免疫療法バッシングは、週刊ポスト9月8日号に飛び火

もちろん、世の中にはこの記事にあるような実態はあるのでしょう。しかし、一方的に悪者扱いするための記事であり、客観性があるように書かれていますが、非常に偏った記事ではないでしょうか。そもそも、これらの治療に助けを求める人は、決してバカなのではなく、がん専門病院や大学病院でのひどい扱いに途方にくれた結果としての選択肢であるというところもあるのではないでしょうか。患者さんの視点に寄り添う姿勢ゼロで、患者をバカ扱いしていますよね。一体誰に書かされているのでしょうか?このジャーナリストさんは誰なんでしょうか?

引用開始:

末期がん患者が騙される やってはいけない免疫療法

<がん治療大国ニッポンの大問題> 無料説明会で「がんが消えた人がいる」「主治医には黙っておいて」

「末期がんが消えた!」「先進的」- 命の機器に瀕した進行がん患者にとって、そうした謳い文句で宣伝される「がん免疫療法」は”最後の希望”に映る。だが、高額な治療ひを払う患者たちに、「有効性が立証されていない」ことが、正確に伝わっているのか。無料説明会への潜入、実際に治療を受けた患者の声からは、モラルなき実態も浮かび上がる。ジャーナリスト・岩澤倫彦氏がレポートする。

有効性は立証されていない

東京・六本木の高層ビル。免疫療法の説明会が行われるフロアにエレベーターが着くと、コンシェルジュの女性が待っていた。フロアには高級ホテル然としたプレミアムな雰囲気が漂う。

説明会の講師は、国立大学の先端免疫治療学寄付講座の特任教授。約10人の患者と家族を前に、治療画像を見せながら夢と希望に溢れたエピソードを紹介する。「この肝臓がんは、樹状細胞ワクチン(=免疫療法)で壊死して黒くなりました。この肺がん患者は、ありとあらゆる抗がん剤治療をやって効かなかったので、樹状細胞ワクチンを併用したら、きゅーっと、がんが小さくなったと。こういうことが、割と珍しくないのです」

患者たちは身を乗り出してスライド画像を見つめる。説明会の終わり、特任教授は意外なことを口にした。「”彼ら”は、うまいこと宣伝をやるんで、私は詐欺師と呼んでいます。”彼ら”は、効果が出たという画像すら偽造しますからね」

詐欺師と揶揄された”彼ら”とは、他の免疫クリニックのこと。だが、後に別のクリニックの説明会でも全く同じセリフを聞いた。互いが互いを詐欺師と侮る異様さがある。

説明会後、半数の患者が外来の予約をしていた。この免疫療法を受けるつもりらしい。費用は1クール(約3カ月)200万~300万円。これを何クールも続ける患者も多い。

ちなみに寄付講座は企業や団体によって経費が賄われる講座。その特任教授とは、民間企業などの資金で確保されるポストともいえる。調べてみると、特任教授は医師免許を持たない歯科医だった-。

”早期発見すれば、がんは治る時代”といわれるが、今も日本人の死亡率1位。罹患率は5割だから、誰もが直面しうる病気だ。

最も進行したステージ4では、抗がん剤治療が中心となるが、強い副作用や耐性が出て効かなくなってしまうことも多い。

追いこまれた患者の選択肢として浮上するのが、『免疫療法』だ。手術、放射線、抗がん剤の3大療法に次ぐ”第4のがん治療”ともいわれている。

『活性化リンパ球』『樹状細胞』『ペプチド』『がんワクチン』など、従来からある、”免疫細胞療法”(=以下、免疫療法)は、自由診療のみ。そのため多額お治療費がかかる。

免疫療法の基本的な手順は、まず患者の血液を採取する。そこからリンパ球の細胞を培養し、増やしたり、活性化させる。または、がん細胞の目印を覚えさせる。これらを一定間隔で患者の体内に戻して、がん細胞を殺すという。

なぜ、免疫療法は保険適用にならないのか?免疫クリニックに疑問を投げかけると-

「国民皆保険制度ができた1961年当時、まだ免疫療法が無かったので、審査対象いならなかった」

この説明は明らかにおかしい。臨床試験で有効性が立証された新しい治療法や新薬は、随時保険適用になっている。免疫療法が保険適用にならない理由-それは有効性が立証できていないことに尽きるのだ。

そうした治療法が、なぜこれほどまでに普及しているのだろうか?

