どうも、ケスイケリーガです
世界の名作ですね、ウィリアム・ゴールディング『蠅の王』を紹介します。
読んだ背景と懺悔
まず、正直に言おう
ロマンスカーで箱根へ行ってきた。
その旅行の道程の手持無沙汰を解消するために、下北沢駅近くの古本屋で手に取った本がこの『蝿の王』だ。
おうおう、旅のお供にしてはずいぶんずっしりくる本を選んでしまった
もしあなたが旅先で読むための小説を探しているならやめておいたほうがいい
「旅先に持っていくべきでない小説10選!」みたいなブログ記事があれば、ぶっちぎりでランクインだ
さらに正直にいうと、私の読解力では、この本について書くことはなかなか畏れ多い
たぶん、この本の言わんとすることの半分もわかってないんじゃないだろうかと思っている。
それでも、読後に思った事を書くためのブログだし、なんとでもなれ
ざっくりあらすじ
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さてさて、ウィリアム・ゴールディングは83年のノーベル文学賞受賞者で、この『蠅の王』は1954年に書かれたものだ。
イギリスの少年たちが乗っていた飛行機が無人島に墜落したところからストーリーは始まる。
生存した少年たちはその無人島でサバイバルをしながら救助を待つしかなく、少年たちは自然発生的に隊長を決め組織として動くことを画策する
集会を開いたり、トイレの場所や狩猟隊の結成など様々なルールを作ったりして組織的に行動しようとした。
だが、あらゆる年齢のあらゆるバックグラウンドを持った少年たちを統率するのは困難であり、それらの決まりはほとんど守られなかった。
それでも、それなりの秩序を保ちながら少年たちは協力して生きていく。
しかし、次第にその秩序は壊れていく
リーダー格の少年二人の意見が割れてしまったからだ。
一方は救助されるためには火を絶やさず常に烽火(のろし)を上げておくことが必要であり、それが島での生活の全てに優先されると主張する。
他方は、その烽火の意味を十分に理解せず島にいる豚を狩り肉を得ることが大切だと主張する。
私たち読者から見ると前者の烽火を上げ続けることが最優先という主張が最もであり誰もがそうするだろうと思えるのだが、その島にいる少年たちは違った。彼らは眼前の楽しさを優先し、危機への想像力に欠けていた。
故に、豚を狩り肉を得ることを追求する方を選択する。
もし烽火をあげなかったらどうなるか、なぜ規則をつくろうとしているのか、これらの考えが欠落してしまっている少年たちが多数派を占めてしまっていたのだ。
リーダー格の少年たちの隔絶は日に日に大きくなっていく。
烽火の火を見張ることを放棄し狩りに行っている間に沖合に船が一層走ってゆく。
その船が見えたとき、烽火はあがっていなかった。
つまり、船からもその島に人がいることなどわからない。なぜ烽火の火を見張っていなかったのか問い詰められ、それを機に秩序は決定的に崩壊する。
閉ざされた無人島で組織は分裂し対立していく。
知恵を持って島から救助されるために行動しようとする少数派と眼前の快に突き進んでいく多数派。後者の狂気は増大する。
快により人を惹きつけ恐怖により統治する。狂気は誰にも止められず2人の死者を出す。もはや、そこに道徳も理性も存在しない。まさに野蛮人といえる狂気じみた行動。
そして、知恵のあるものは言う、暴力や行動なんかよりも当然のことを理解できないことがもっとも恐怖だと。
ストーリーのラストはぜひ一読して確かめてみてほしい!
ざっくり感想
この小説の一つの肝は登場人物が少年たちというところだろう。
大人が(あるいは読者の立場で)考えれば、当然ということがなかなか為されて行かない。
小説の中では、それは少年たちの幼さ故と読めるが、果たして一体そうだろうかという疑問もある。
程度の差こそあれ、私たちは生活の中で非合理的な選択を繰り返していることがある
第三者からみたら、当然こうすべきなのにと思うようなことでも、非合理的な選択をすることは多々あるはずだ
また、この小説は一貫して考えることを放棄してはいけないと説いていた。
考えることをやめた瞬間に人はおかしな方向に進んでいってしまうと。それを少年たちの姿を借りて、しかも考えることのできない少年たちの姿を借りて描いている。
そして、人は考えるがゆえに人らしくあり、考えることをやめた途端、獣となんら変わらない。獣になった人間は獣以上に質が悪いかもしれないが。
人間という生き物の不可解であり不合理であり愚かな部分、まったく獣とかわらない部分を少年たちの無人島でのサバイバルという極限状態を用い描いたこの作品はやはり名作と言わないわけにはいかない。
旅には向かないが、人生を旅と形容することもあるようだ。人生の旅であれば「旅先に持っていくべき小説10選」に入れてもよいのではないだろうか。それでは、グッバイ!
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