朝から珍しく機嫌の悪い子どもちゃん。
お腹が痛いとか、咳が出ると言い、保育園を休みたいと言う。
でも、奥さまも私も仕事なので、保育園を休ませるわけにもいかない。
私が「どうしたの?」ときくと、ぽつりぽつりと子どもちゃんは語りはじめた。
お遊戯の時、うまくできなくて、友だちにからかわれるのが嫌だし、コワイのだそうだ。
で、この日はお遊戯がある日なので、それを休みたいということだった。
「じゃあ、お遊戯は見学するよう、先生に話してあげるから、保育園に行く?」
と私が訊くと、コクンとうなづく子どもちゃん。
保育園に向かう私たち。
子どもちゃんの足どりは重い。
「怖い。心がモヤモヤするの」
と、子どもちゃんは心細くつぶやく。
私はそのまま子どもちゃんの話を傾聴する。
「心がモヤモヤするとき、モヤモヤはあっちにいけ!って思うんだけど、そうするとモヤモヤがもっと強くなるの」
それを聞いて、私はかなり驚いた。というのも、子どもちゃんが話していることは、私がうつになってカウンセラーさんとさんざん話してきたことと同じことだったからだ。
カウンセラーさんと私は、怒りや悲しみといった感情は、否定せずに味わいつくしたほうがいい。そういう感情をなかったことにしてまうと、自分の気持ちに嘘をつくことになり、よけいにネガティブな感情が強くなる、という話をしていたのだ。
私が何年もかけ、他者の助けを得ながら理解したことを、5歳児が感覚的に理解していたことに、驚きを隠せない。
子どもって本当にいろいろなことがわかっている。「怒ってはいけない」「悲しんではいけない」という理屈や常識、世間体を大人は信じすぎて、見えるものが見えなくなっているのではないか。
私は、子どもちゃんに「すき家の牛丼する?」と尋ねる。
「すき家の牛丼」とは、私と子どもちゃんとの間で最近流行っている遊びで、「すき家の牛丼」と言いながら、ギューっと抱っこをするのです。
牛とギューっをかけているわけね😉
「すき家の牛丼」で、少しだけ笑顔を取り戻した子どもちゃんは、保育園の教室に一人で向かっていった。
ほっとしながらも、大丈夫だろうかと心配になる私。
でもきっと大丈夫。5歳児とはいえ、大人でもなかなか見えないものに、気づいているようだから。