がん患者会シャロームの代表・植村めぐみさんは、患者たちの切実な心理状況が影響していると話す。

「親友の女性はスキルス胃癌で、余命1年と告げられて免疫クリニックに通っていました。毎月80万円、10ヶ月で800万円もかけて、効果は全くないまま亡くなりました。もう治らないと余命宣言されると、誰でも冷静さを失って、免疫療法に傾いてしまう可能性があります」

「がんは待ってくれない」

日曜日の昼下がり、東京・三鷹駅にほど近いビルの7階で、免疫療法の説明会が始まった。

「免疫療法に、反対する医者がいます。皆さんの主治医がそうなら、黙って来ればいいんです!先延ばしして、いいことなんてありません。抗がん剤でNK(ナチュラルキラー)細胞が、やられちゃうので、抗がん剤入れる前に培養させて欲しい。がんは待ってくれない」

早口でまくし立て、患者に同意を要求する講師。今すぐに免疫療法を開始しなければ手遅れになる気になってくる。

この免疫療法は1クール(約3カ月)400万円を一括前払いする。2クール、3クールと続けていくと、老後の預貯金などあっという間に消えてしまう。

これで命が助かるなら、出費も仕方ないかもしれないが、現実は厳しい。

2年前の9月、悪性リンパ腫という、血液のがんが判明した80代男性Aさん(関西在住)。喉と睾丸にも転移、ステージ4だった。

抗がん剤治療の副作用で食事ができず、強い痛みも出てきたため、見かねた息子が免疫療法を調べて、無料説明会に参加した。

「”免疫細胞にがんを記憶させて攻撃する。お父さんと同じがんだった私の伯母が、見事に治りました”と、クリニックの院長が画像を見せながら話してくれました」(Aさんの息子)

100万円超の費用を先払いして、昨年10月に免疫細胞療法が始まった。

がんが転移した喉の部分に、免疫細胞を直接注射しながら、院長はこう言った。

「国からこの資格を得ているのは私だけ。唯一の治療を受けているんやで」

むろん、国が一人の医師だけに治療資格を与えるなど、あり得ない。

免疫細胞の注射は4回打たれたが、約3cmだった喉のがんは10cm以上に増大。声も出せなくなった。

去年12月、Aさんは自宅のベッドで息を引き取った。免疫療法を選んだ理由を、息子は振り返る。

「iPSや再生医療の時代だから、免疫療法に期待してしまった。今になって冷静に振り返れば、治る治ると思い込まされていたのでしょう」

免疫細胞療法の一部は”先進医療”に指定されている。これは例外的に混合診療を認めて臨床試験を実施、保険適用を目指す制度。

裏を返すと、現時点で有効性が立証されていない”実験的医療”だ。

培養した免疫細胞がどの程度の期間、機能しているのか。それを科学的に調べた研究者が理化学研究所・特別顧問の谷口克氏だ。

「培養した免疫細胞の生体内寿命は2~3日、長くて1週間。ただし、がん細胞に出会って刺激を受けると、24時間以内に死滅します。また培養免疫細胞を静脈投与した場合、肝臓に集積し、がん組織に届きません」

国立がん研究センター・前理事長の堀田知光氏は、筆者のインタビューに応じ、民間の免疫療法を厳しく批判した。

「正直に申し上げると、胡散臭いという印象。結果が良いというけれど、科学的な根拠を示していない。有効性と安全性が検証されていない、再現性もない免疫療法が”商売”として行われているのは問題ですよ。私は今の”古典的免疫療法”に大きな期待はしていません」

説明会に参加する患者や家族には聞かされない、これが本当の専門家の見地だ。

「ノーベル賞」とは関係 ない

高額な免疫細胞療法に誘導する巧妙な手口。その代表的なものを挙げる。

  • 症例画像の偽装

クリニックのHPなどに必ず掲載されているのが、治療前後を比較した症例画像。これに関して、27年のキャリアを持つ腫瘍内科医・五月女隆医師は-「CT画像の撮影条件やスライス位置を少しずらして、がんが小さくなったり、消えたように見せているクリニックがある。それに免疫療法と抗がん剤を併用しているのに、すべて免疫療法の効果であるように記載しています。まともな医療機関では、症例画像を広告に使いません」

