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寿司くんが『文化庁メディア芸術祭』受賞 岡崎体育との制作を語る

寿司くんが『文化庁メディア芸術祭』受賞 岡崎体育との制作を語る

『文化庁メディア芸術祭』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:豊島望 編集:宮原朋之、山元翔一

「カメラ目線で歩きながら歌う」「急に横からメンバー出てくる」など、ミュージックビデオにありがちな演出を批評した、岡崎体育のミュージックビデオ“MUSIC VIDEO”が、『第20回文化庁メディア芸術祭』の「エンターテインメント部門 新人賞」を受賞した。映像監督を務めたのは、「寿司くん」こと、こやまたくや。岡崎のほぼ全てのミュージックビデオを担当しているほか、シュールなブラックユーモアが人気のアニメーション『寿司くん』なども手がけ、最近では男女混成3ピースバンド「ヤバイTシャツ屋さん」での活動で話題を集めるなど、マルチな才能を発揮しまくっている。

ミュージックビデオ、アニメーション、そしてバンドと実に幅広いアウトプットを持つこやまの表現に一貫しているのは、徹底した「メタ視線」とそれに基づく客観性・批評性だ。朋友・岡崎体育とも共鳴し合うという、その感覚は一体どこから来ているのだろうか。

最初はネットニュースかまとめサイトで、「全てのMV製作者を敵に回す動画」みたいなキャッチコピーとともに広まったんです。

―『第20回文化庁メディア芸術祭』(以下、『メディア芸術祭』)「エンターテインメント部門 新人賞」おめでとうございます。そもそもミュージックビデオ「MUSIC VIDEO」を応募しようと思った経緯から教えてもらえますか?

こやま:僕は大阪芸術大学の映像学科出身で、3年生のときに「いろんな作品をコンテストに応募しよう」と思い立ったんです。そのうちのひとつが『メディア芸術祭』で、最初は『寿司くん』というアニメを提出したんですけど、落選して。

翌年は卒業制作として作った『あつまれ!わくわくパーク』という15分の短編オムニバス映画を提出したら、結構いろんなコンテストに引っかかって。『メディア芸術祭』でも「審査委員会推薦作品」に選ばれたんです。

こやまたくや
こやまたくや

「地方のケーブルテレビ局で、朝5時から放送している子ども番組」をコンセプトにした映像作品。岡崎体育が「体育おにいさん」に扮している

こやま:学生作品でも選ばれると思っていなかったし、卒業制作でも選んでくれるなんて「文化庁すごいな」と(笑)。そのときに「来年はミュージックビデオで賞を目指そう」という話を岡崎さんとしました。で、1年経ってちょうどいいタイミングで「MUSIC VIDEO」ができたので、レーベルの了承も得て、『メディア芸術祭』に出すことにしたんです。

―「MUSIC VIDEO」は、どのようにしてでき上がったのでしょうか。

こやま:岡崎さんから「メジャーデビューするにあたって、フックになるような、とにかくバズらせるための曲を作りたい」っていう話をずっと聞いていたんです。そこで岡崎さんから出てきたアイデアが、ミュージックビデオの「あるあるネタ」という。

しばらくしてから歌詞が送られてきて、すぐ絵コンテを描いたんですけど、あのビデオは大がかりなセットは何ひとつ使ってないんですよ。お金をかけようと思えばいくらでもかけられる映像なんですけど、中途半端にお金かけるくらいだったら、全くお金かけずにやりきろうという話になって。

こやま:スタッフも、僕と岡崎さん、それから岡崎さんのマネージャーの3人だけ。岡崎さんが車を運転し、マネージャーさんがラジカセの再生ボタンを押し、僕がカメラも照明も全てやって。撮ったら移動し、その合間にちょこちょこと編集作業もして、だいたい4日間で撮影を終わらせました。すごく楽しかったですね。

―「特別な制作環境を準備せずとも、ごく一般的に入手可能な機材と最小限のスタッフワークでやり切れることを示した点も今を象徴している」ということも、「エンターテインメント部門 新人賞」の贈賞理由となったようですね。

こやま:そうですね。きっと、お金をかけたら皮肉っぽくなり過ぎちゃったと思うんです。

こやまたくや

―巷に溢れるミュージックビデオへの批評精神を持ちつつ、ユーモア精神があって悪意を全く感じさせないですよね。その辺りのバランスは考えました?

こやま:そうですね。「MUSIC VIDEO」は、努力が見える映像だと思うんですよ。カット数もめちゃめちゃ多いし、ロケもたくさんしているのに、映像はチープで自主制作感が出ている。手持ちの機材だけでなんとかこなそうと、カメラもあえてショボいものを使いました。その辺りのバランスがよかったのかなと。

―実際、あのミュージックビデオを発表したときの反応はどうだったのですか?

こやま:最初はネットニュースかまとめサイトで、「全てのMV製作者を敵に回す動画」みたいなキャッチコピーとともに広まったんです。まあやっぱり、ちょっと毒があったほうが広まりやすいじゃないですか。

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イベント情報

第21回 文化庁メディア芸術祭 作品募集

募集期間
2017年8月1日(火)~10月5日(木)日本時間18:00必着

募集部門
4部門(アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガ)
※プロ、アマチュアおよび自主制作作品、商業作品を問わず応募できます。

アート部門
インタラクティブアート、メディアインスタレーション、映像作品、映像インスタレーション、グラフィックアート(写真を含む)、ネットアート、メディアパフォーマンス等

エンターテインメント部門
ゲーム(テレビゲーム、オンラインゲーム等)、映像・音響作品(ミュージックビデオ、自主制作・広告映像等)、空間表現(特殊映像効果・演出、パフォーマンスを含む)、ガジェット(プロダクト、ツールを含む)、ウェブ(ウェブプロモーション、オープンソースプロジェクトを含む)、アプリケーション等

