「ろくでもないやつはクビにしろ」。耳を疑うような発言にがくぜんとした。米トランプ大統領が22日の演説で米プロフットボールリーグNFLの選手らに言い放った言葉だ

▼発端は全米で警察官による黒人射殺が相次いだ昨年、当時49ersのQBコリン・キャパニック選手が国歌斉唱の起立を拒んだ行動。白人至上主義グループが反対派と衝突するなど人種問題が渦巻く中、選手らが起立拒否を表明するなど行動が広がった

▼24日には、全米各地であった試合前の国歌斉唱で、約200人の選手が片膝をつくなど大統領の発言に抗議の意思を示した。大リーグやNBAの選手も声を上げ始めている

▼大統領の差別的発言はこれまでも問題視されている。だが、侮蔑表現を使ってののしった上に「人種差別の問題と関係ない。国や国旗に敬意を払うかどうかだ」と開き直る姿は、大国のリーダーとしての資質はみじんも感じられない

▼選手たちの思いは、人種差別の問題が次々と表面化する国の異常さやいびつさ、助長するような風潮に抗議し歯止めをかけたい、人種や多様性を伝えたいとの率直な願いだろう

▼1920年代の創設時の白人主体のリーグから、差別の歴史を乗り越えてきたNFL。人気スポーツをつくりあげてきた足跡や人権をふみにじる発言に愛国心は見当たらない。(赤嶺由紀子)