あるクリニックの説明会で、筆者がこの画像偽装を指摘すると、医師は人ごとのように答えた。

「確かにそうですね。よく分かっていない前任の医師が監修したようです」

  • 患者のテレビ出演

免疫療法を受けた患者が、笑顔で出演しているテレビ番組がある。ローカル枠やBS枠で、同じ番組が何度も再放送されているのだが、よく見るとスポンサーは免疫療法の関連会社。番組を見たので取材したいと伝えると、担当者は-「あの患者さんは亡くなってしまったから、作り直す予定なんです」

  • ノーベル賞の研究者

1970年代に樹状細胞を発見した、ラルフ・スタインマン博士はノーベル賞を受賞。これを宣伝に利用している樹状細胞ワクチンの免疫クリニックは多い。実は2007年春、スタインマン博士はステージ4のすい臓がんが見つかり、まず選択したのは外科手術、そして抗がん剤だった。しばらく経って樹状細胞ワクチンを受けるが、肺に転移が見つかり、2011年に死去。博士を宣伝に利用しているクリニックは、大抵この事実を伏せている-。

  • 大学病院が誘導

今年7月、肝臓がんが肺に転移した男性は、都内T大病院のがん相談支援センターで、看護師から免疫クリニックのパンフレットを渡された。「外科手術、放射線治療の後、抗がん剤もやったけど効かなくてね。それで看護師から、話だけでも聞いてみたらと勧められました」パンフレットには、”2001年にT大病院関連施設として開院”と記されている。大学病院のがん相談支援センターが、有効性が確立していない治療に誘導する-実は、こうしたケースが増えている。

仲間はみんな亡くなった

「再発したら死ぬよ、と主治医に告げられた時に、偶然テレビ番組で免疫療法を知りました。これしかないって思いましたよ。だって自分の強化した免疫細胞が、がんと闘う、消滅させてくれるなんて凄いでしょ。その番組に金沢大の医師が出演していたので、すっかり信用しました」

4年前、ステージ4の卵巣がんが見つかった医療関係者の50代女性。手術と抗がん剤治療で寛解した後、再発予防のために免疫療法を受けた。

費用は200万円。クリニックではVIP待遇で、医師は優しく女性の話にいつも耳を傾けてくれた。

「人よりいい治療を受けて、再発しないで済むと思いました。患者仲間にも勧めてこれで絶対みんなも助かるよと。4人が同じ免疫療法を受けました」

今年2月、女性は卵巣がんが再発した。これを契機に、免疫療法の有効性に疑問を抱くようになった。「同じ免疫療法を受けた友達が次々と亡くなって、私だけが生き残りました。友達になんて悪いことをしたんだろうと自分をめてしまうこともあります」

女性は、免疫療法に見切りをつけ、再発したがんを抗がん剤だけで、再び寛解にした。同じような後悔をする患者が現れてほしくないと願い、取材を受けたという。

女性が免疫療法を受けた、国立金沢大学附属病院の敷地に立つ金沢先進医学センター。

理事長には、前病院長の富田勝郎氏が天下りしている。同氏は免疫療法には副作用がなく、可能性を持った治療だと強調した。

「これまで約1000人の患者が、免疫細胞療法を受けたと思います。1クール(約3カ月)200万円の治療費は高くない。(裕福な人しかうけられない治療では?)それは政府が考えることです。抗がん剤だって1ヶ月150万以上かかる。患者負担は月10万円で済みますけど」

同センターには、東京に拠点を置く最大手の免疫クリニックが入っており、金沢大の医師らがアルバイトで診療している。そして、同センターで免疫療法を受けたデータを、金沢大の医師らが、自主臨床試験として研究している。

だが、有効性が確立されていない免疫療法の臨床試験を患者負担で行うことは、倫理的にも疑問が残る。

これについて、金沢大・水腰英四郎准教授が答えた。「自費診療でもいいから、免疫療法を受けたいという患者さんは沢山いる。けど、大学の臨床試験枠は限られている。あぶれた人の受け皿が、自由診療のセンターです。免疫療法が本当に安全なのか。そもそも本当に効くのか、というのも(自主臨床試験で)検証したい」

