルへ、Instagramは2017年の31億ドルから2019年に69億ドルへと増え、トップ2の新たなけん引役を果たそうとしている。それぞれ単体の広告売上だけでも、2019年の3番手候補であるMicrosoftやVerizonを上回ると予測されている。

Top8AppAge201706.png
(ソース:comScore)
図5 モバイルアプリの世代別ユーザーランキング。2017年6月調査。

 Google検索離れとかFacebook離れが進んでいると頻繁に伝えられているが、comScoreの調査結果を見る限りにおいては、モバイル全盛時代に入った現在、そのような動きが顕著に現れていない。図6に示すように、2016年の1年間でも、GoogleやFacebookの主要アプリのユニークユーザー数は、2ケタ台の成長を示している。モバイルシフトでGoogle Search離れが懸念されていたが、昨年末のGoogle Searchアプリのユニークユーザー数は前年比で40%も増えている。

MobileAppcomScore2016Dec.png
(ソース:comScore)
図6 トップ10モバイルアプリの成長率。2016年12月のユニークユーザー数と前年同月比成長率を示している。

 このようにGoogleとFacebookはモバイルアプリで圧倒的に集客しているうえに、ユーザー1人当たりの広告売上高も他社を圧倒している。メディア調査会社Ampere Analysisではグローバルを対象に、四半期単位のMAU(月間アクティブユーザー)当たり広告売上高を会社別に明らかにしている。それによるとGoogleは2015年第1四半期の5ドルから2016年第4四半期の約7ドルへ、Facebookは2.3ドルから5ドルへと、ー1人当たりの広告売上高をアップさせている。 

Ad per MAU Ampere.png
(ソース:Ampere Analysis)
図7 2016年第4四半期におけるMAU(月間アクティブユーザー)当たりの広告売上高。ここではグローバル市場が対象に。

◇参考
・Google and Facebook Tighten Grip on US Digital Ad Market(eMarketer)
・米ネット広告売上が22%増と急成長なのに、グーグルとフェイスブック以外のメディア会社がゼロ成長なのはなぜ(メディア・パブ)
・Facebook closes the gap on Google(Ampere Analysis)

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posted by 田中善一郎 at 12:59 | Comment(0) | マーケティング 広告
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