アニメーション部門
劇場アニメーション、短編アニメーション、テレビアニメーション、オリジナルビデオアニメーション(OVA)等

マンガ部門
単行本で発行されたマンガ、雑誌等に掲載されたマンガ(連載中の作品を含む)、コンピュータや携帯情報端末等で閲覧可能なマンガ、同人誌等の自主制作のマンガ等

『第20回 文化庁メディア芸術祭受賞作品展』

2017年9月16日(土)~9月28日(木)
会場:東京都 NTTインターコミュニケーション・センター、東京オペラシティ アートギャラリーほか
入場料無料

受賞作品:
アート部門
大賞
Ralf BAECKER『Interface I』
優秀賞
吉原 悠博『培養都市』
『Alter』制作チーム(代表:石黒浩/池上高志)『Alter』
Benjamin MAUS / Prokop BARTONÍČEK『Jller』
Ori ELISAR『The Living Language Project』
新人賞
津田道子『あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。』
Rosa MENKMAN『DCT: SYPHONING. The 1000000th interval.』
Nina KURTELA『The Wall』

エンターテインメント部門
大賞:
庵野秀明/樋口真嗣『シン・ゴジラ』
優秀賞:
市原えつこ『デジタルシャーマン・ プロジェクト』
川嵜鋼平/中野友彦/中村裕美/橋本俊行/宇田川和樹/天野渉『NO SALT RESTAURANT』
『PokémonGO』制作チーム(代表:野村達雄)『Pokémon GO』
『UnlimitedCorridor』制作チーム(代表:松本啓吾)『Unlimited Corridor』
新人賞:
岡崎体育/寿司くん『岡崎体育「MUSIC VIDEO」』
Ryo Kishi『ObOrO』
Marcel BUECKNER / Tim HEINZE / Richard OECKEL / Lorenz POTTHAST / Moritz RICHARTZ『RADIX | ORGANISM / APPARATUS』

アニメーション部門
大賞:
新海誠『君の名は。』
優秀賞:
山田尚子『映画『聲の形』』
Alê ABREU『父を探して』
Anushka Kishani NAANAYAKKARA『A Love Story』
Anna BUDANOVA 『Among the black waves』
新人賞:
堤大介/ロバート・コンドウ『ムーム』
Emma VAKARELOVA『I Have Dreamed Of You So Much』
Arturo "Vonno" AMBRIZ / Roy AMBRIZ『Rebellious』

マンガ部門
大賞:
石塚真一『BLUE GIANT』
優秀賞:
高井研一郎/原作:林律雄『総務部総務課 山口六平太』
ユン・テホ/訳:古川綾子/金承福『未生 ミセン』
筒井哲也『有害都市』
松本大洋『Sunny』
新人賞:
灰原薬『応天の門』
清家雪子『月に吠えらんねえ』
畑優以『ヤスミーン』
功労賞:
飯塚正夫
梯郁太郎
高野行央
松武秀樹

リリース情報

ヤバイTシャツ屋さん『パイナップルせんぱい』初回限定盤
ヤバイTシャツ屋さん
『パイナップルせんぱい』初回限定盤(CD+DVD)

価格:1,620円(税込)
UMCK-9922

[CD]
1. ハッピーウェディング前ソング
2. 眠いオブザイヤー受賞
3. とりあえず噛む
4. ハッピーウェディング前ソング(岡崎体育 remix)
[DVD収録内容]
・ヤバイTシャツ屋さんのパイナップルツアー
・沖縄・ナゴパイナップルパークでオフを楽しむメンバーの姿を収録

ヤバイTシャツ屋さん『パイナップルせんぱい』通常盤
ヤバイTシャツ屋さん
『パイナップルせんぱい』通常盤(CD)

価格:1,188円(税込)
UMCK-5636

1. ハッピーウェディング前ソング
2. 眠いオブザイヤー受賞
3. とりあえず噛む
4. ハッピーウェディング前ソング(岡崎体育 remix)

ヤバイTシャツ屋さん『Tank-top of the DVD』
ヤバイTシャツ屋さん
『Tank-top of the DVD』(DVD)

2017年9月20日(水)発売
価格:3,500円(税込)
UMBK-1253

[収録曲]
・オープニングドキュメンタリー「タンクトップ神誕生」
・Tank-top of the world
・寝んでもいける
・メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲
-MC1-
・L・O・V・E タオル
・DQNの車のミラーのところによくぶら下がってる大麻の形したやつ
・Don’t stop SNS
・ZIKKA
-MC2-
・ウェイウェイ大学生
・天王寺に住んでる女の子
・週10ですき家
・喜志駅周辺なんもない
-MC3-
・とりあえず噛む
・反吐出る
・流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い
・スプラッピ スプラッパ
・無線LANばり便利
・ネコ飼いたい
・ヤバみ
-アンコールMC-
・肩 have a good day
・あつまれ!パーティーピーポー
<おもしろ特典映像>
おもしろライブ当日のおもしろメンバーのおもしろ様子

プロフィール

こやまたくや

京都府出身、大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業。24歳。「寿司くん」名義でアニメ・ミュージックビデオなどの映像作品を中心に制作活動を行う。ロックバンド、ヤバイTシャツ屋さんのギターボーカルとしても活動中。

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大森靖子“みっくしゅじゅーちゅ”

大森靖子のアルバム『MUTEKI』から“みっくしゅじゅーちゅ”のMVが公開。夏を感じさせるアップテンポな楽曲、そしてLADYBABY・黒宮れいのどこか挑発的な表情にも胸をかき乱される。可愛らしいフォントで画面を流れるキラーフレーズの数々にも注目。撮影・編集を手掛けるのは二宮ユーキ。(井戸沼)