父親が家事に関与しないのは、父親の意識の問題だけではなく、母親の信念や振るまいにもその要因がある――と言うと、世の女性方は反発するだろうか。
そういった面から家事分担を研究した社会学の論文を見つけたので、紹介したいと思う。
元になった論文を見てみよう
Sarah M. Allen and Alan J. Hawkins
Journal of Marriage and Family
Vol. 61, No. 1 (Feb., 1999), pp. 199-212
論文超簡単要約(拙訳)
次の3つの面を比較的強く持つ母親が「ゲートキーパー」と定義されるそうだ。
- 基準と責任(家事のルールを決め、上司のように振る舞う)
- 母親らしさの確認(父親が家事に参入すると、母親らしさを失ってしまうのではないかと恐れる)
- 家庭内役割の差別化(そもそも家事は母親の役割だと思っている)
この論文は、共稼ぎ女性のサンプル(622名)を探索的因子分析した実験に基づき、執筆された。クラスター分析の結果、21%の母親が、ゲートキーパー(3つの面が比較的強い人)だと分類された。ゲートキーパーは、コラボレーター(3つの面が比較的弱い人)と分類された女性とくらべて、週に5時間多くの家事を行ったほか、夫婦間で平等な家事分担を行うものも少なかった。
※ゲートキーパーとは、直訳すれば「門番」だけど、ここでは「決定権者」のような使われ方ではないかと思う。
論文に対する反応
論文引用数も907あって、かなり反応は大きいね。いろいろと多方面から検証されているようで、賛否は両論のようす。
(父親の意識のほうが重要だという反論や、結婚生活に対する満足度の問題だろうという反論がある模様)
日本語だとあまり文献がないんだよね。
わかりやすいところで言うと、WSJのこれ。
下記の学会でも報告事例があるみたい。
(この学会で報告された研究は、父親の意識調査なので、元の研究とはちょっと違うけどね)
私の意見
相互作用しあって人間関係ができるというのは一般的なことなので、こういうこと(妻の態度が夫の態度を決めるということ。逆も真なり)はあっても不思議ではないと思う。
仕事だって一緒じゃないかな。上司や他の社員との相互作用の結果、やる気がでたり、やる気がなくなったりするなんて例は、そこかしこにあるわけだしね。
それに当然、マターナル・ゲートキーピングが、夫に影響を与える唯一の要因なんてことはないと思う。当然、夫の属性、価値観、就労環境なども、家事への関与には影響していると思う。
ただし、こういう概念は、世の女性方には支持されないだろうなあという気もするかな。だって端的に言うと「夫が家事をしないのは、妻の信念と振るまいにも原因があるんじゃない?」と言われている訳だからね😅
まあ、学術的な研究の一つを紹介したということで。
あっ、私は紹介しただけだから、クレームは執筆者に言ってね😉