大分県内のJRが「異常事態」だ。大分駅を起点とする3線の全4方面のうち、久留米(久大線)、熊本(豊肥線)、宮崎(日豊線)の3方面は災害の影響で寸断された状態が続く。JR九州大分支社によると、県内の3線で同時に不通区間が生じるのは少なくとも1987年の国鉄民営化以降、初めて。県民の暮らしや観光面への影響が懸念されている。 「復旧に相当の時間を要する」。兵藤公顕(きみあき)支社長は25日に大分市内で開いた会見で、台風18号で被災した日豊線臼杵―佐伯間は運転再開に数カ月以上かかる可能性を示した。土砂崩れが起きた津久見市徳浦の線路被害は深刻で、重機の搬入が難しいため撤去作業が長引きそうだという。 不通区間はバスやタクシーでの代行輸送が続く。「日豊線は延岡まで復旧したが、特急はまだない。通常の倍ほど時間がかかる。早く復旧してもらわないと自由が利かない」。頻繁に大分出張がある宮崎市の50代会社員男性は嘆き節だ。 台風が県内に接近した翌日の18日以降、大分と宮崎を結ぶ高速バス「パシフィックライナー」はほぼ満席状態となっている。利用客が増えた背景について、運行する大分交通(大分市)は「特急の乗客が流れてきたのでは」と分析する。 観光への打撃も大きい。県によると、7月の福岡・大分豪雨による久大線の寸断が痛手だった。県外からの宿泊客の3割弱は福岡から訪れ、観光列車「ゆふいんの森」の利用が多い。同列車は7月15日からルートを変更。日豊線で臨時運行し、由布院へは博多から小倉・大分経由の「遠回り」を余儀なくされている。 豪華寝台列車「ななつ星in九州」も久大、日豊両線に不通区間があるため大分県に立ち寄れない。県観光・地域振興課は「JRが要因とは一概に言えないが、8月の県内は日本人の宿泊客が昨年比で約1割減った。現場からも客足が伸びない、との声を聞く」。 現在、大分駅から列車で県外に行けるのは小倉・博多に向かう日豊線のみ。台風で橋が一部損壊した豊肥線の中判田―三重町間は10月2日に運転再開予定だが、全線正常化には程遠い。 JRは「利用者に迷惑を掛けて申し訳ない。一日も早い復旧を目指す」と話している。<メモ> JR九州によると、久大線は7月の福岡・大分豪雨で日田市の鉄橋が流失し、日田―光岡(てるおか)間が不通。2018年夏の復旧を目指している。台風18号で日豊線は県南を中心に土砂が線路をふさいだ。一部区間は復旧したが臼杵―佐伯間が通れず、長期化する見通し。豊肥線は昨年4月の熊本・大分地震の影響で、阿蘇から熊本方面は運行できない。