世界でも有名な白いザトウクジラの姿を、オーストラリア東岸沖で再び見ることができた。「ミガルー」と名付けられた白いクジラで、9月21日、シドニー沖を泳いでいるところをカメラに収められた。これから南極へ向かって回遊するのだ。(参考記事:「【動画】珍しい!全身真っ白なキリンの親子」)
動画を撮影したのは、ホエール・ウオッチング・シドニーの写真家ジョナス・リーブシュナー氏。ミガルーが姿を現すまで、1週間かかったという。
ミガルーは、オーストラリアの先住民族アボリジニの言葉で、「白い人」を意味する。このように白いクジラは、世界でもごくわずかしか知られていない。オスのザトウクジラであるミガルーは1986年に生まれたと考えられている。(参考記事:「【動画】極めて珍しい白いオランウータンを保護」)
ミガルーの情報提供サイト「The White Whale Research Centre」によると、ミガルーの皮膚の色素が薄いのは、おそらく遺伝子の影響と思われる。だが、色素を作り出す力が完全に欠如しているアルビノ(先天性白皮症)かどうかは、はっきりしていない。アルビノではなく、白変種である可能性もある。白変種であれば、色素を作り出す力が低いとはいえ、アルビノとは違って色の付いた目を持っているかもしれない。(参考記事:「白い肌に生まれて」)
全身が真っ白なザトウクジラはとても珍しいが、それでもヒレに斑紋がある個体や、青みがかった灰色の個体は時々見られる。小説『白鯨』に出てくるような白いマッコウクジラも時折、観察されることがある。(参考記事:「名作『白鯨』の元ネタは、もっと壮絶だった」)
近年オーストラリア沖では、ミガルーを含め、3頭の白いザトウクジラが観察されている。そのうちの1頭の愛称は、「ミガルー・ジュニア」または「ミガルーの息子」。体の大きさがミガルーより小さいためそう呼ばれているが、このクジラがミガルーの子かどうかは不明だ。3頭目の尾には、黒い斑点がついている。
2015年にオーストラリアの海岸で観察され、脚光を浴びた白いクジラは、ミガルー・ジュニアと思われる。年上のミガルーと比べて体の大きさが小さく、また、2003年に船と衝突した際にミガルーが負った、黒く目立つ傷跡が見当たらなかったからだ。
毎年、ミガルーを含め、2万頭ものザトウクジラがオーストラリア周辺に回遊して、餌や交尾相手を探すと考えられている。個体の総数はかなり回復した。商業捕鯨が盛んだった時期には、わずか100頭前後にまで落ちたこともあったのだ。(参考記事:「極めて異例、ザトウクジラ200頭が南ア沖に集結」)
それ以来、クジラを保護するために、厳しい規制がもうけられている。とりわけミガルーに関しては別に法令が定められ、あらゆる船はミガルーから500メートル以上離れなければならなくなった。他のクジラであれば、オーストラリアの船は100メートル以内に近づいてもよい。もっとも子供のクジラがいる場合は、300メートル以上離れなければならない。
大型のクジラであるザトウクジラは、体長約18メートル、体重約40トンにもなる。メスはオスよりやや大きい場合が多い。歌を歌い、遊び好きとして知られるこのクジラを、国際自然保護連合(IUCN)は「低危険種(least concern)」に分類している。寿命はおよそ50年だ。(参考記事:「1万3000種って何の数字?」)