がん治療を専門とする押川勝太郎医師は、自主臨床試験の手法に疑問を唱える。「効果を証明するための臨床試験は”人体実験”に等しいのです。だから莫大な治療費とリスクを患者さんだけに負担させるのは、非人道的だし、倫理的にも極めて問題です」

日本医科大学・勝俣範之教授は、10年以上前から免疫細胞療法に警鐘を鳴らす。「これまで自由診療クリニックが、効果のない免疫細胞療法で患者を騙していました。それが最近では、川崎医科大学、北里大学などの附属病院が免疫細胞療法で利益を得ようとしています。効果が判明していない免疫療法は、決して患者さんのためになりません」

オプジーボの光と影

ステージ4の肺がんで、抗がん剤治療が効かなくなった、50代男性は新薬オプジーボが劇的に聞いたという。「死を覚悟していましたから、本当に嬉しかったです。生き返ったというか。今の目標は東京オリンピックを見ることですね」

命を繋いでくれたオプジーボだが、代償も大きかった。男性はオプジーボの副作用で糖尿病になり、3度の食事ではインスリン注射が欠かせない。さらに副作用のリウマチの痛みなどが強くなり、毎日の通勤も苦労している。「決して”夢の新薬”ではありません。副作用が強くなって、現在は治療を中断しました。それでも私はオプジーボに感謝しています。命には何にも代えがたい」

これまでにない効果と、高い薬価に注目が集まっているのが、免疫チェックポイント阻害剤・オプジーボ(薬品名:ニボルマブ)。

「免疫チェックポイント阻害剤と、従来の古典的な免疫療法は、似て非なるものです。がんに対して免疫を活性化して攻撃をするのが従来の免疫療法で、オプジーボは逆に免疫を抑制しているブレーキを外す。がん治療のブレイクスルーは免疫チェックポイント阻害剤です」(国立がん研究センター前理事長・堀田氏=前出)

実は今、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤と、従来の免疫療法を組み合わせた治療が広まっている。

オプジーボは、肺がん患者の場合、体重1㎏あたり3㎎と用量を指定する。体重60㎏の患者なら180㎎投与する。しかし、一部の自由診療クリニックでは、規定用量より少ないオプジーボを投与しているのだ(1回20㎎など)。

琉球大学・臨床薬理学の植田真一郎教授は、警鐘を鳴らす。「薬剤の用法用量は最も効果的な条件を、治験の結果をもとに決定されます。また薬剤の有効性は、ある程度の最高血中濃度の達成が必要です。科学的根拠のない低用量は、薬として機能しない可能性が強い」

オプジーボと免疫療法を組合せた治療では死亡事故も発生している。製造販売元の小野薬品工業が昨年7月に、医療関係者向けに出した「オプジーボの適正使用について」と題した文書では、オプジーボと他のがん免疫療法を併用で重篤な副作用が発現した症例が6例、死亡例が1例あると報告。<がん免疫療法との併用について、安全性及び有効性は確立していません>と警告した。

さらに、オプジーボの添付文書には次のように警告がきされることとなった。『本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識を持つ医師のもとで本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること』

つまり緊急搬送に対応できる総合病院で、がん治療の専門医が投与することが定められている。だが、この規定に反してオプジーボを個人輸入して使用を続けている自由診療クリニックは存在する。

「日本は、医薬品の個人輸入に甘く、医師の裁量権を広く認めているため、今回のようなケースを規制できません。オプジーボは、恐ろしい副作用も出ており、個人輸入は偽薬のリスクもあるので、早急な対策が必要です」(元厚労省技官の宮田俊男医師)

今、診療報酬の切り下げで、保険診療の病院やクリニックが経営難に陥り、利益率が高い免疫療法を始めるところが出てきた。

生命倫理学の武蔵野大学・小松美彦教授は警告する。「免疫療法が大きな利益を生む金脈のように広がり、不安を抱えたがん患者を吸い込んでいる。厚労省は研究班を作って、免疫療法の有効性を検証すべきです」

一部の免疫クリニックは、”がんの標準治療”より免疫療法が優れていると勧誘している。だが、”標準治療”こそ有効性が立証されている最善の治療である。

どうか、「やってはいけない免疫細胞治療」に騙されないように気をつけていただきたい。

:引用終わり

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*


CAPTCHA